その10




入社して3ヶ月経った今、俺はこのやりとりを思い出すと、少しだけ胸が詰まる思いだ。たった3ヶ月間だけど、俺は世の中のちょっとグレーな金儲けのからくりを知ってしまった。



マスメディアでは勝負できない、WEBの低予算の可能性にかけている中小企業の宣伝担当者からなけなしの金を絞り取っている金儲けのしくみ。
そして、俺はその悪事に毎日加担してるのだ。




「そう、これが我々の仕事なんだ・・・。この作業を就業時間に繰り返し行ってもらう。だいたい、1キーワードにあたり、一日平均100クリックくらいかな・・・。」


「だって、これは佐々木スポーツ店の広告じゃないっすか。俺がクリックしちゃっていいんっすか?スポーツ用品を買おうと思っている人にクリックしてもらわなくちゃ広告の意味ないじゃないっすか。」


「まぁ、そういう考え方もあるが、では、聞くが・・・、小林君が、スポーツ用品を買うことを全く検討していないユーザーと言い切れるか?」


「そ、それは・・・、僕もたまにスポーツ店で靴下買ったりすることありま

すが・・・。」


「だろ?」


「で、でも、僕が、この会社の社員の僕が、100クリックもしちゃったら、本来クリックすべき人からの見込みの売上げが上げられないのではないでしょうか?」


「う~ん、例えば、渋谷のOLがブランドのバッグを買おうと思ってるとする。OLは仕事の合間にインターネットでブランドのバッグ情報を検索する。これってよくある話だよな?検索したブランドバッグのブログ記事に広告が表

示されていて、思わずクリックしてみる。これもよくある話だよな?」


「ええ、はい。」


「そういうことだ。小林君が仕事中に佐々木スポーツの広告をクリックした。それが、少し回数が多くて、1日100回クリックした。そういう風に考えられないかい?」


「えっ!・・・。」





俺は絶句した。



つづく・・・。