カエルの民俗 俚諺、俗信、不可食、薬膳、夢判断

   地界のカエル(4) 天地のカエル・ディフダウal-Difda”(6)

キーワード:

カエルの民俗   カエルのことわざ

カエルとフクム(al-Hukumイスラム法規定)   殺しても食利用としてもならない

タスビーフ(tasbiih神を讃美)に位置づけ   カエル肉食用の慣習、薬膳

カエルと信仰   カエルは天使としての役割  カエルはサソリ(=天使)の使い

水の運び手・アブラハムを助けたカエル    (ヒキ)ガエルの姿はサタン(悪魔)か

カエルのペンダント用お守り三点

カエルの特効・薬膳・養生訓Khawaass    カエルの夢解き al-Ta”biir al-Difda”

 

 

食物連鎖とカエル 

自然界の食物連鎖の中でカエルは自分より主に小さい昆虫類や節足動物類の捕食者として位置づけされる。一方自分より大型の多くの動物に対する餌としても、その占める位置は非常に重要である。多くは大量に産出されるため、幼生であるオタマジャクシ、成長した蛙ともども、ヘビや鳥類、小動物の餌となり、また下位の昆虫や小動物を捕食して、陸上における食物連鎖を支えている。夏季に活躍するため、様々な伝染病を媒介する蚊やハエを含めた生物を大量に捕食してくれるし、耕作農地面積の多くを占める水田の害虫となるウンカを始めとする昆虫類を捕食してくれている一方、より蛇などのより大型の捕食動物の、上位生物の餌となっている。

 

 

カエルのことわざ

カエルは水棲、または水際近くでしか生活できない。いっぽうまったく対照的に、砂漠で生息するダッブdabb(オオトカゲ)は早朝の霧や露を効率的に集め、また捕食動物や植物から水分を取り、それで事足りるとしている。この両者はしたがって生息環境が全く異なることになる。したがってこの両者が合うということはあり得ない、と言うことになる。

「どうしてそのようなことがあり得よう(起こり得よう)、ディフダウdifda”(カエル)と(ダッブdabb(オオトカゲ)とが鉢合わせしない(顔を合わせない)限りは!」

  Laa yakuunu dhaalika hattaa yujma”u bayna al-difda” wa-l-dabb

 

次の諺は前にも紹介したが、「うるさい。けたたましい、騒々しい」ものの代表はカエルということになっている:

「カエルほどに(けたたましい)鳴き声を上げるもの」

   anaqqu min difda”i 

として、砂漠地帯が多いアラブ世界でも水辺にはカエルが多く、その繁殖期の鳴き声は喧しさの典型となっている。

 

 

 

  カエルとフクム(al-Hukumイスラム法規定)

 カエルに関してフクム(al-Hukumイスラム法規定)では、殺しても食べてもいけないこと・ハラームになっている。 

カエルは「食用ガエル」もいる如く、世界では広く食べられている。大型の種類は、世界各地で食用にされる。肉は鶏肉のささみに似ており、淡白で美味である。中国をはじめ、欧州など世界的には、カエルを食べることは特別なことではない。ただし、ヨーロッパでも忌避している国が多い中で、フランス人は食材と利用している。他の国から「カエル喰い」と揶揄されることもある。

私事に亘るが、カエル食のこの同様な経験を馬肉でも味わったことがある。馬肉を食べる国も多くはない。わが国でも極めて限られる。イスラム世界では馬肉の食はハラーム(不可食)である。ところがフランス人は馬肉を食べることで有名で、アルジェリアに調査に出かけたとき、地中海岸のオランで馬肉レストランを見て驚いた。フランス植民地化のもと、現地フランス人や一部のムスリム以外の人々が食べていたことが根を下ろしたのであろう。

 

日本では「食用蛙」として食利用されていたのは、中国の影響もあったのであろう。わが国の「食用蛙」といえば、やはり大型の種で、普通ウシガエルのことを指す。

カエルの食利用といえば中国であろう。中国においてもっとも一般的な食用蛙はアカガエルの一種で、中国語では「田鶏(ティエンジー)」と呼ばれる。冬に食べることが多かったが、現在は養殖されており年中食べることができる。またエジプトなどから大型のウシガエルも移入されて養殖されている、とされる。

もしエジプトから輸出されているとしたら、ムスリムは扱わないので、コプト教徒たち(単性論キリスト教徒)であろう。豚もムスリムにはハラームであるが、我々外国人には購買でき、食卓を飾れた。豚飼育、豚肉販売もやはりコプト教徒が生業としている。中国へ輸出している食用蛙もそうしたルートとみて間違いがない。またカエルの食味にうるさい中国への輸出であるから、エジプトのウシガエルはよほど美味と見える。

 

さて翻ってイスラム世界を見てみると、カエルの位置の変遷は激しい。アラブ世界でも、イスラム期以前は食用とされていたのははっきりしている。しかしイスラムの誕生と共にハラーム(不可食)とされてしまったのである。

 

ムスリムとなるとカエルの食用は許されなくなってしまった。カエルは以下の預言者のハディースによって、殺しても食利用としてもならない、と規定されてしまった。

ハディース類には:

預言者の言として、「カエルは殺してはならない。その鳴き声はタスビーフ(tasbiih神を讃美)しているからである。」

 「預言者はいった:カエルは殺してはならない。殺したものは、たとえハラーム(禁忌・ 清浄の状態)でなくとも、償いをせねばならない。シャーア(shaah、羊か山羊)一頭がその贖罪となる。」

「カエルはタスビーフ(tasbiih神を讃美)をするから殺してはならない。そのタスビーフの章句とは「聖なる王を賛美し奉る」(Subhaana al-Malik al-Qadduus)と聞きなすことができる。

「預言者はカエルとハイタカ(surad)と蜂(nahlah)を殺すことを禁じた。」

さらには殺害禁止とされた動物は五種であった、とされる。蟻(naml)、蜜蜂(nahlah)、カエル、ハイタカ(surad)、そしてヤツガシラ(hudhud)である。それぞれが人間の社会生活の中で有益な活動をしてくれるからである。Dam.Ⅱ149、150.

 

とはいえ、イスラム期以前にはアラブ社会でも食用とされていたことは明らかである。それ以前のカエル肉食用の慣習は以下のハディースによって後付けられる:

ある医者が預言者を訪問し、カエルのことで尋ねた。「カエルを以前は食用として食べていましたが、今後ハラーム(不可食)といたしましょう。ですがカエルを薬用として用いることはできるでしょうか?」と。すると預言者は「できません、殺すこと自体ハラーム(禁止行為)となりますから」と答えた。」        Dam.Ⅱ149、150、151、

 

以上で見てきたように、カエルがハラームとなったのは、前回の「鳴き声」の項で見た如く、

その鳴き声の聞き做しが神を賛美しており、天使と同じようにハレルヤを謡っており、神を信ずるものを殺したり、食用としてはならない、との観念が広まったからである。

またカエル食がハラームとされた理由の一つは、水中にすむ魚はハラール(可食)であるが、カエルは水中に住みながら、明らかなように鱗を持たず魚の形をしていない蛸や烏賊と同類とみなされることも理由とされる。

 

しかし時代が立つうちに、またイスラム地域の拡大に伴い、それまで知られていた薬用として、薬膳としてカエル利用は、その名目で、地域差、時代差もあるが、ずいぶんと一般化していた。前述したように、カエルの食味にうるさい中国への輸出へもエジプトウシガエルが輸出されているぐらいであるから、よほど美味と見える。下の項目「カエルの特効・薬膳」があり、それを見れば一目瞭然としていよう。

カエル肉に関しては、一見は罰当たり的表現が多い。しかし裏ではどうか、また他の身体部位では明らかにもろもろの効果があることが分かる。

 

 

 

  カエルと信仰

以前のブログ「天界のカエル(2)」のところで、古代メソポタミアから存在するのカエルの信仰、エジプトのカエル神「ヘケト(Heket、Heqet)」のことに触れている。多産性・再生・豊饒性・金運の象徴とされていることもみてきた。図例もいくつか示しておいた。   カエルの信仰、異界との関係、天使などとの関係などもここで改めてみておきたい。

 

   カエルは天使としての役割があった

神が天地創造をなされる時、神の玉座は混とんとした大海の中にあり、そのそば近くおり、玉座を支えたのはカエルであった。本来は天使の役目である玉座の補助と支えがカエルによってなされ、混とんの海から陸が出現としてきて、海と陸が分かれたのである。カエルは動物界では最も早く創造され、陸海に生息できるものとなった。   Dam.Ⅱ150

前項で「カエルの鳴き声、聞き做し」で述べた如く、天使たちは神のそば近くで神の讃美歌ハレルヤを謡っている。カエルたちはそのきれいな鳴き声の方でタスビーフ(神の賛美)やジクル(神への念唱)を玉座を支えると同時に、謡っていたものと思われる。

 

天界のカエル(2)のところで述べたが、古くメソポタミアの時代から、天体には二匹の蛙、両ガエルディフダアーンal-Difda”aanが存在した。南の魚座のα星フォーマルハウトが第一カエル(前方カエル) ディフダウ・アッワルal-Difda” al-Awwal(al-Muqaddim)であり、その東方にあるクジラ座βデネブ・カイトスが第二カエル(後方カエル) ディフダウ・サーニーal-Difda” al-Thaanii(al-Mu’akhkhir)であった。天から降るカエルで見たように、自らの力で、また神使として、両者はカエルとしての神威、秘義性を持っていた。古代メソポタミアでは既に蚊やハエの害虫を捕食する有益な動物と考えられており、また産卵数の多いところから、多産性や豊饒性の象徴ともなり、特に金運と関連するお守りや護符の対象ともなっている。

古代エジプトでも、カエルはその姿は胎児に類似しているところから、その健やかな成長、健康の象徴と、そして多くの卵を産むことから多産・豊穣の象徴となっていた。そのため、エジプト人たちは、カエルを神聖な動物として崇拝し、神格化までされていた。

カエルの神は「ヘケト(Heket、Heqet)」と呼ばれ、カエルの頭をした女神の姿で描かれた。

ヘケトは女性の子宮を守り、安産の手助けをし、信者の生命を与え、また再生し、維持する力の持ち主、生産・豊穣神と考えられていた。

 

イスラム時代に入っても、カエルの多産性、豊穣性が信じられていたが、それ以上に、上に述べたタスビーフ(tasbiih神を讃美)を唱和するイスラムへの信心や行者としても受け取られ、さらに殺すことも食肉利用のできなくなった。それほどにイスラム信仰と結びついたために、お守りや祈願も込めて、カエル型のお守りを兼ねたペンダントが生まれて、特に女性の身に飾られるようになった。

 

 

    水の運び手 アブラハムを助けたカエル

アブラハムが息子イシュマイールを神の犠牲に捧げようとした時、神は身代わり子羊を用意して、それを犠牲とした。息子と苦労して集め焚き付けた火であったが、息子を犠牲にささげ、燔祭を行おうとした直前に、神はアブラハムの清純な信仰心を読み取って、息子の代わりに羊を捧げればよい、との啓示があり、身代わり子羊を燔祭にささげた。燔祭を終えた後、火がなかなか消えず、消火に手間取っていた時、近くのカエルたちが次々に大きな口に水を貯めて,それを火に放出した。それで火は消し止められた、ということだ。この一事もカエルを殺してはならない理由の一つとされている。カエルは信者にひとしいこと、口が大きいことが発想の一つとなった。

 Dam.Ⅱ151

 

  

   カエルはサソリ(天使)の使い

  神秘主義者として名高いズンヌーン・ミスリー Dhuu n-Nuun al-Misriiには蠍に関する驚異譚がある;彼の蠍の話は、まさに神秘的であり、また蠍自体神秘的である。

マアルーフ・アル・カルヒー(Ma”ruuf al-Kalxii)の伝える伝承である:エジプト人ズ・ンヌーンはある時、着物を洗うためナイル河に出て行った。すると途中で、今まで見たこともない巨大な蠍がこちらに向かってやって来るではないか!彼の恐怖は一通りでは無かった。そこでこの蠍からの害悪を逃れるべくタアウィーズ(除厄の呪文、イスティアーザisti"aadhah、ムアッウィザターニとも。危害から守るとされる『コーラン』最終二章) を唱えた。彼のこの唱え事は十分威力があった。蠍の方はナイル河の方に道を逸れ、川面に近づくと、どうだろう!そこへ水中から姿を顕わしたのは一匹の大きな蛙であった。この蛙は背上に蠍を乗せたのだ、そして河を渡り対岸まで渡してやったのである。ズ・ンヌーンが言うには、「私は私で裾を

 

 

 

 

(から)げて、水中に足を踏み入れた。見失うまいとして視線を逸らすことなく後を追った。蠍は対岸に着くと蛙の背から降り土手に上がって行った。私は蠍の後を追うのに一生懸命であった。蠍は枝を多く伸ばして陰を広げている大きな樹の所まで達した。その木陰には色白の、まだ髭も生えていない少年が眠っていた、どうやら酔っている風であった。私は思わず声を上げた、「ラー・クッワ・イッラー・ビッラーヒ(権能あるはアッラーのみ)!」と。委細構わず、蠍は河の方角からこの若者を刺すべく近づいて行った。とその時、一匹のティンニーン(竜、この場合蛇)が姿を顕わし、この少年を噛み殺すべく近づいて来たのだ。蠍と蛇は挌闘になった。遂に蠍はその毒針を蛇の脳天に刺し、相手を倒した。そして蠍は何事も無かったかのように踵を返すと、、ナイル河の方に戻って行き、来た時と同じように待ち構えている蛙の背に乗って水面を渡り、対岸に渡って姿を消した。私はこの驚異に讃嘆せざるを得なかった:

    おお惰眠を

(むさぼ)る者よ 汝の命助けたは「高貴なる者

(ジャリール)」ぞ

             yaa raaqidaa wa-l-jaliilu yuhfizu-hu

       陰影

(くらやみ)には またありとあらゆる邪悪潜むものなるに

                                     min kulli suu’in yakuunu fi z-zulm

    何故に主の眼差しに対して その瞼閉じているや

                         kayfa tanaamu al-“uyuuna “an maalik

       主の恩恵の便益 汝にさまざまに注がれるに

                                     ta’tii-ka min-hu fawaa’idu n-na”am

                     (脚韻 –mのmiimiyyah詩)

   すると若者は私の声に目を覚ました。私から事の経緯

(いきさつ)を聞かされた若者は、後悔して贅沢な衣装を脱ぎ捨て、遊行者のなりに身を包んで旅立って行った。その後の消息では、そのなりのまま死体で発見されたとのことである。(DⅡ244,E348~49)

 

恐らくこの若者は蠍と何らかの縁があったものなのだろう。もっとも考えられるのは彼が蠍座の生まれで、蠍が守護星となっていたのであろう。蠍座は守護惑星が火星であるから、相当戦闘的なものであった。それゆえに巨大な蠍となって出現したのであろう。

カエルの方を考えると、普段は天敵のサソリを助けた、補助したわけである。しかもサソリも巨大、カエルも巨大。尋常なカエルではないことは確かで、やはり天から使命を託された特別なカエルであったろう。

 

 

  (ヒキ)ガエルの姿はサタン(悪魔)か   Dam.Ⅱ150

カエル類は小型だと、小ガエルだと、美しく可愛く好ましい印象を持たれるが、大型になるほどガマと呼ばれ、逆に醜く、気持ち悪い印象を持たれる。ヒキガエルやウシガエルなど、またガマの油売りの筑波山に住む「四六のガマ」もそうである。大ガエル、ガマガエルには同時に霊気、怪気も漂い、児雷也の化身ともわが国では見られている。

アラブ世界でも、そのあまりに奇怪な様は、霊的存在、妖怪とみられ、怪異現象にもしばしば登場する。その一例を紹介しよう。 

 

ザマフシャリーが著書『アル・ファーイクal-Faa'iq』のなかで第2代正当カリフ・ウマルのはなしとして以下のように伝えている:

ある男が主に懇願して言った、「主よ、このアダムの子(=人間=自分)に見せ給え、心のどこにサタンが巣くっているのかを、この目で!」。その夜の眠りの中で、彼は夢を見た。ある人物が現れた。その体は外部からでも内部が水晶ガラス(balluur)のように透けて見えていた。するとサタンがカエルに変身して、手に蚊の嘴にような、象の鼻のような、曲がり杖(Khartuum)を持って現れた。そして左肩のわきから、その杖を彼の体内に挿入した。そしてひそひそと誘惑するような言葉を囁いていった。ところが彼が神の名を唱えた途端、サタンとなっていたカエルは身を引いて姿を隠した、ということである。

 

上図はカエルのペンダント用お守り三点。上右は大理石系統の貴石で製せられ、緑色縞模様が綺綺に入っている上向きカエルペンダント。上左は真鍮メッキ製のカエル型を全体に、胴体に透かしを入れて、その中心部に二つに紅玉を縦に入れ込んでいる。その囲みを銀メッキで付着させた下向きカエルのペンダント。下図は円形にして中心にカエルを浮きだたせ、三重の円の大外部にはアラビア語の護符文字が書きこまれた銀製ペンダントの表。その右図のように裏の造作はない。いずれも現代のものでなく、中世イスラム期の作。インターネット画像より。

なお外には見せない、外からは見させないペンダントもある。カエルの足を乾燥して肌身に吊るしたもの。下の項「薬効・薬膳」に記してあるように、「痛風(naqris)」患者に効能ありとされている。

 

 

 

   カエルの特効・薬膳・養生訓  Khawaass    Dam.Ⅱ149-52

 ムスリムは「カエルを殺しても食べてもいけない」、ハラーム(不可食)になっている。

さらに別のハディース「わしどもはカエルを以前は食用として食べていましたが、今後ハラ

ーム(不可食)といたしましょう。ですがカエルを薬用として用いることはできるでしょうか?」、との問いに、預言者は「できません、殺すこと自体ハラーム(禁止行為)となりますから」と答えた。

したがって一時的にはカエル食はイスラム世界からなくなってしまった、と言えそうである。しかし時が経つうちの、カエルを常食としていた地域では、またカエル肉にこだわる通や薬膳として認められる場合など、何等かの理由を設けて食べていたことは、薬膳関係の領域を探ると見えてくるものである。

ペルシャでは海岸、河岸の住民は食料としている。特にホラーサーンでは美味のものが多く、塩ゆでにして食べるという。そして思わず「ジャンク・ジャンクjank・jank(ペルシャ語の原語ghanngh・ghangh)おいしい・おいしい」とか「ワール・ワールwaal・waal(塩加減)良いね・良いね」とか声を発してむしゃぶるそうである。(Jah.Ⅴ253、530)

 

カエルの肉はナフスnafs(嘔吐、吐き気、むかつき)を引き起こす。

また下痢(ishaal damwii)。を容易に引き起こす。

身体の肌の色をカエル(変える)。

また身体を膨張させる。

さらに理性を混乱に陥れる。

 

カエルの脂肪(shaham)、特に茂み(aajaamiyyah)に生息するカエルのそれは、歯痛の患部に張り付けるように置いてやると、その痛みを除去する。歯痛止め1

 同じくその脂肪で鍋釜(qidr)の表面を擦り上げる。するとその容器はどんな燃料を使おうが決して沸騰することはない。

 陸生のカエル(bariyy)の骨を鍋釜(qidr)の蓋の上に載せておくと、沸騰することはない。

カエルの骨には威力がある。

 

 カエルを陰干しに乾かして、砕いて粉末にしたものをウスバニアオイ(khitmii)と一緒に調理した糊状のものは、体毛(nuurah)患者や砒素毒(zirniikh)の患部に塗布すれば、体

毛がそこからは成長しないであろう。脱毛効果1

 カエルの血を毛根に塗り付けると、そこからは毛が生えてこなくなる。脱毛効果2

カエルの体をぺちゃんこに潰し、それを害虫に刺された毒針の患部の上に置くと、たちどころに治癒するであろう。毒抜き効果

 カエルの血を顔に塗ると、その顔を見た者すべてが彼に好意的になる。媚薬効果

 カエルの薬効の脅威の一つに、カエルを頭から尻まで真っ二つにする。それを色情狂の女性に見据えさせる。すると性欲が減退して男を求めなくなる。性欲抑制剤 

 

カエルの丸薬を液状にして、緩んで痛む歯にあてがうと、痛みを起こすことなく歯が抜けるであろう。歯痛効果2

カエルを生きたまま純粋なワインの中に投げ込めば即死するであろう。ところが死んだ後ふたたびワインから取り出して、清らかな水の中にその死体を浸してやると再生するであろう。 再生効果

 カエルの足を乾燥して肌身に吊るしておけば、痛風(naqris)に悩むものは痛みを鎮静することができよう。また病気と禍に対するお守りとなろう。 痛風効果、お守り

 孕むのを嫌がる女性ならば、水中のカエルを捕らえて、その口を開かせ、三度唾液を吐きかけて、水に戻せば、妊娠する心配はなくなる。(避妊効果)

 

 カエルの舌(lisaan)を寝ている女性の身体の上に置くと、寝言でその日彼女が行ったことを告白する。催眠自白剤1 

同じくカエルの舌をパン(khubz)に挟んで食べさせると、盗みの嫌疑のかかったものは、夢で盗みを告白する。催眠自白剤2

 

 魔女的な言行をする者に、カエルの骨の粉末を飲ますと、正常に戻る。逆に正常な女がそれを飲むと魔女的になる。

 

 

                                                                                                        

カエルの夢解き al-Ta”biir al-Difdi”

               Al-Akl 178-79、“Awdullaah 83、Qutb 160、Dam.Ⅱ152  

カエルを夢で見ると、それは信心深い人、求道者、イスラム信仰に従順な人を意味する。なぜならばカエルは、神を讃える賛美歌を歌い、また水をかけ、不信心の炎を消そうとするからである。また地獄の火責めを失くそうともするからである。

別の解釈では「貞節で、清らかな、敬虔な女性」を意味しよう。

また凶の解釈では、カエルの鳴く習性の悪い方が理由とされて、「騒音を出す人、うるさくものを言って付きまとう人」を意味する。

 

たくさんのカエルを夢で見ると、それは天罰(が下るの)だと解釈される。{なぜならば「天から降るカエル」のところで説明したように、それは預言者モーゼの奇跡の故事に由来するからである。聖典「クルアーン」の中、第7章133節ほかにある通りである}。

たくさんのカエルを夢で見ると、それは、別の解釈として、騙し屋、詐欺士、魔術使いを意味する。{こちらは土カエルなど大型種の奇怪なイメージが、トリックや魔術、変身とのイメージと結びついた}

 

カエルたちと一緒にいるのを夢で見ると、それは彼の家族が親戚や近隣の人々と親密な社会関係を築くことを意味する。{カエルの密集好みの反映}

カエルたちと会話を交わすのを夢で見ると、それは今以上に地位や資金を得る、時には王位にまで昇進すると解釈される。 {カエルの善性、霊性}

 

カエルが家に入ってくる夢で見ると、それは禍が生ずることを意味する。

カエルたちが街を出てゆくのを夢で見ると、それは天罰、災難も共にでてゆくことを意味する。{上二項はモーゼのカエル罰の反映}

 

カエルの生息する浜辺で魚漁生活を送る者、その関係者がカエルの夢を見ると、その日の大漁が約束される。

カエルの漁をする夢を見た場合、敵対者や競争者から勝利を得ることを意味しよう。

カエルを殺す夢を見た場合、それは上と同じく敵対者や競争者から勝利を得ることを意味しよう。{カエルの相反した概念、また正夢、逆夢の反映}

カエルの肉を食べた夢で見ると、それは吉凶があり、凶の方は「災難」に会うことを意味する。{イスラム法のハラーム(不可食)を犯すことになる}また吉の方は「権威を得る」ことを、また「巨額の富を得る」であろう。{こちらは大型カエルの持つ異常性が反映していよう。