黄道12宮と病気・医療  
                             病いと治し、アラブ・イスラムの伝統観(4)


キーワード:
黄道12宮は12か月の各月の指標
マクロコスモスの主座
12宮のミクロコスモス
各宮の細目には個人の12の運気
第6運気が傷病運の領域(bayt al-amraad)
12宮の守護惑星
太陽の六宮 月の六宮
ハヤーキル(al-hayaakil)の五芒星護符

イトリーファル(Itriifal 薬草の一種)
四体液と12宮
黄胆汁質は牡羊獅子射手  粘液質は牡牛乙女山羊
多血質は双子天秤水瓶    黒胆汁は蟹蠍魚
季節(春夏秋冬)合致させる説

 

 

 

黄道12宮は一年12か月の各月の指標となったし、また各宮=ブルジュ(城砦)にはさまざまな性格が込められてマクロコスモスの主座として人間の誕生月として影響を及ぼしていた。それのみか、同時に惑星や恒星の考察も進み、天文学の発達をみせ、また占星術のほうにも多彩の「相」を形成して大いなる発展を見た。上は天下国家の、下は各個人の、さまざまな予定の指標とされたし、出来事の予兆を読み取ることにも一般化した。

 

個人の領域に限っても、12宮(ブルジュ)そのものの性格、守護惑星の意味付け、また星座間の位置関係によって、吉凶が判断されることになる。運や人生また様々な身近な日常的な事柄に判断材料を提供している。西欧ではロットとかパートとか呼ばれているものである。その中でも、これからの人生・生活を営む上で、最も基本的な領域、これをバイト(buyuut < bayt= 家)という。バイト = 領域は12宮にならって12項目に纏められている。このバイト(領域)に関与するのも12宮とその守護惑星であって、順次対応していることになる.

 

個人の運や人生また様々な社会的なっている身近な日常的な事柄にも天文材料は判断を提供している。12宮のバイト(領域)に限っては以下のように理解されている。守護惑星もまたその威力は運気全体に及ぶ。
① 生命・人生運領域(bayt al-jawlah、al-hayaat wa-l-ma"iishah)
② 金運・商売運領域(bayt al-maal wa-l-kasb)
③ 兄弟運の領域(bayt al-akhawaat)、旗頭運の領域(bayt al-raayah)とも。
④ 両親運の領域(bayt al-aabaa’i wa-l-ummahaat)
⑤ 子供運の領域(bayt al-awlaad)、子胤(たね)の領域(bayt al-taqiyy)
⑥ 傷病運の領域(bayt al-amraad )
⑦ 女性・結婚運の領域(bayt al-nisaa')、(異性の)赤い領域(bayt al-humrah)とも。
⑧ 死・恐怖運の領域(bayt al-mawt wa-l-khawf)
⑨ 旅・移動運の領域(bayt al-asfaar)
⑩ 名誉・地位・権力運の領域(bayt al-"izz wa-l-sultaan)
⑪ 友人運の領域(bayt al-asdiqaa’)、交友運の領域(bayt al-ijtimaa")
⑫ 自分を危うくするもの・敵運の領域(bayt al-a"daa’ wa-l-hasaad)
ほかの領域(bayt)も関わりがありものがあるが、本稿に欠かせないのは⑥の傷病運の領域(bayt al-amraad )であり、それについて記しておこう。また前稿の四体液説も考慮せねばならない。これらも絡ませながら、黄道12宮と病気・医療について簡略に述べてゆこう。

 


第1宮 牡羊座・白羊宮の病気と治療
牡羊座・白羊宮(al-Hamal)生まれの者は、その星座の特徴を直接に受ける。四体液説では、暑にして乾の黄胆汁(al-Safraawayyah)が関係している。また牡羊座・白羊宮を守護する惑星である火星の影響もうける。
⑥疾病の領域(bayt al-amraad) に関しては、
          マクロコスモス(天体)では乙女座と水星とが関与している。
          ミクロコスモス(人体)では主として頭部に症状が現われやすい。
疾病には罹(かか)りやすい。頭痛・片頭痛(sudaa”)、熱病(humaa)脳神経痛(waja” al-“asab)、不眠症(araq)などの脳(mukhkh)から起因する諸症状が現れるであろう。
感冒 (nazal)、腫瘍(awtaam)、吹き出物(buthuur)にもかかりやすい。これらの症状は、顔色、顔の表情、眼にも表われ、その状態から判断できよう。
時としてジンの風(riyaah al-jaan=原因不明の流行病?)のような大病に見舞われる。
多くは寒さが起因しており、その処方であるが、権威者がハヤーキル(al-hayaakil)とアンザルーン(al-andharuun)の護符(下図参照)の文句を彼のために書いてあげ、患者がそれを護符として首に吊るして肌身離さず身体につければ、癒されるであろう。 
                              Ma”shar12、TuukhiiⅠ115、Ⅱ25、Ⅲ7

 

病気治し、息災祈願の護符ハヤーキル

 護符ハヤーキルhayaakil。ハヤーキルとは、単数ハイカルhaykalの複数形で、「巨塔」の意味である。傷病の猛威の嵐が吹き荒れようとも、敢然と立ち向かい、それらを遮り、やり過ごす護符である。数ある護符の中でも、特に病魔に対して効果あり、とされている。
多くは五芒星に象られる。五芒星の中心や囲まれた空間の中に、神の最も威力ある印・サイン七つが秘文字として描かれる。

七秘文字それぞれが上段の二つの例である。最上段は両端に五芒星が描かれているが、独立した図にはこれが多い。次段図では五芒星が右端だけになっている。
七秘文字それぞれには諸説あるが、簡略に説明してゆく。
①右端の五芒星は「預言者のハタム(Khatam封印)とされ、また「ソロモンのハタム(Khatam封印)」としても親しまれている。その秘義を象徴する五芒星の印・サインとして多義に渡って理解されているが、一例を挙げておくと、イスム・アアザム(al-Ism al-A”zam神の最も威力ある名称)またアスマーウ・フスナー(al-Asmaa’  al-Husnaa神の諸属性を表した美称)のうち。ファルド(Fard孤高なる者。並びなきもの)を表すとされている。
②次の棒三本を縦に、その上に横棒を一本描く図像は、それぞれ槍と見立てられている。破邪の印である。また神の属性ジャッバール(Jabbaar巨大なるもの)と見立てられている。
③三番目の印はアラビア文字Miimが尾が短めにかれる。預言者Muhammadのo頭文字ともされ、神の属性のシュクール(Shukuur有難きもの)を表すものとされる。
④四番目のものは階段の象徴で「希望、天国への階段、かけはし」を表す。また神の属性サービト(Thaabit揺るぎ難きもの)とされる。
⑤次の五番目は縦四本線であり、神Allaahの略文字ともされ、善行へ導く指をも象徴している。また神の属性ザヒール(Zahiir顕現するもの)とされる。
⑥次の六番目のアラビア文字Haa’はHuwa(彼=神)を指し、「悪を裂くもの」を表す。また神の属性ハビール(Khabiirすべて知るもの、全知者)とされる。
⑦最後のアラビア文字WaawでありHuwaの後続文字であり、それが逆さになり尾が上に長く伸びているのは、悪血を抜く瀉血道具を模してもおり、この文字のみ赤く色どりされるものが多い。また神の属性ザキー(Dhakiyy叡智あるもの)とされている。
下段左がイスム・アアザム(al-Ism al-A”zam神の最も威力ある名称)を線列にして五芒星としたハヤーキルの中でも最も威力ある護符。右は宝石の中にイスム・アアザムが刻み込まれた指輪。

 

 

第2宮 牡牛座・金牛宮の病気と治療
牡牛座生まれの者は、その星座の特徴を直接に受ける。四体液説では冷にして乾、四元素では土、黒胆汁質(al-Sawdaa’)の関与がある。また牡牛座・金牛宮を守護する惑星である金星の影響もうける。
牡牛座・金牛宮生まれの者の⑥傷病運については
    マクロコスモス(天体)では天秤座と金星とが関与する。
    ミクロコスモス(人体)では首部を中心に咽喉、胸上部とが関与する。
幼少期において病気多く、瀕死に至る恐れも。首から咽喉、胸上部にかけての潰瘍(qaraahah)に注意。扁桃腺(lawzataan)、胸焼け(iltihaab al-rawz)に罹り易い。ペスト(ghadad)には最大の用心を。脊髄、肩甲骨、それに心臓にも注意怠るべし。
精神力で回復できるが、一生病気がちであろう。身体の部位の様々にその病状がでるが、最善の特効薬は蜂蜜を薬膳とすること。(拙稿「星と動物(1)」牡牛座の項)
また⑧死・恐怖の領域(bayt al-mawt wa-l-xawf)  に関しては射手座と木星とが関与する。カイハク(kayhakコプト暦4月、太陽暦12月)の月には用心しないと死に至ることもある。2歳、3歳、5歳、15歳、35歳のときには、木曜日に病気にならないよう用心。それらを乗り越えれば子孫の繁栄も約束されよう。 
                               Ma”shar17、TuukhiiⅠ115、Ⅱ26、Ⅲ7、

 


第3宮 双子座・双子宮の病気と治療
双子座・双子宮生まれの者は、その星座の特徴を直接に受ける。四体液説では暑にして湿、空気・風の性質を持つ血液質が関与する。また双子座・双子宮を守護する惑星である水星の影響もうける。
そして⑥疾病の領域(bayt al-amraad) に関しては、
    マクロコスモス(天体)では蠍座と火星とが関与している。
    ミクロコスモス(人体)では身体の上部の体側、肩や両手、両肘が関与する。
そうした身体部位の腱や筋肉、骨、関節の傷病に罹り易い。また呼吸器官や血液系の病気にも罹り易い。内臓では腎臓(kulyah)には特に注意を要する。高熱と関係する病を多く持つことになろう。          

                                TuukhiiⅠ115、Ⅱ27、Ⅲ7、Ma”shar23、
 

 

 


     第4宮 蟹座・巨蟹宮の病気と治療
蟹座・巨蟹宮生まれの者は、その星座の特徴を直接に受ける。四体液説では冷にして湿、水の性質を持つ粘液質(al-Balgham)が関与する。また蟹座・巨蟹宮を守護する惑星である月の影響もうける。
蟹座・巨蟹宮の疾病の領域(bayt al-amraad) に関しては、
   マクロコスモス(天体)では人馬宮・射手座と木星とが関与する。
   ミクロコスモス(人体)では人体部位の胸部が関与する。
冷熱と湿とが勝るため、胸部、腹部や心臓の疾病には罹かかりやすい。
胸部や胃、女性ならば胸部でも乳房や乳首ビッズbizzuに関わる病いが多かろう。内臓器官、胃を始めとして消化器系と、結核(sill)などの呼吸器系の病気にも罹り易いので要注意。そして痛風(al-Naqras)関係の病気が多い。
療法はオレンジジュースを飲み、赤色した純なタマルヒンディーと蕪の濃縮ジュースを飲むこと、その後に短めの生姜を加えて飲用すれば相当の治療となろう。
薬としては板状キニーネ(kiinaa khashabiyyah)とヒメウィキョウ(kiraawiyyah)とを飲用として飲む。眠る直前と直後に唾液と一緒に飲むと効果があろう。
                               Ma”shar23、TuukhiiⅠ115、Ⅱ29、Ⅲ7、

 

 


第5宮 獅子座・獅子宮の病気と治療
獅子座・獅子宮に生まれた者は、その星座の特徴を直接に受ける。また獅子座・獅子宮を守護する惑星である太陽の影響もうける。
四体液説では、暑にして寒の黄胆汁(al-Safraawayyah)が関係している。
⑥疾病の領域(bayt al-amraad) に関しては、
    マクロコスモス(天体)では山羊座・磨羯宮と土星とが関与する。
    ミクロコスモス(人体)では人体部位の腹部が関与する。
傷病はその部位、身体中央部に現れる傾向がある。幼少時多くの疾病に罹(かか)り、頭痛、熱病、脊椎(salab)痛、関節痛、痙攣(shanaj)、震え(ri"shah)、心悸亢進(khafaqaan)などに悩まされよう。特に心臓と血液に関わる諸病に患わされる。真夏の不健康な空気、激しい風の作用が原因としても考えられる。
療法であるが蜂蜜、牛のバターを食すること。大人になるまで他にもさまざまな病気に罹ることが考えられるので日常生活は要注意である。 
夢判断の中には、「獅子を夢見ると 病気であった者が回復する」ことを意味する、とある。また獅子と格闘する夢を見た場合;それは病気との闘い、闘病を意味する。 
                            Ma”shar23、Tuukhii Ⅰ115、Ⅱ30、Ⅲ7

 

 

        
第6宮 乙女座・処女宮の病気と治療
乙女座・処女宮に生まれた者は、その星座の特徴を直接に受ける。また乙女座・処女宮を守護する惑星である水星の影響もうける。
四体液説では冷にして乾、四元素では土、黒胆汁質(al-Sawdaa’) の関与がある。
⑥疾病の領域(bayt al-amraad) に関しては、
    マクロコスモス(天体)では宝瓶宮・水瓶座と土星とが関与している。
    ミクロコスモス(人体)では人体部位の下腹部が関与する。
そうした部位に多様な病気で悩まされる可能性がある。腹痛、内臓疾患、回虫類(duud pl. diidaan)など消化器系、さらに関節痛(rukbah)、また睾丸(khisyataan)などの患いが心配される。
対処法はイトリーファル(Itriifal 薬草の一種、下図参照)と蜂蜜とで捏ねて練り薬・軟膏(ma"juun)として用いること。
また⑧死・恐怖運の領域(bayt al-mawt wa-l-xawf)に関しては白羊宮と火星とが関与する。病気がちなので、両者が合となった年は死ぬ危険性が高い。その時期を乗り越えれば長命が約束されよう。
 アラブの信ずるところ、処女宮の星の元に生れた者は、「土」の性格を表出する傾向あり。色白で、痩身で大柄である。頭がよく、節制し、決断力・統率力あり、弁舌が巧みである。但し、色恋沙汰で、いざこざを起こしやすい。病弱の気味がある。月曜日は要注意、病気に罹るとすればその日。
一方夢判断においては、処女宮に月が宿る夢を見た場合、健康には良好で、志抱く者には良しと解しえよう。(判断285)
                      (Tuukhii1115、125、231~33、37、ma”shar 32~33)

 

 


第7宮 天秤宮・天秤座の病気と治療
天秤宮・天秤座生まれの者は、その星座の特徴を直接に受ける。また天秤宮・天秤座を守護する惑星である火星の影響もうける。
四体液説では暑にして湿、空気・風の性質を持つ血液質(al-Damm)が関与する。
そして⑥疾病の領域(bayt al-amraad) に関しては、
     マクロコスモス(天体)では双魚宮・魚座と土星が関与しよう。
     ミクロコスモス(人体)では人体部位の下腹部が関与しよう。
疾患は臍を中心とした下腹部に出る傾向がある。消化器系、血液系、排泄器系の疾病に罹かかりやすい。血液の障害も伴い、排泄系の腎臓(kulyah)が侵されやすく、尿道結石(haswah)などが生じやすい。
 常の対処として、睡眠をとる時は体を右、脇腹を下にして、頭を東にして眠ること。そうすれば襲われやすい兆候(junuun)に対して安全が保障されよう。粘液系(balgham)の病気、膝などの関節痛に悩まされる恐れあり。これらには第6宮同様イトリーファル(al-Itriifal)と蜂蜜とから効果を得よう。
年初は特に要注意。身体の養生に細心の注意をしていれば、80歳を超えて生きる可能性あり。植物が芽を出す(amshiir)月=2月の月曜日に病気の兆候が顕われると、それは生命にかかわる病気になる恐れあり。7歳、17歳、37歳、に厄あり。それを超えれば68歳まで生き延びよう、重大事がなければ。
                         Ma”shar23、TuukhiiⅠ115、Ⅱ34、Ⅲ7、Ⅰ115~122


    イトリーファル Itriifal 

イトリーファルは現在でも薬用ととして用いられている。
上図はパキスタンのラホールにある製薬会社Marhabaのイトリーファル・ザマーニー(Itriifal Zamaanii、時のイトリーファル)との薬品名で、何時であれ即応に適合したイトリーファルの意味であろう。ラベルに張られた木の実が恐らくイトリーファルの成熟した実と乾燥させた医療用の実なのであろう。
熱病に効き、頭痛やカタル、炎症、目の充血、それに疝痛などの薬とされている。

 

 

 

 

第8宮 天蠍宮・蠍座の病気と治療
天蠍宮・蠍座生まれの者に関しては、その星座の特徴を直接に受ける。また天蠍宮・蠍座を守護する惑星である火星の影響もうける。
四体液説では冷にして湿、水の性質を持つ粘液質(al-Balgham)が影響を及ぼす。疾病の領域(bayt al-amraad) に関しては、
    マクロコスモス(天体)では白羊宮と火星とが関与する。
    ミクロコスモス(人体)では人体部位の股間が関与する。
下腹部から性器(生殖系muntijah)、排泄系の疾病を抱え込むことになりやすい。下腹部尿道の結石、下腹部膨張(fitaaq)、睾丸(hisyah)や膀胱と子宮(mathaanah)の傷病、痔(baasuur)、などに疾患の生ずる恐れあり。主たる病はリーカーン(riiqaan唾液・涎)に起因するもので、頭部や肋骨、 膝などに痛みが響き、心臓の動静脈にも悪影響が及ぼう。
この治療にはレモンシロップとウスール(usuul大根<根)の散薬(safuuf)を、朝夕に毎日飲むと効果がある。
                       Ma”shar23、TuukhiiⅠ115、Ⅱ35、Ⅲ7、Ⅰ115~122

 

 

 

第9宮 射手座・人馬宮の病気と治療
 射手座・人馬宮生まれの者には、その星座の特徴を直接に受ける。また射手座・人馬宮を守護する惑星である木星の影響もうける。
四体液説では暑にして寒の黄胆汁(al-Safraawayyah)が関係している。
⑥疾病の領域(bayt al-amraad) に関しては、
   マクロコスモス(天体)では金牛宮・牡牛座と金星とが関与する。
   ミクロコスモス(人体)では人体部位の大腿部が関与する。
軽い病が多いが、腰から大腿部にかけての病に罹り易い。臀部("ajz)、太腿(fakhidh)などに疾患が出やすい。さらには肝臓(kibd)、腸(aqsaab)の腫瘍(awraam)、結核(sill)の患い、および血液、神経系統にも注意が肝心。
血気盛んな時に思わぬ落とし穴があり、死の瀬戸際まで追いつめられることもあるから、その時期の用心が肝心。
                            Ma”shar23、TuukhiiⅠ115~122、Ⅱ36、Ⅲ7 

 

 

 

第10宮 磨羯宮・山羊座の病気と治療
 磨羯宮・山羊座生まれの者は、その星座の特徴を直接に受ける。また磨羯宮・山羊座を守護する惑星である土星の影響もうける。
四体液説では冷にして乾、四元素では土、黒胆汁質(al-Sawdaa’)の関与がある。
また⑥疾病の領域(bayt al-amraad) に関しては、
   マクロコスモス(天体)では双児宮とその守護星水星とが関与する。
   ミクロコスモス(人体)では人体部位の膝部が関与する。
膝を中心の疾患が出やすい。リューマチや痛風(niqrus)に罹り易い。また血液の循環に疾患が出やすい。胆汁 (safraa')過多となり、身体全体にわたりライ病(baras)、疥癬(jarab)などもまたが生じやすい。
それを予防するためにも治療のためにも、 『コーラン』のマウウィザ(ma"widhah魔除け、最後の113・114章)の二章を毎夜唱えて、その護符を寝る前にベッドの右側において眠る要あり。  
                          Ma”shar23、TuukhiiⅠ115、Ⅱ38、Ⅲ8、

 

 

 

第11宮 宝瓶宮・水瓶座の病気と治療
宝瓶宮・水瓶座に生まれた者には、その星座の特徴を直接に受ける。また宝瓶宮・水瓶座を守護する惑星である土星の影響もうける。
四体液説では暑にして湿、空気・風の性質を持つ血液質(al-Damm)が関与する。
そして⑥疾病の領域(bayt al-amraad) に関しては、
   マクロコスモス(天体)では巨蟹宮・蟹座および守護惑星である月とが関与する。
   ミクロコスモス(人体)では人体部位の下肢、脛(すね)と脹脛(ふくらはぎ)が関与する。
脛を中心とした疾患に罹り易い。また循環器系の病気も多い。病弱な体質で、湿気(rutuubah)及び寒さや震え(kazaaz)、特に寒風(riih baarid)に弱く、それらに起因する疾病には罹りやすいので要注意。発作熱、眩暈(めまい)、ぼんやり(dawkhah)することが多くなる傾向有り。病弱で、弱視の子が生まれる可能性あり。 
                              Ma”shar23、TuukhiiⅠ115、Ⅱ39、Ⅲ8

 

 

 

第12宮 双魚宮・魚座の病気と治療
双魚宮・魚座に生まれた者には、その星座の特徴を直接に受ける。また双魚宮・魚座を守護する惑星である火星の影響もうける。
四体液説では冷にして湿、水の性質を持つ粘液質(al-Balgham)が関与する。
⑥疾病の領域(bayt al-amraad) に関しては、
     マクロコスモス(天体)では獅子宮・獅子座とその守護星太陽とが関与する。
     ミクロコスモス(人体)では人体部位の足(脚の底部、踵、爪先)が関与する。
黄胆汁(safraa')過多になりやすい。それに起因する多くの疾病を抱え込むことになる。脚の底部、踵、爪先などに障害が出やすい。動きが重々しく粘りを伴い、固まる性質がある。粘液質系の病気にも注意。痛風(niqrus、「王の病」daa’ ak-muluukとも呼ばれ、身分の高い者、富者などの贅沢な食習慣の故に生ずるとされた、西欧の「王の病」は瘰癧(るいれき)とされるがそれとも異なる)などがその典型、腫瘍(awraam)も出やすい、他にも結核(sill)に要注意。
痛風対策・治療にはウスール(usuul 大根<根)の散薬(safuuf)を用いると効果がある。オレンジシロップやタマルヒンディーシロップも有効である。その病気を克服すれば、分限者となれるし、分限者ならば、なり続ける可能性が大である。
                              Ma”shar23、TuukhiiⅠ115、Ⅱ40、Ⅲ6-8

 

 


なお四体液と12宮に関しては、一般的には牡羊座は黄胆汁に、牡牛座は粘液質に、双子座は多血質に、蟹座は黒胆汁に配して以下の宮を順次あて、四体液の黄胆汁質は牡羊座、獅子座、射手座。粘液質は牡牛座、乙女座、山羊座。多血質は双子座、天秤座、水瓶座、そして  黒胆汁は蟹座、蠍座、魚座に振り分けているのが普通である。
しかし黄道12宮の星座自体、春夏秋冬を表して、一年周期を個々の星座は各月を明示するものであるから、四体液もそれに合わせなければならないとする。それ故、12宮との対応は、春夏秋冬を3カ月ずつとして、春=空気(風)=血液として第1~第3星座(牡羊座、牡牛座、双子座)=までを当て、夏=火=黄胆汁として第4~第6星座(蟹座、獅子座、乙女座)まで、秋=土=黒胆汁として第7~第9星座(天秤座、蟹座、射手座)を、そして冬=水=粘液として第10~第12星座(山羊座、水瓶座、魚座)を当て、季節の巡りに合致させる説もある。