ソドムのリンゴ ウシャル ”Ushar(2)


緩やかな茂みを作る灌木で、樹高は3~5メートル。木肌はコルク状で白く緑味が濃く薄く彩る。幹や枝からは傷つけると、わが国のイチジクのように粘っこい白い乳液が染み出て来る。
若枝は緑がかった白色で柔軟であるが、古くなると水気を失い空洞が出来たり、枯れたようになり簡単に折れてしまう。

 

     図3 花と蕾の拡大図。花は綺麗な星型、雄蕊も雌蕊も互い違いに位置を変えての星型

        になっている。

 

枝や幹は燃料及び炭の材料とされるが、上質の物とはならない。
イスラム以前の時代には、乾燥させた枝や幹を牛の尾に結わえ火を点け、小高いところから駆け降ろさせる儀式があった。雷、雨雲を呼ぶ雨乞い儀式である。
樹皮は細く長く切り裂いて、道具か膝を用いて、手で繊維状に編んで行く。細いものは糸として、太いものは紐や綱として利用されている。かつてはこうした縒り紐はランプの芯として用いられていた。ランプ油は魚油で、サメの肝臓やイワシの油脂が中心であった。

一番細いものは、歯を抜くための糸としても広く利用された。(わが国でも古くは家庭で歯を抜くために糸は用いられていた) 抜歯と同じく効果的なのが、疣(いぼ)取りである。この樹皮製の最も細い優れた糸を用いて、疣の根本をぐるぐる巻きにきつく縛り上げる。すると数日してポロリと落ちて、治る。

このやり方は、古くから伝統的になされてきたもので、家畜の足、ラクダの蹄などの疣類の処置には利用されてきたものである。更には三歳の雄ラクダの去勢にもまた,この糸紐が睾丸のぶら下がり口に結わえられて、睾丸ごと落ちるよう処方された。
根の皮は、赤痢や象皮病、それに梅毒の潰瘍などに効力ありとされている。

 

       図4 雄蕊と雌蕊の位置関係が分かる、左の花には真ん中に蟻が入り込んでお

           り、 蜜を吸っている。

         資料はいずれもNabaataat li-l-Imaaraati fi Turaath al-Tibb al-Sha”bii

                                 『民間医学の伝統におけるアラブ首長国の植物』1993より。

 

 

蕾は葉腋の間から、サルスベリのそれと類似して少し平たい円形で、白に紫が少し混じる。蕾も毒はなく、家畜だけでなく、子供たちにも人気で、絞り出すようにして口に入れる。

花は2~3センチで内側が、濃淡のある赤紫の五弁である。星型に伸び釣り鐘型に綺麗に開く。雄蕊は花弁と同色でその間に棒状に伸び、雌蕊は白黄色の包状の潰れた星型になって

いる。