玉三郎、仁左衛門のお蔦、主税。
湯島境内の場の前に
本郷薬師境内
柳橋柏家
がつくので、縁切りに至る経緯がよくわかる。

本郷薬師では、
主税が掏摸をひょんなことから助ける。
それには、
主税が掏摸であったという過去があったということが後にあかされる。
柏家では、酒井先生と主税の関係、お蔦と小芳のこと、酒井と小芳のことなど、背景にある複雑な人間関係が説明されている。

そして
いよいよ
湯島境内

もとはこの場はなくて後で加えられたということ。
玉三郎のお蔦は、
新派の初代水谷八重子を彷彿とされる台詞回し。
無垢であることは、純粋でも無知でもある。芸者として行きてきたお蔦が、学者の妻としてふさわしくなるように努力している様子が伝わっていじらしい。
仁左衛門の主税は、
年齢を感じさせない若さ。
恩人と恋人の間で揺れながらも、結局、師を選ぶ。

現代人からみると、
なぜ?と思えるが、それを当たり前に受け入れる時代なのだろうか。
二人の息の合ったやりとりは、じゅうぶん楽しめた。

ここでも
弥十郎の酒井が存在感をみせる。
小芳は、好きな役。萬壽のしっとりとして、やさしく気配りを見せるのはさすがだと思う。

掏摸の亀鶴は、重要な役。
本郷薬師で主税が助けなかったら、主税が職を失うこともなく、展開が変わったかもしれない。
湯島境内で、出会ったから、主税の決断のきっかけになったのかも、とか、いろいろ考えてしまった。

儚く美しい二人の世界に浸っていれば良いのか。
芝居に時代はどのくらい反映するのか、いろいろ考えてしまった。