役者が揃わないと上演できない山の段。
今回は花渡しからなので、
わかりやすい。

後室定高  玉三郎
雛鳥    左近
大判事   松緑
久我之助  染五郎
入鹿    吉之丞
小菊    京妙

玉三郎の後室は、夫なきあと領地を守る誇りと責任と娘雛鳥への愛情の間で心が振幅するさまを見事に演じた。
歌右衛門のように権高さが前に出るのと、坂田藤十郎のように柔らかいのに芯が強いのと二通りの定高があるように思えたが、今回の玉三郎は、姿は権高い歌右衛門のようだが、表現は藤十郎のようにきめ細やかで優しいと思った。
これが見納めかなと思うと寂しい。
また演じてほしい。
尾上左近は、曽祖父、祖父、父は、骨太の立役だが、線が細く華奢なので、可憐な雛鳥がよく似合う。
際立った美貌ではないが、行儀よくて好感がもてる。
トーンを上げた台詞に場内から笑いがあったのは、失礼だった。
染五郎の久我之助は、悲劇のヒーローの美しさ、儚さはあるが、少し硬い。演技もお顔ももう少しふっくらすると嬉しいな。
松緑の大判事。
ときどき、角度によってギョロッとした目が気になったが、それ以外は大健闘。
吉右衛門が亡くなり、白鸚も大きな役は無理そう、仁左衛門は他の役で手一杯という中で、
大判事を演じる事が出来る役者は思いつかない。
老役の大役たくさんあるので、どんどん演じてほしい。
歌六、弥十郎なども候補だろうが、時代物が似合うのは松緑かなあと思う。
歌右衛門、魁春(松江)、梅玉(福助)のイメージが強すぎるので、困ってしまう。
腰元小菊で、京妙が出演。
ちょっとチャリが入った役のように思っていたが、京妙は、普通に可愛く気働きのできる腰元としてきちんと演じていた。
本当に可愛かった。

吉之丞も入鹿を立派に。
師匠ゆかりの秀山祭で、この役はなかなかイキで良い感じ。

両花道
桜の枝
真ん中に川が流れて、その左右の妹山、背山。
視覚的にも美しいし、
この悲劇が、華やかな。ひな祭りの時期に起きるのもあわれをさそう。
左右に分かれた竹本の掛け合いも大好きだが、
葵太夫は出ていないし。
文楽の迫力にはちょっと及ばない感じ。
上手な竹本を聴きたいなあ。

色々希望言ってしまったが、全体としてとても良い出来。
もっともっと良くなりそうだと思うと、注文も多くなってしまった。