「発表会や試合に出ると成長する」


私はこの考えがいつの間にか身体に染み込んでいて、「当たり前のこと」すぎて疑う余地もありませんでした。みなさんはいかがでしょうか?



小学校の教師としてもこの考えのもと、子どもたちが発表する場や試合をする場をつくってきました。「発表を終えた子どもたちの満足そうな表情」「達成感に満ち溢れた姿」数え切れないほどの子どもの姿を見て来ました。一方で、保護者の方からは、「学校で頑張ったときの家での反動がすごいんです。」といった話をよく聞いていました。発表の場である学校での姿しか知らない私には、家での姿がなかなか想像できませんでした。しかし、先日、4歳の長男が生まれて初めてサッカーの練習試合に出場したときの姿を通して、保護者の皆さんがおっしゃっていたことの意味がよく分かりました。試合を通して大きく成長したのですが、その前後には暴れ回る長男の姿がありました。成長は直線的ではない。紆余曲折して回り道をしがら、高まったと思ったら下がる。下がったところから急激に伸びる。このような繰り返しであることが、長男の姿を見てよく分かりました。試合前後の3日間の様子を振り返っていきます。




試合前日。「試合で点を取りたい!」と思っていた長男は、公園でドリブルのシュート練習をしました。

この日の公園でのサッカーは、いつもよりも長い時間、真剣に練習に取り組みました。試合を意識することで練習をいつも以上に真剣に取り組む長男。さっそく試合の効果を感じました。脛当てや帽子を一緒に買いに行ったことも、彼のやる気に火をつけた1つの要因かもしれません。


試合当日。朝からとても不機嫌な長男。何をするにも文句を言い、親の言うことを全然聞きません。しまいには「試合行きたくない!」と駄々をこね始めました。どうやら、試合のプレッシャーを感じているようです。実は、長男は昨年度の幼稚園の演技発表会で踊ることができませんでした。運動会の徒競走を全力で走ることができず、発表会や試合の場で力を発揮することができませんでした。


それでも、チームに所属している一人として、「行きたくないから試合に行かない」という長男のわがままを許したくありません。半ば強引にではありましたが、試合に連れて行きました。会場に着いてからも、もじもじしていつもの勢いがありません。完全に会場の空気に飲まれていました。悪いことに、ウォーミングアップで転び肘から出血。「痛い!やりたくない!」が再び始まってしまいました。


そうこうしているうちに試合開始の時間がきました。

私たちのチームは7人いましたが試合は6人制で行いました。「出たくない!」と叫んでいる長男をベンチに座らせました。


試合が始まると、長男の目の色がかわっていきました。「とうちゃん、試合出たい。」と言いました。試合を見て、自分にもできそうだと思ったようです。しばらくしてチームメイトと交代。長男が試合デビューを果たしました。一生懸命ボールを追いかけました。前日の練習の形からドリブルシュートを2本決めました。満面の笑みで、嬉しそうにベンチの私とハイタッチしました。「でたくない。」と数分前に言っていた長男はどこへやら。一度ドリブルシュートで点を取ったことが自信につながったようで、その後のプレーではドリブルで仕掛けることが多くなりました。心のリミッターが外れ、積極的に取り組めるようになった瞬間でした。


最後まで頑張りきった長男。最後は疲れてあまり動けませんでしたが、試合を通してプレー面でも、気持ちの面でも大きく成長できました。帰宅時の車の中で長男は寝てしまいました。車で2時間ほど寝てから目を覚ますと、なぜか大声で泣き、暴れ始めました。かなり無理して頑張っていたことを感じました。試合では活躍できたし、満足していたはずですが、緊張したり、不安になったりしていたことを感じました。試合の姿からだけでは分からない葛藤を感じることができまして。


帰宅後のお風呂の中では、この日の試合を振り返りました。ドリブルとシュートに自信をもてたことを、長男が教えてくれました。試合の話をしていると、長男が「明日も練習したい!」と言い始めました。先程まで泣き喚いていた長男ですが、時間が経ち、落ち着いて考えることができるようになっていました。



試合翌日。私は仕事から定時で帰り、近所の公園で長男練習をしました。途中から一緒に試合をしたチームメイトが公園に来てくれ、2対2で試合をすることができました。前日の試合で自信をつけた長男は、積極的にドリブルで相手をかわしていきました。試合によって心の成長だけではなく、技術面が一気に高まりました。さらに翌日も、夕方から一緒に練習をしました。長男は細かい練習を提示してもほとんどやろうとしません。とにかく試合が好き。試合を通して技術や判断力を磨くことが長男にとってはらいいのだと思います。


このように、試合の前後で子どもの心は大きく揺れながら壁を乗り越え、成長することができました。成長は直線的ではなく、紆余曲折を経ることがよく分かりました。やはり試合や発表会は特別な機会で、子どもの成長を促す可能性がたくさんある活動であることが分かりました。また、成功体験だけに目を向けるのではなく、悩んだり困ったりする時間も大切にすることが、子どもの成長には必要なことであることがよく分かりました。


試合を通して大きく成長した長男。これからも彼が成長できる場や人に出会わせたり、つくったりしていきたいと感じました。

子どもからは本当にたくさんのことを教えられます!そしてたくさんの元気をもらえます。子どものもっている力はすごい!


長文、読んでくださりありがとうございました。