先日、私が小学生の時に所属していたサッカーチームに、幼稚園児クラスができたことを知人から聞きました。そこで、4歳の長男と一緒に練習会場になっている小学校に行ってみました。



 このサッカーチームは、私にとって特別なチームです。小学校3年生から6年生までの4年間所属しました。私の父がコーチをしていて、私にサッカーの楽しさ、厳しさ、素晴らしさを教えてくれました。小学校時代の私はJリーガーになることを夢見てボールを追いかけていました。練習後に父とお風呂の中で試合の振り返りをしたことや、父がチームのみんなにミサンガを作ってくれ、そのミサンガを付けて試合をしたことを思い出します。中学校、高校でもサッカーを真剣に取り組んできましたが、プロへの道は程遠く、夢を叶えることはできませんでした。父と一緒に夢をもって取り組んでいた小学校時代が、一番サッカーが楽しかったです。プロにはなれませんでしたが、小学校時代の思い出が、私が小学校の教師になろうと思った理由の1つであることを考えると、サッカーのおかげで私の今があることを感じます。

 

 そんなサッカーの楽しさを教えてもらった父ですが、私が高校生のときに病気で亡くなりました。父は、私が小学校を卒業をした後も、サッカーチームのコーチをしていました。父が亡くなった後にも、父の仲間のコーチたちは、私たち家族のことをいつも気にかけてくれました。父の追悼試合を毎年実施してくださったり、私のことをコーチとして迎え入れてくださったりしました。父が亡くなった後も、私のことをずっと支えてくれたのが、このチームです。コーチ達は私にとって親戚のような存在です。そしてチームは私が帰れる故郷のような場所でした。

 

 

 


 長男を連れて練習会場の小学校に行くと、私がお世話になってきたコーチたちがいました。私の息子に優しく声をかけてくれました。そして私に「待ってたよ。」と言ってくれました。コーチの皆さんは、長男の気持ちに寄り添いながらサッカーの楽しさを教えてくれました。練習を終えて、長男と帰る車の中で、私が「どうだった?」と聞くと、「楽しかった!このチームでサッカーやりたいな!」と言いました。私と同じで、長男もこのチームにサッカーの楽しさを教えてもらいました。長男の言葉を聞いたときに、私は自分の父のことを思い出しました。そして、約30年前、私が「サッカーをしたい」と言ったときの父の気持ちと、自分の気持ちを重ねていました。


 

 長男の「サッカーをしたい」という言葉に、私のサッカー熱が再び燃え上がりました。長男のおかげで、サッカーが大好きだった小学生時代の熱い思いがよみがってきました。そして、私が父にサッカーの楽しさを教えてもらったように、今度は私が息子たちにサッカーの楽しさを伝えていきたいと思いました。

 

 

 さっそく、仕事帰りにJリーグの下部組織(小学生)のチームの練習を見に行ってきました。さすがJリーグの下部組織。セレクションをくぐり抜けて集まった選手たち。小学生ながら素晴らしい技術のある選手ばかり。あまりの技術の高さに惚れ惚れしました。練習を見ていると、近くにお子さんを見守る保護者の方がいらっしゃいました。話しかけるのは失礼かと思いながらも、「Jリーグの下部組織に入る子どもの保護者の方はどのようなことを考えているのか」「どのような教育方針をもっているのか」と、気になることがたくさんあり、思い切ってお話を聞かせていただきました。「礼儀を大切にしていること」「幼稚園の頃からサッカーノートを付けていたこと」「とにかくサッカーが好きで、家の中でもボールを蹴って遊んでいたこと」たくさんのことを教えていただきました。私だったら息子がJリーグの下部組織に所属することができたら、思わず自慢したくなりそうですが、その保護者の方はとても控えめで、冷静に息子さんのことを話されていました。子どもの自立を尊重していらっしゃる親だからこそ、あのような素晴らしい技術をもち、サッカーが大好きな子どもが育つことが分かり、自分の生き方を見直す必要がありそうだと感じました。

 

 

 

 父が私にサッカーの楽しさを教えてくれ、父の仲間のコーチが私の息子にサッカーの楽しさを教えてくれました。そして息子が私にサッカーの楽しさを思い出させてくれました。そして世界を広げてくれました。サッカーが時を越えて人の思いをつないでくれました。