エヴァ・ローゼンスタンド物語


  • 1870年
  • デンマークのコペンハーゲンに刺繍専門店がオープンしました。
  • 刺繍材料と装飾的な家庭の織物
  • (例えばサンプラー、クッション、火熱除け衝立その他)のキット販売として初めてのお店でした。
  • 今から148年前のことです。



  • さてClara Wæverは少女の頃に、
  • 彼女の家族とともに
  • コペンハーゲンへ移り住みました。
    彼女は刺繍家として早い時期に才能を発揮し、
  • 大器を示しました。
  • ですから彼女はこの刺繍店から雇われたのでした。



  • 刺繍を少し知る人は、
  • このクララの名前を必ず覚えています。
  • 銀座三越にお見えになる
  • 年配の品格のある女性は、
  • 「ニューヨークに主人の赴任で暮らしていました頃にね、クララに憧れてエヴァのカタログを毎月のように送ってもらっていましたのよ。」
  • そんな風に語られます。 



  • これは1980年の
  • Eva Rosenstand Clara Wæverのカタログですが、
  • 表紙にEva Rosenstand Clara Wæverと表示されている訳は、
  • そもそもクララが開いた
  • 1890年(128年前)の
  • 彼女自身の店をいずれ継いだファミリーが、
  • 名前を変えて、
  • Eva Rosenstandとブランド名を冠したからで、
  • しかしコペンハーゲンのVesterbrogade 62のクララのお店へのオマージュとして、
  • 刺繍キットには、
  • Eva Rosenstand Clara Wæverと
  • 今でも表示されています。



  • ↓このコペンハーゲン市立博物館に近い場所です

  • クララは
    姉妹オーガスタと一緒に、
  • 材料の異なる種類の刺繍を販売し、
  • 様々なパターン(図案)を生みだしました。
  • (Eva Rosenstand)

    実は私はコペンハーゲンの古本屋さんで、
  • この右下の古いカタログを見つけて
  • 宝物にしているのですが、
  • ボタニカル植物をモチーフにしたデンマークらしい
  • 例えばフレメのゲルダ・ベングトソンにも通じる
  • 穏かな優しさに溢れた作品で、
  • 今でもこの繊細なタッチの
  • クララとゲルダを越える作家は
  • 出てきていない
  • と言われるほど、
  • この二人の作品は世界中の刺繍ファンから愛されています。



  • クララは自分のお店を開いた後、
  • 古典的なデンマークの白糸刺繍の刺し方や
  • クロスステッチを
  • 若い女性達に教えました。
  • 若い娘たちは、結婚持参金としての刺繍作品
  • 例えばベッドカバーやテーブルクロス8点を
  • 婚家のために作ることが常識の時代で、
  • 装飾的な用途の技術の訓練をクララはしたのでした。



またクララの作品は、
レトロ可愛らしさのある
どちらかというと押し花のような
平面的なボタニカル植物や虫、
鳥などだったのですが、
クララが1930年にその生涯を閉じると
次のオーナーJacob Holst がブランドを継承しました。



このオーナーファミリーは、
クララの作品とは全く異るけれども、
今の
  • Eva Rosenstand Clara Wæverの刺繍キットのスタイルに大変影響している画家のMads Stage

  • それから、
  • まさにエヴァらしいと称される
  • 画家Leif Ragn Jenseの作品を
  • 刺繍キットにしてどんどん発売しました。

こちらも、
その当時からエヴァのカタログで大変人気のあった

画家Verner Hanckeの作品です。

今のエヴァファンなら、

あー、この感じね✨

とすぐにわかるエヴァらしさがある作家作品です。


刺繍キットという、
図案に生地と刺繍糸と針をセットする
レディメイドキットは、
1970年代にはもう世界的なトレンドとなっていまして、
前出のようなニューヨークのご婦人などが、
国際郵便でカタログオーダーをしていた時代がありました。



その頃というのは、
今のエヴァのキットに使われている刺繍糸とは、
風合いや色が全然違っていました…
刺繍糸がエヴァのオリジナルだったということです。
草木染めの穏やかな色でした。



この糸の時代のエヴァキットを
ファンはオールドエヴァというのですが、
貴重品として、
古くからのエヴァファンは、
オールドエヴァの時代
とか、
オールドエヴァは糸が違いましたものね…
懐かしんだりしています。



それは、
Eva Rosenstand / Clara Wæverが、
2003年にCarl J. Permin A/S の傘下に入ったからで、
その頃には今のDMCの刺繍糸になっていまして、
それも大変美しい糸ですが、
古くからのエヴァファンは「オールドエヴァ」
と呼んで、
その昔の糸の風合いと色使いを懐かしんでいます。



そんなオールドエヴァのキットが、
銀座三越に届いています。
各10点あります。
貴重です!


1番

2番
糸も図案もオールドエヴァです。



これらは、私が大変尊敬する
「刺繍の生き字引き」Kさん
が刺した刺繍作品なのですが、
これを銀座三越に飾らせていただいています。

デンマークの刺繍は
約150年前からあるのにもかかわらず、
今でも大変人気があります。


そればかりか、
世界には1660年の刺繍図案も見つかっていますから、
刺繍の歴史の古さを認めます。



フランスのエルメスは創業が1837年(181年)。
クララが最初に勤めた刺繍店の創業は1870年(148年)。
エヴァとしては、今年が創業60周年。
歴史あるブランドとして考えると、
それほどエヴァの刺繍というのは、
私達を離さず、
時代を経て、先輩から後輩へ、
母から娘へと引き継がれている至宝の煌めきを
持っているのだと思います。