メジャーの投手の投球フォームを語る時によく引き合いに出されるのが2年連続でサイ・ヤング賞を受賞したこともあるサンフランススコ・ジャイアンツのティム・リンスカムです。
高校時代と大学時代にそろぞれシカゴ・カブスとクリーブランド・インディアンスにドラフト指名されましたが、いずれも拒否(48巡目と42巡目でしたから)。通算奪三振の大学リーグ記録をマークするも、体格的な面(身長180cm・77kgはメジャーの投手ではかなり小柄で細身です)と独特の投球フォームから多くの球団は指名を見送り、全体10位でジャイアンツに指名されました。
メジャー一年目から奪三振率9.62を記録し注目を集め、オフには打線強化のトレードの駒として名前も挙がりましたが残留。翌2008年は18勝5敗、265奪三振という成績を残し、サイ・ヤング賞を受賞。2009年も261奪三振など優秀な成績を残しサイ・ヤング賞を連続受賞。しかし2010年は231奪三振に前年を上回る16勝をマークするも防御率は1点近く悪化。速球の球速が落ちており、スライダーを多投するようになったのはこの年からです。2011年は防御率は向上するも負け越すなどエースとしては物足りない成績。夏場に成績が落ちる点を指摘されて体重アップを図ったことがマイナスになったのかもしれません。翌年のキャンプインまでに10kgもの減量に成功するも速球の制球力が落ちるなどスランプになり防御率は5点台に。奪三振も4年連続220を大きく下回りました(それでも奪三振率は9.0を超えていましたが)。2013年も、防御率こそ多少改善されましたが、全体としては大きな変化はなく、2014年も一流とは呼べない成績になっています。
小柄な体格に加えて、全身を使うダイナミックなフォームが以前から問題視されていました。特に投球フォームは、いつか肘が壊れると言われていましたが、今のところそこまで大きな故障はありません。投球フォームについては動画をご覧ください(昨日の投稿も修正しました)。
リンスカムの投球
特徴的なのはそのストライド。身体を沈みこませるようなフォームではありませんが、とにかくストライドが大きい。非常に暴投が多い(今季もここまで15)のはこのダイナミックなフォームのせいでしょうか。リンスカムの身体には合ったフォームなのかもしれませんが、あまりオススメできる投球フォームとは言えません。
また、前にも書きましたが、リンスカムはフォークも投げます。なぜか分類上はチェンジアップとされていますが(フォークチェンジと表記する人もいます)、あの握りはどこをどう見てもフォークボールです。球速がさほどなく、落差が大きいためスプリッターには分類されていませんが、だたらチェンジアップでいいだろうというのはちょっと乱暴ではないでしょうか。昨年の投球割合は18%ほどですが、肘は故障していません。フォークよりもスプリッターの方が肘に負担がかかるからと言われそうですが、リンスカムの例を見ても、フォーク/スプリッターが肘の靭帯の損傷に繋がると単純には言えないと思います。
ピークが短く、そのピーク時のピッチングが驚異的だったためにここ数年の成績は悪く言われがちですが、奪三振率はそれほど悪くないですし、先発3~4番手としてはそこそこ計算できる投手だと思います。ウェイトコントロールの失敗が大きかったのでしょうか。まだ30歳、復活を期待したいです。