アリアーネ・ヤコビの「都会の吐息(ビッグ・シティ・イズ・フォー・ミー)」 アリアーネ・ヤコビの「都会の吐息(ビッグ・シティ・イズ・フォー・ミー)」
 寒さが各地を覆う冬まっただ中のいま、暖房の効いた部屋で、ホットな飲料をすすりながらぬくぬくと楽しめる女性ジャズボーカルの、ともにデビューアルバムとなる最新CD2枚を紹介する。
 まずはボン発で、久々にかっちりとスイングして聴き応えのある本格派ジャズシンガー、アリアーネ・ヤコビの「都会の吐息(ビッグ・シティ・イズ・フォー・ミー)」。アリアーネはケルン大 でドイツ語文化研究や音楽教育などを履修した才女だそうだ。ジャケットでみるといかにも知的な美人だが、歌いっぷりはハスキーでパワフルで官能的だ。
 表題にもクロスする冒頭の「ビッグ・シティ」は、エイトビー とフォービートののりを交互に展開しつつ、大都会の誘惑にあらがえない女性の気持ちを代弁する。ほかに「踊り明かそう」「ラヴァー、カム・バック・トゥ・ミー」など、日本盤ボーナストラックを含めたスタンダードばかり全11曲を収録している。
 もう1枚はニューヨーク発。シックで、胸に迫る歌い方をするテッサ・ソーターの「キー・ラー の夜」だ。ロンドンに生まれたテッサは、両親の影響などで幼いころから音楽に親しんでいたが、ロンドン大学英文 に学び、ジャーナリストになった。しかし、いつかはジャズ歌手になりたいという夢を捨てられなかったとか。ユニークな転身だ。

 ジャズ界では相当遅咲きの部類に属するが、豊かな人生経験が歌唱の底を支えている。ニューヨークの第一線クラスのクインテッ をバックに、「アイランド」「ムーンダンス」など、いずれも聴く者の心を和ませるスタンダード全13曲を収録している。テッサ・ソーターの「キー・ラーゴの夜」
テッサ・ソーターの「キー・ラーゴの夜」
クラブ・ジャズ牽引 イサオ・オサダさん 古きものを壊し、新しきものを創造する イサオ・オサダさん イサオ・オサダさん
 日本のクラブ・ジャズシーンを牽引(けんいん)するトランペッタ で、イベントオーガナイザー、プロデューサーとしても活躍中のイサオ・オサダさんが「古いものを壊して新しいものを創造する」という音楽的スタンスのもと、5年前から取り組んできたサウンドプロジェクトが1枚のCDアルバムとして結実した。題して「isao osada presents afrontie 」。「アフロンティ 」とは、音楽の源流「アフロ」と、未知の領域「フロンティア」を合体した新イベントに名づけた造語だとか。
 『現代用語の基礎知識』によると、クラブ・ジャズとは「ヒップホップ(アフリカ系アメリカ人の音楽、ライフスタイル、着こなし、ものの言い方など)やハウス(シカゴのウェアハウスというクラブを発祥とするサウンド)のビートにジャズの要素を加えたもの」らしい。オサダさんは「80年代の後半に、ロンドンのスタジオミュージシャンやロックミュージシャンがジャズをカバーすることで生まれてきた、最先端の時代とファッションを取り込んだサウンド、もしくはシーンのことです」と説明する。
 11歳のときからトランペットを吹き始め、中学ではジャズバン を組んでライブ活動もスタートした。その後エスニックやロックなどさまざまな分野の音楽をこなし、海外でも旺盛な活動を続けてきた。一貫して「音楽に対する実験的な試み」を念頭におきながら、5年前から横浜の赤レンガ倉庫にあるクラブ「モーション・ブルー・ヨコハ 」で、DJやVJ(DJの映像版)を含む自己のバンドを率いて定期ライブを始めたことが、今回のアルバムリリースにつながった。「リズミックでグルービー、聴いて自然に体が動き出す」最先端の音楽が、この1枚に詰まっている。 キース・ジャレット「マイ・ソング」

 空気が凛(りん)としてきた。この時期になるとキース・ジャレッ の《マイ・ソング》が聴きたくなる。キースのピアノとヤン・ガルバレ のソプラノサックスが優しさと憂いと懐かしさをもった美しいメロディーを瑞々(みずみず)しく奏でる。1977年11月にノルウェーのオスロで録音されたアルバム『マイ・ソング』の表題曲である。北欧の凛とした風が心を洗ってくれる。
 残念なことにジャズバー「G」にはキースのアルバムは「ケルン・コンサー 」しか置いてない。
 「キースのフォークっぽいところが嫌いだから」とマスターは言う。
 『マイ・ソング』をかばんにしのばせ、マッカランのロックをなめながらタイミングをうかがった。
 ケニー・ドリュ の『パル・ジョイ』が終わると、「何かリクエストはありますか」とマスターが声をかけてきた。すかさず「これを」とカウンターの上に置くと、「なんだ、《ユア・ソング》じゃなくて《マイ・ソング》ですか」。
 「そう、エルトン・ジョ の《ユア・ソング》に匹敵する名曲です」
 《マイ・ソング》が流れ始めると、カウンターの端にいた美しい女が顔を上げて言った。「マスター、ジャケットを見せて」

ジャズトランペットのF・ハバード氏死去 29日、死去した米ジャズトランペット奏者、フレディ・ハバード氏=6月撮影(AP)  

29日、死去した米ジャズトランペット奏者、フレディ・ハバード氏=6月(AP)

 フレディ・ハバード 氏(米ジャズトランペット奏者)AP通信などによると、29日、カリフォルニア州の病院で死去、70歳。11月末に心臓発作を起こし入院生活を送っていた。

 インディアナ州 出身。58年にニューヨーク進出、60年代にオーネット・コールマン と共演した「フリー・ジャズ」やハービー・ハンコック と共演した「処女航海 」などで知られる。72年にはグラミー賞を受賞した。(共同)