難病・移植手術 宗太郎君逝く ハンバーガー食べたよ渡米前、ベッドで笑顔をみせる各務宗太郎君=東京都文京区の東京大学医学部付属病院、そうたろうを救う会提供

 生まれつき胃腸が機能しない難病の治療のため、米国で移植手術をして入院していた各務(かくむ)宗太郎君(9)=名古屋市東区=が29日午前2時40分ごろ(現地時間28日午後1時40分ごろ)、病院で呼吸不全のため死亡した。

 支援団体の「そうたろうを救う会」の梶浦祐樹代表らに入った連絡によると、現地時間の8月22日ごろから容体が悪化し、主治医のいるニューヨークのコロンビア大医療センターで、PICU(小児集中治療室)に入り、同23日からは人工呼吸器をつけていた。移植手術の合併症の影響で肺の機能が低下、両方の肺がともに気胸になり、呼吸管理が難しくなった。9月26日の誕生日あたりから、さらに容体が不安定になり、同28日には主治医の判断で投薬を中止。ベッドから母親の優子さん(36)が数時間だっこし、最期を迎えた。同じく難病の娘を持つ梶浦代表は「生きたくてあんなにがんばったのに、残念というより、悔しい」と会見で涙ぐんだ。
宗太郎君の遺体は、今後の医療に生かすためにも、解剖して詳細な原因を探るという。

 宗太郎君は、難病の「ヒルシュスプルング病類縁疾患」と診断され、5臓器の移植手術のため2月に渡米。3月、フロリダ州のマイアミ大ジャクソン記念病院で、小腸、大腸、肝臓、膵臓(すいぞう)、胃の同時移植に成功した。一時は、念願の「ハンバーガー」を生まれて初めて食べられるまで回復したが、皮膚がただれて全身から出血するなど合併症に苦しんだ。

 治療費の工面のための募金を訴える記者会見では、車いす姿で自ら「ハンバーガーを食べたい」と訴えた。共感をよび、わずか16日間で目標額の1億2千万円を超えた。手術後は、PICUの費用などがかさみ、救う会は8月に入って募金を再開した。これまでに計1億8852万円が集まったが、まだ治療費の精算が終わっておらず、救う会は「まだやめない。もし余剰金が出たら、移植する人への寄付を検討したい」としている。



難病男児かたり募金 HPで誘い被害も確認

 架空につくった難病の子供の支援団体を名乗って、1億7000万円もの心臓移植手術費用を募る悪質な呼びかけがホームページで広がり、医療機関や既存の移植支援団体などが胸を痛めている。すでに口座に振り込みをした例も確認されており、関係者らは「詐欺的な行為で悪質」と警察に通報するなど対応策に追われている。

 呼びかけは「おさむちゃんを救う会」を名乗り、少なくとも10月に入ってからホームページで募金を呼びかけている。東京周辺の複数の小中学校のPTAのホームページなどにも、同様の呼びかけをする文面が広く張りつけられているのが確認されている。

 文面によると、子供は東京都板橋区で生まれた生後6カ月の心臓の病気を抱えた男児。日本では子供の脳死移植が認められていないため、渡米して手術が必要といった設定。その上で「埼玉医科大学病院に入院中」「海外での移植手術を目指す患者らを支援する民間団体トリオ・ジャパン(東京都豊島区)の支援を受けての募金活動」と記述され、振込先としてイーバンク銀行の口座番号が表示されている。

 一方、連絡先の電話番号が「設置予定」となるなど、本来の募金活動ではあり得ないずさんな記述も目立った。

トリオ・ジャパンは、外部から問い合わせを受けて9日に事態を把握。埼玉医科大病院とも連絡を取って該当する男児がいないことを確認し、警察に通報するなどの対応をとった。

 埼玉医科大病院も病院のホームページに10日、該当する患者がいないことを知らせる文面を掲載して注意を呼びかけている。イーバンクも口座凍結などの対応を取った。額は明らかになっていないが「実際の振り込みが確認されている」(同行)という。

 トリオ・ジャパンには外部からは「こんないい加減な募金活動にかかわっているのか」「詐欺ではないか」という指摘が寄せられている。同事務局は「海外での手術には多額の費用がかかるのが現実で、募金などの支援が欠かせない。今回の事態に、まじめな募金活動まで疑いの目で見られないか懸念している。結果的に助かる命にも影響が出かねない」と危機感を募らせている。
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   新聞紹介|アンビシャス 沖縄県難病相談・支援センター