(優勝おめでとう!乾杯〜!)
バスケのインターハイ大阪府予選。
そこで優勝して高校としては初めての全国大会出場を決めた私たちは祝勝会を開いていた。
けど当の私はというと、どうしてもお祝いムードにはなれなくて、端の方で一人、座っていた
「彩テンション低いやんか!MVPのくせに〜」
「ほんまほんま、もっと盛り上がらな!」
いつもより異様にテンションが高い岸野と茉由
「ごめん、ちょっと席外す」
そんなテンションにはやっぱりついていけなくて、部屋を出て一人、ゆっくりと歩いている
外はもう暑くなり始めて、薄めのロンティーからそろそろ半袖のシャツに変えなあかんかな、なんて思うこの頃
少し歩いてやって来た体育館横にある古いベンチ
に腰をかけると、ポケットに入れていた携帯がブルっと震えた
携帯の電源をつけて見てみると、親や友達からたくさんのお祝いメッセージがきていた。
だけど何回かスクロールしたところにいる彼女とのトーク画面は
"優勝したよ"
その五文字だけを私が送信してから四時間。
返信は愚か既読マークすらつくこともない
「何、期待してんねん。返信なんか来るわけないのに」
電源を落として真っ暗になった画面を眺める
「彩っ!」
「何やねん」
「あれ!あれやってよ!」
「ん、あぁ…バスケ?だるいから嫌やわ」
「えー…彩やったら絶対かっこいいのになぁ」
そんな山田の一言に負けた私は
「しゃ、しゃあないな。そんなしてほしいんやったらやったってもええけど…」
中学入学と同時にバスケを始めることになった。
私はどんどん力をつけていって中二の頃からチームのエースとして活躍していた。
山田はバスケのルールなんかほとんど知らないくせに、毎回試合になると見に来てずっと私を応援してくれていた
「彩〜いっぱい点取ってきてな?」
「私な彩がバスケしてるところ見るの大好きやねん」
「ずっと彩のこと応援してるから!」
私がバスケを続ければ彼女は最高の笑顔を見せてくれる。その笑顔を見続けたくて、バスケが上手くなるように誰よりも努力した。
中学最後の大会で全国大会ベスト8という成績を残した私には、強豪校からの誘いも来た。
だけどその誘いは全て断り、彼女も通う地元の高校へと進学した。
「彩はさ、なんでこの高校来たん?」
高校に入学してから半月ほどたった頃、不意にそう聞かれた。彩ならもっといい高校から声かかってたやろ?って
「あんたがおるから」
「…え?」
「私は山田のためにバスケやってんの。山田がおらな意味無いねん」
「ふふっ、何よそれ、告白?」
「やったらどうする?」
「…そんな告白嫌や」
「へ、?」
「告白するんやったらちゃんとして」
「そうやんな。好きや菜々、付き合ってほしい」
「うん、私も彩のこと、好き…」
そう言って少し下を向く彼女はいつもに増して綺麗に見えた。
こうして付き合う事になった私たちは高校生活も、バスケも楽しんで過ごしていく…はずだった
「明日、ついに決勝かぁー。緊張する?」
「んー、そんなかな」
「なんやぁ。おもんない」
「おもんないってなんやねん!」
こんな会話をしながら帰ったのは決勝戦の前日。
昨日の話で
いつものように山田と二人で帰っていた。
バスケ部の練習は終わるの遅いから、先帰ってていいよ。って言うのにいつも待っててくれている
「まぁ、でもこれが最後の大会なる奴らもおるし、ちゃんと点取って勝たないとなとは思うかな」
「へぇー、なんかエースみたい」
「エースやし!」
そんな他愛もない会話をしていると、あっという間にいつも別れる交差点へとたどり着く。
「彩!明日頑張ってな。応援行くけど、彩が楽しそうにバスケしてるのいつもよりかっこよくて大好きやから!」
「任せとけ!絶対、勝って全国連れてったる」
「ふふっ、頼もしいな。じゃあ、また明日」
「おう、また明日」
こんな風に、「また明日」って言い合える何気ない日々が幸せで、ひらひらと笑顔で手を振る彼女が可愛くて、明日から頑張れるな。なんて、単純な自分に少し笑ってしまう。
「っし!頑張るか!」
私は俄然やる気に満ち溢れていた。
山田が私と別れた後の帰り道で車にはねられたという連絡をうけるまでは…