"ガシャーン"

(また山田かー!?)

「す、すいません!今すぐ片付けます!」

今日もやってしまった…

あほと言われ続けた私が一生懸命勉強してやっとなれた憧れの看護師
この病院で働くことになってから半年経つが失敗ばかりで毎日のように怒られる

「はぁ…やっぱ向いてないんかな」

「そんな事ないよ」

落とした器具を片付けていると優しいし声が聞こえてきてその声の方に顔を向けると立っていたのは

「福本先生、」

「私も片付けるの手伝うから」

「え、そんなん悪いですよ!一人で大丈夫です」

「ええからええから」

福本先生はこの病院の若手No.1の医者で私と二つしか年が違わんのに何でもできる完璧な人
それにこんな私にもいつも優しくしてくれる

「今日も盛大にやっちゃったなぁ笑」

なんて笑いながら手伝ってくれる福本先生の横顔は女の人なのにかっこよくて見惚れてしまう
私は福本先生の事が…

「手、動いてへんで?」

「へっ、あ、ごめんなさい」

ボーッとしていた私の目の前に福本先生の顔が突然近づいてきた。
急に顔を近づけられるからドキッとして自分でも顔が赤くなっていくのが分かる

「よし、終わった!」

「ほんまにありがとうございます」

「いいよ気にせんといて」

(福本先生、急患です!)

「分かりました!」

「先生!頑張ってください!」

「ありがとう。菜々も頑張りや」

頭をポンって漫画に出てきそうなことをさらっとして福本先生は走っていった
その大きい後ろ姿に

「好きなんかなぁ」

と先生には聞こてないであろう声でポツリと呟いた
もし福本先生も私のこと好きやったら…なんて考えていると

(山田さん203号室の今日からの患者さん担当やったよな?9時に入るって聞いてたけど…)

その声で一気に現実に引き戻され時計を見ると針は9時10分を指していた

「今すぐ行ってきます!」

慌てて病室まで行くと患者さんは持ってきた荷物やらを片付けていた

「すみません遅れて。
担当の山田です。よろしくお願いします」

いつものように軽く挨拶をすると振り向いたのはショートカットで見てると吸い込まれそうな力強い目。一目見ただけでモテるんやろうなって思った、次の瞬間

「こんなおばちゃんが私の担当?もっと若い人が良かったけどまぁええわ。よろしくな、えーっと…山田」

「は、はぁー?」

「あ、それと私の事かっこいいからって好きにならんといてや?」

前言撤回!
こんな奴にモテる要素なんかどこにもあれへん
デリカシーない最悪、最低なナルシスト野郎!

「あんたなんか…
好きになるわけないやろ!」