新型コロナウイルスの院内感染防止のため、症状がある患者を別の場所で診察する「発熱外来」設置が各地で進んでいる。地域医療が立ち行かなくならないよう、病院や行政、医師会の努力が続く。

 兵庫県西脇市の市立西脇病院は、地元医師会の協力を得て3月23日から、発熱やせきなどの症状がある患者を駐車場のテント内で診察。院内で詳しく検査する際も、他の外来患者と動線が重ならないようにしている。

 3月中旬には感染者が確認された近隣病院が相次いで診療を休止した。地元医師会の村上典正会長は「西脇病院までつぶれると地域医療が崩壊してしまう」と取り組みの契機を語った。



 福島県南相馬市でも4月14日から、市立総合病院にプレハブの仮設診療所を設け、発熱がある患者らを医師会が派遣した医師らが診察している。診察の結果、検査で陽性が判明した例も出ており、同病院事務課の真壁真一さんは「医療機関の閉鎖や他の患者との接触を未然に防げた」と話す。



 南相馬市内では感染者を診察した診療所が、風評のため自主休業に追いやられたケースがあったという。市の担当者は「医療機関への風評を防ぐ狙いもある」と語る。

 東京都杉並区も区内の4病院に発熱外来を開設。各病院のリハビリ室などを改装し、疑いのある患者の検査に充てている。河北総合病院では、発熱した患者を院外のテントで検温。感染が疑われる患者の待機用テントでは、向かい合わせにならないように椅子を配置するなど感染防止の工夫をしている。

 区は、発熱外来で患者を引き受けることで、小規模な診療所を院内感染のリスクから守れると説明。発熱外来設置などで増える支出を見込み、4病院に対し、平時の収入平均額との差額を助成する取り組みも打ち出した。