私はM牛乳の宅配のパートをしている。
リスクと戦う乳酸菌とか、免疫力に働きかけるとか加瀬亮の出てるやつな。
自分の車を持ち込みで1日50軒くらい配達するが、お昼位には終わる気楽な仕事だ。
お客は高齢者が多い。
牛乳やヨーグルトをとっている高齢者は健康に気を付けている人が多いと思う。
家の前に置いてある牛乳の宅配ボックスに保冷剤と一緒に置いてくる。
私が行くとわざわざ玄関から出てきて受け取ってくれる人もいる。
そういう人は話しがしたい人が多いから、2言3言話すようにしている。

私は母親が亡くなった時一週間ほど仕事を休んだが、どうして休んでたの?と聞いてくる人には隠す必要もないので母親が亡くなったのだと答えた。
若い人は死に対してはあまり関心がないが、お年寄りは興味津々で色々聞きたがる。
誰かが亡くなったという話には食い付きがいい。
私は母親が肺がんで亡くなった事、
がんだとわかった時にはもう末期で手術はできないし高齢なので抗がん剤治療もしなかった事、
進行が早くて1カ月位で亡くなってしまったがそれまでは元気で83歳ながら車も運転していた事などを手短かに話した。

するとたいていのお年寄りは、「お母さんはいい死に方をした」と言うのだ。

1カ月位病んだだけで家族にも迷惑をかけず、本人も直前まで元気でいてすぐに死ぬ事ができて、実にいい死に方だと褒めてくれるのだ。

私は少し新鮮な驚きだった。
母親は実家に一人暮らししていたのだが、自宅を処分して施設に入りたいと言っていたので、まさかこんな急に亡くなるとは本人も思いもよらず、どんなにか無念だったろう、かわいそうだったなと考えていた。

私を慰めようと言ってくれたのかもしれないが、
こんな考え方もあるんだなと大いに慰められた次第である。

私は正直お年寄りと話すのはそんなに好きではなかった。
話がくどくてめんどくさかったのだ。
早く配達を終わらせて帰りたかった。



ただうるさいだけの存在位にしか思っていなかったお年寄りから、こんなに慰められるとは思ってもみない事であった。

お年寄りって長く生きてるだけの事はあるよ。


これからはちょっとお年寄りと話すのが好きになれそうな気がする。