どうしたって

人を傷つけてしまう。

どうしたって

自分も傷ついてしまう。

自分の選択肢はもっとたくさんあるはずなのにそれを掴む自信がないのかな。

後にも先にも進めない。

ああ、いつの間にかこの人は自分の中でこんなに大きくなっていたんだ。

気がついたときにはもう遅くて。

戻ろうと思っててももう元には戻れなくて。

大事なもの、大切なものが何なのか自分が1番よくわかっているはずなのに、なぜあたしはそれを手放す選択をしてしまうのかな・・・。

世の中に『スキ』と『キライ』だけあればいいのに。

笑顔を作ってみても心は笑っていなくて。意地を張って嘘をついてそれが1番いいんだと自分に言い聞かせてる。

スキな気持ちは変わらない。

スキを伝えたい気持ちも変わらないのに。


あたしはこれから彼を傷つけます。




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・・・・・・・・・・・・






携帯をオフにする。



こんなものがあるから気になって眠れないんじゃないか。



さっきまで一緒にいた彼の事を思いだしてはじんわりと涙がにじんでくる。







何がダメだったんだろう。



そう考えれば考えるほど悲しくなってきて。



どうすればよかったんだろう。



そんな事を考えても、もう無駄なんだって知っているのに。







人間の気持ちなんて変わらないなんて事、絶対ないとは思っていた。




それでもずっと一緒にいられると思っていた。


二人に別れがあるなんて事、微塵にも思っていなかった。





ふと窓を開けるとぽっかりと浮かぶ丸い月。



二階の部屋から見えるそれは手を伸ばせば届きそうな程に輝いていて。





「綺麗だな。」





そう呟くと我慢していた寂しさが喉元からどんどん湧き上がってくる。



嫌だと言えなかった。



行かないでとどうしても言えなかった。





それはあたしが素直じゃないからなのか



格好悪い女になりたくなかったからなのか。






「分かった。」



あたしが笑顔でそう言うと、あなたは



「オマエのそういうとこキライ。」



そう言って 顔をしかめる。






じゃあ何て言えば良かったのよ。




なんて食って掛かる勇気もないまま




携帯を握り締めたまま




あたしは居酒屋を飛び出した。






さっきの言葉はウソだったんだよって言葉を期待して待っていたけど



それはあたしの妄想でしかなく、



そして理想でしかなかった。



それは手の中の鳴らない携帯電話が立証している。







一緒に飲みに行った彼のそわそわした態度に



いつもと違う何かを感じていたのは本当なのに。



まさか口から出た言葉が自分の想像していたものとはまったく違うもので。




頭が真っ白に鳴るってまさにこの事なんだろう。


ビックリすると言葉が出なくなるって本当なんだなぁ


なんてぼんやりとした頭で考える。







ビールをおいしそうに飲む彼が好きだった。



競馬を楽しそうに予想する彼が好きだった。



笑うと下がる目じりも大好きだった。



キライなピーマンを一生懸命食べてくれて



笑い合うのが当たり前だと思ってた。




なのに・・・。











「寂しい。」



言葉にしたって



あたしのそばにあなたはいない。





「・・・寂しいよ。」



こんな思いをする為に恋をしたんじゃない。



こんな苦しい思いをするなら好きになんてなるんじゃなかった。




世界の中で自分が急にひとりぼっちになってしまったような気がして。


自分で自分を抱き締める。


流れおちる涙が膝に落ちて


じんわりと下へと流れ落ちる。



枯れ果てたと思っていた涙。



どれだけ彼が好きだったんだろう。



自分が思うよりも大きく空いてしまった穴に


自分自身、動揺が隠せない。



もういいんだ。



終わったんだ。










そう思っていると





コツリ、と窓に何かが当たる音がして



うずくまっていた頭を少しだけ上げる。





気の、せい、だろうか。







そう思っていると



さっきよりも大きな音でまたコツリと窓が音をたてる。



開けていた窓から少しだけ顔を出すと



月明かりに照らされた





彼の顔。







「電源きってんじゃねーよ。」





心配したんだからな。







そう言う風に言う彼も







全然素直なんかじゃなくて。







あたしは急いで階段を駆け下りて





彼の胸に飛びこんだ。





「ごめん。」







あたしを抱き締める腕がすごくあたたかい。









「ごめん。」




こんなにあたたかいものだったんだろうか。


今まで気付かなかった彼のぬくもりに


安堵感すら覚える。






「・・・ごめんって。」




何度も聞こえるその声に





涙で答えることしかできなくて。





あたしもごめんって





素直に言う代わりに





あたしは彼の唇に自分のそれを押し付けた。










新しい恋が始まる。




Bye Bye Lover