今日は、待ちに待った明治東亰恋伽のロマネスクレコード第二弾~恋色夜叉~の発売日!
……私としては、まだまだ昨夜の酔っぱらいけんぬさんから抜けきってないんですけどねww
もう可愛くて♡
余談となりますが……。昨夜のラジオは本当にいつも以上に楽しかったですね!!
皆でけんぬさんと浪川さんの誕生日をお祝いして、靴も一緒に見ながら考えて…。
けんぬさんや浪川さんには、本当にHAPPY BIRTHDAY!のぶくんやスタッフさん、また一緒に楽しんだめいこいクラスタの皆さんには、楽しい時間を作ってくれてありがとうございます!と言いたいです(*´ω`*)
いや、それほどまでに昨日の放送は面白くて楽しかったのです…♪
けんぬさんのアルバム発売も決まってルンルンです🎶
さてさて!昨夜の余韻話はここまでにして。
ロマネスクレコード第二弾、『恋色夜叉』発売を記念して、ちょっとしたお話を。
前回の『イルミ丼』とは書き方を少々変えたので今回の方が少し長め。
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「お、鏡花ちゃんじゃねぇか~」
「げ。川上ぃ……」
とある日の昼下がり。
男姿の音二郎さんと神楽坂を歩いていると、向こうから見知った人影が歩いてくるのが見え、足を止めた。
その人影は、陽気に片手をあげた音二郎さんを見つけるなり、あからさまに苦虫を噛み潰した顔をして踵を返した。
「げ、とは何だよ、鏡花ちゃんよ~。…って、ちょ!何で逃げんだよ?!」
「う、うるさい!付いてくんなよな、川上ぃ…!!」
「…付いてくんな、って言われると、追いかけたくなっちまうよな~」
脱兎の如く駆け出した鏡花さんに、ニヤリと不敵な笑みを零すと、音二郎さんはその後を颯爽と追いかけた。
「…え、あ。……」
完全に置いてけぼりを食らった私は、小さく肩を竦めると、ゆっくりと彼らが進んで行った道を、追いかけるようにして歩き出した。
*****
そうしてしばらく道沿いに歩いていくと、どこからか犬の激しく吠える声と叫び声が聞こえてきた。
(…あ。この叫び声は……)
慌てて声の出どころを探すと、ちょうど傘張りのお店の横の通り、細い路地から声は聞こえてくるようだった。
キャンキャンキャン!
「うわぁぁぁぁ…!来るなぁ、あっち行けぇぇぇ…!!」
ウ~…キャンキャン!!
「やめろ、あっち行けったらぁぁ…!!」
(……あ、やっぱり居た)
路地をソッと覗いてみると、そこには思った通り、鏡花さんが犬に吠えられているところだった。
犬――と言っても、子犬なのだが、鏡花さんは路地の奥で涙目になっていた。
何か犬の気を逸らすものはないかと辺りを見回すと、小振りの枝が少し先に落ちているのを見つけ、手にとる。
「ワンちゃん、ほらこっちだよ!」
おぼつかないながら、指で輪を作り口に当てて音を鳴らすと、幸いにも子犬はクルリとこちらを振り返った。
その目が私の手に握られた枝を捉え、子犬は尻尾を激しく左右に振った。
(こんなに可愛いのになぁ…)
犬を見るだけで怯えきってしまう鏡花さんには、子犬だとか成犬だとかは関係ないのだろうけど――。こんなに可愛い犬を見ると、少しもったいないなぁ…、という気がしなくもない。
私は手に持った枝を子犬によく見せてから、路地の奥とは逆方向――私が今歩いてきた大きな通りの方に向かって投げた。
子犬はそれを見ると、私の足元をすり抜けて一目散に駆けて行った。
安堵して路地の方を振り向くと、鏡花さんがちょうど出てくるところだった。
「あ、鏡花さん。大丈夫でしたか?」
「……っ。…べ、別に怯えてた訳じゃないからな!ただ、ちょっと…その……、良い感じの路地だと思って入ったら、子犬が帰り道を塞いでただけで…」
「そうですか」
久しぶりに会ったのにも関わらず、相変わらずな鏡花さん。
それがあまりにもいつも通り過ぎて。
「な…っ。な、なに笑ってるんだよ…!」
「ふふっ。いえ、何でもありません」
零れる笑みを必死に押し留めると、鏡花さんは不服そうにこちらを見ていた。
*****
「……あれ?そういえば音二郎さんは…?」
「はあ?川上ぃ…?」
一段落つき、ようやくその事実に思い至ると、鏡花さんは「あぁ、そういえば…」と小首を傾げた。
「途中までは追いかけてきてたけど、それがいつの間にか犬になっ……」
「……?あれ、犬は追いかけてきたのと帰り道を塞いでたの二匹居たんですか?」
私がそう返すと、鏡花さんはハッと口元を押さえた。
「……い、今のは冗談に決まってるだろ、ほんとアンタってグズだよね…!」
「…はぁ……」
「と、とにかく僕は知らないよ!川上のことだから、どっかで良い女でも、たらし込んでんじゃな…痛っ!」
「だ~れが女をたらし込んでるってぇ?鏡花ちゃんよぉ…」
「あ、音二郎さん…!」
「か、川上…!!」
頭を押さえ、振り返った鏡花さんの視線の先には、仁王立ちになった音二郎さんが立っていた。
「俺はただ、うちの役者を見つけたから話してただけだっつーの」
「ふうん。ま、僕は知らないよ。川上の恋愛事情なんて知りたくもない」
「…へえー……。そんなに俺に冷たく当たって良いのか、鏡花ちゃん…?」
ふんっ、とそっぽを向いた鏡花さんに、音二郎さんは目を光らせて、自身の右手を持ち上げた。
――その手には、見たことのあるレコードのジャケットが握られていた。
空から落ちてくる花びらに、物憂げに天を見上げる鏡花さんと、辛そうに胸に手を当てる音二郎さんが印象的な、背中合わせに座っているジャケット…。
チラリと音二郎さんの持っているものを見た鏡花さんは、慌てて自身の袂をまさぐって真っ青になる。
「な、ななな何で川上がそれを持ってるんだよ…!!」
「ん?いや~、鏡花ちゃんが走ってった後に道に落ちてたんだが…」
そこまで話すと、音二郎さんは意地の悪い笑みを浮かべて小首を傾げた。
「もしかして、これ、鏡花ちゃんのだったりするのかねえ…?」
「…っぐ」
「いや、まさか。あの鏡花ちゃんに限って、それはないわよね~?」
ほら言ってみろよ、と言わんばかりに鏡花さんを煽る音二郎さん。
「ふ、ふんっ。…どうして僕が自分や川上のレコードを持ってなきゃいけないんだよ。僕のじゃないし、要らないよ、そんなものっ」
そっぽを向いて吐き捨てた鏡花さんに、音二郎さんは笑みをより一層深くした。
「…ふ~ん?そうかそうか。いや~、俺はてっきり優し~い鏡花ちゃんが、コイツに渡す為に持ってたんじゃないかと思ったんだが…」
「ち、ちちち違う!ど、どうして僕がわざわざそんなグズの為になんか…!!」
「そ~だよな~。…うし。お前、後でこれと同じやつ俺が買ってやるよ。こ~んな誰のものとも分からないやつはその辺に戻しとくか~」
含み笑いをして、音二郎さんはそれを何処に置くかキョロキョロと見回した。
――すると、そんな音二郎さんの隙を突いて、それを鏡花さんが奪い取る。
「あ!何すんだよ、鏡花ちゃん!お前のじゃないんだろ?!」
「うるさいなぁ!別に、持ち主が居ないんなら僕が貰ってやろうと思ったんだよ!」
「はあ?! …は~ぁ。ま、良いや。あーぁ、何だか今日は疲れちまったな~。夜から一席あるし、そろそろ帰るぞ~」
呆れて溜め息をつくと、音二郎さんは元来た道を戻り始めた。
「あ、待ってください、音二郎さん!」
私も慌ててその後を追おうとすると、手を取られ引き寄せられた。
「ちょっと待ちなよ!」
(……あ)
一瞬ふわりとした感覚があり、気付いたら鏡花さんの困ったような顔が間近にあった。
「鏡花さん…?どうかしたんですか…?」
「……あ、いや、その…。ほら、これ」
私の背中を支えていた腕が解かれ、もう片方の手で、先ほどのレコードが差し出された。
「…え?でも、これは鏡花さんが……」
「あ、別にあんたの為にあげる訳じゃないんだからね!?…ただ、自分で自分の持ってたって仕方ないし…。……それに、会えない時もあんたが僕をそれで思い出してくれたら…」
「……?鏡花さん、何か言いました?すみません、最後の方よく聞き取れなくて…」
ボソリと呟いた最後の言葉が聞こえず、彼の顔を覗き込むと、鏡花さんは真っ赤な顔で怒ったように目を反らした。
「な、何でもないよ!…それとも何。僕からのモノは受け取れないとでも言うつもり!?」
「そんな訳ないです。じゃあ、ありがたく頂きますね。…すごく嬉しいです。ありがとうございます…!」
「…!……あ、あぁ…」
『お~い、早く来いよ~!』
「…あ、もう行かなくちゃ。それじゃ、鏡花さん、また」
「……あぁ、また」
そう言ってフッと微笑んだ鏡花さんの顔は、とても優しい顔をしていたように見えた。
私は、踵を返すと音二郎さんの背中を追いかけた。
*****
ようやく隣に並んで歩き出すと、音二郎さんは夕暮れ空を見上げて溜め息をついた。
「あ~ぁ。今日ももう終わりだな…」
「そうですね」
「あ、なあ。お前、そういえばこの間、俺の芝居観たいとかって言ってたよな?」
「…あ、はい!」
「今度よ、またデッケェ劇場で演目をやらせてもらえる事になったんだよ。もちろん、鏡花ちゃんの戯曲(ホン)でな」
「わぁ…!凄いですね!……あ、でも鏡花さんの許可は…?」
今までの前科を思い出し、少々不安になって問いかけると、音二郎さんは小さく笑って私の頭を撫で回した。
「わっ!?」
「大丈夫だ。今回はちゃーんと許可は取った。…なかなか骨は折れたけどな」
「そうだったんですか…!なら良かったです…!頑張ってくださいね!」
「あぁ!ありがとな。だからお前も、絶対観に来いよ。スゲエ舞台にしてみせっからさ!」
「はい…!」
本当に嬉しそうに笑う音二郎さんに釣られて、笑みが零れる。
長い長い坂の上。どこからか聞こえてくる三味線の音に、2つの影は楽しげにゆっくりとその長さを伸ばしていった――。
以上!
ここまでお付きあいありがとうございました!
次の更新は、もちろん浪川パイセン♡のお誕生日の予定ですwwww