完成しておきながら、載せるのを忘れていたEND。

(;・ω・)

前回まではコチラ⇒http://s.ameblo.jp/milk-yo/entry-11758241181.html



…ま、相変わらずオチなんてありませんが、良かったらどうぞ;_ _)m


☆★☆★☆★☆★☆



――金色の、綺麗な満月だ。



廊下を歩きながら窓から空を見上げて、ユエはそんなことを思った。

その肩に、ノスッと重みがかかった。


「どうしたの?……やっぱりまだ名残惜しい?」


いつの間にか立ち止まっていたらしいユエの肩に頭を乗せて、エルが寂しそうな顔をした。


「……ごめん。やっぱり俺たち、お節介だったかな…?」

「……あ…」


フッと少し分かった気がした。ずっとニコニコしていたけれど、彼は彼なりに気にしてくれていたのだ。


「……ううん。そんなことないよ。確かに、名残惜しい気持ちが無い、って言ったらウソになるけど…。後悔はしてない」


そう言い切ると、不安そうに見上げていた彼の表情が、少し安心したように緩んだ。


「……なら良かった。…正直なとこさ、ちょっと不安だったんだよね。ほら、俺だって突然来たヤツにまりもから離れろ~、なんて言われたら嫌だしさ」

「……ま、まりも…?」


何故いきなりまりもが出てきたのかは分からないが、彼は小さく笑って私の前に立った。その姿が、月明かりをバックに浴びて何だか儚いものに見えた。


「…アンタ、意外と強いんだね」


「……え…?」


小さな呟きを紡いだ彼の表情は逆光になっていてよく見えない。



「ああぁ~!オマエらこんなとこに居たのかよ…。いつの間にか二人揃って居なくなっててマジ焦ったぜ…?!」


その時、廊下の先からアトムくんが全力で走ってきた。その後ろからルイくんとアールくんも追い付いてくる。


「全く……。こんな広い場所で迷子なんてシャレになりませんよ…?はぐれるまで気づかなかった僕たちにも落ち度はありますが…」

「そうだよ…!ダンジョンでPTとはぐれると、その分戦力も分断されちゃうから、纏まって行動した方が圧倒的に効率的だし安心だよ?」

「えーと……アールくん。それはつまり、一緒に行動した方が良い。ということで良いんですね?」

「うん、そうだよ!」


アールくんの使う言葉は、なんでも『ネトゲ用語』なるものらしい。ルイくんが難しい顔で解読すると、アールくんは嬉しそうに大きく頷いた。


「……あ~、はぐれちゃったのはごめん。でもほら、月が綺麗でつい見入っちゃって」


エルくんはそう言って背後の月を示した。

その言葉に、アトムくんたちの視線は窓の外に浮かぶ月に注がれ、アトムくんが静かに呟いた。


「……なんつーかさぁ。俺たち、まだまだ頑張んないとダメだよな」

「…アトムくん。それはどういう意味ですか?」


ルイくんが小首を傾げると、アトムくんは月を指差した。


「ほら、月はいつだって見えなくなってもそこにあって、オレ様たちの進む道を照らしてくれる。…オレ様たちも、いつかそんなふうになりたいじゃん?」

「……そうだね、アトムくんの言う通りだ。僕らはまだまだ未熟だけれど、いつかは皆を照らす星座になりたい」

「それならさ~…」


アールくんの言葉に笑んだエルくんが、私の肩に手を置いた。


「……まずは、近くから。この子の行く道を照らしてあげないとね?」

「…ええ、そうですね。…貴女も、異論は無いですか?」


微笑したルイくんに小さく頷く。今さら何を迷う必要があるだろう。


「そうですか。…なら」

「いっちょ、かますぜー!!」








☆☆☆☆☆☆☆☆





「…け、警部!大変です……!」

「どうした、そんなに慌てて」

「あれを見てください…!!」


若い警察官の指先を辿ると、ちょうど本館の屋根の上。五つの影が月光を遮るようにして立っていた。

逆光でそのシルエットだけが浮かび上がり、そこだけが幻想的な異様な雰囲気を醸し出していた。

警察官の声が聞こえたのか、ざわめきが次第に大きくなっていく。


「……お、おい、もしかしてあれが怪盗ALEAなんじゃ…」

「1人じゃなかったのか…?!」

様々な憶測が飛び交う中、警部がざわめきを鎮めようと声を出しかけた時――

――真っ直ぐな声が、その場に響いた。


「怪盗ALEA、ここに参上したぜ」

「今宵は僕たちの為に集まって頂いたこと、感謝します」

「でも、ごめんね…?遊んであげたいのは山々なんだけど、俺たちも暇じゃないからさ」

「今宵はそろそろこの辺で」


――逆光に、4つの三日月形に歪んだ笑みが見えた気がした。

次の瞬間、視界が煙で覆われ、瞬く間に黒い景色が白へと変貌した。


『またどこかで、お会いしましょう』



煙が晴れると、そこは彼らが現れる前と同じ、月だけが浮かぶ館の前だった――。