猫の4種混合ワクチンに含まれている猫白血病ウイルス感染症について。
猫白血病ウイルス感染症とは胸腔や腹腔、皮下にリンパ種ができたり、貧血や白血病を起こしたりする病気です。ただし、感染してもほとんどの猫ははっきりとした症状を示さず、無症状キャリアとなります。しかし、いったん発症すると、日和見感染を起こし、死亡率が高まることが知られています。
《猫白血病ウイルスとは?》
猫白血病ウイルスは、レトロウイルス科に属するRNAウイルスで、日本の猫の3~5%に感染が認められていると言われています。外猫と内猫の感染比は19:1で、キャリア猫はウイルスを唾液や尿、涙液、乳汁、血液中に含みます。唾液には、特に猫白血病ウイルスが多く含まれており、キャリア猫とのケンカによる咬傷が主な感染路となっていうるようです。年齢的には1~6歳(平均3歳くらい)に多く、雄雌の感染比率は1.7:1になっていて、これは雄の方が雌よりケンカの機会が多いためだと思われます。また、感染は定期的な検査によって判定でき、ワクチンによる予防も可能です。
《原因》
猫白血病ウイルスは、猫から猫へはケンカによる咬傷やグルーミングなどのほか、同じ食器やトイレを複数の猫が共有している場合には食事や飲料水、トイレの汚染尿との接触などによって伝播(デンパ)します。また経胎盤・経乳汁感染も起こり、感染猫が妊娠した場合、80%が死産あるいは新生子死となり、生き残ってもキャリア猫になります。
また、キャリア猫になる可能性はウイルスの曝露時の年齢によって影響を受け、新生子では約70~100%、生後3週間で30~50%、それ以上では30%未満となります。これは加齢に比例して猫自身の免疫力が増強するためです。
《症状》
猫白血病ウイルス感染症の症状は、
・ 慢性的な発熱 ・下痢 ・体重の減少 ・流産 ・死産 ・白血病(リンパ性・非リンパ性) ・再生不良性貧血(要血性) ・リンパ球減少 ・好中球減少 ・血小板減少 ・ブドウ膜炎 ・口内炎(難治性) ・歯肉炎(難治性) ・皮膚疾患(難治性) ・糸球体腎炎 ・胸腺萎縮(キョウセンイシュク) ・リンパ腫 ・白血病 ・線維肉腫
↑等の症状があり、大きく分けると腫瘍性と非腫瘍性の2つに分けられます。
腫瘍性疾患ではリンパ腫がもっともよく認められ、発症部位などにより胸腺リンパ腫、多中心性リンパ腫、消化管リンパ腫、そのほかのリンパ腫(皮膚や腎孤立性リンパ腫など)の4つに分類されます。胸腺リンパ腫は、3歳未満に発生し、胸水貯留を原因とする呼吸困難やチアノーゼが特徴です。多中心性リンパ腫は複数のリンパ節や脾臓(ヒゾウ)、肝臓、腎臓などの器官に発生します。また、神経系に発生し、瞳孔左右不同症や膀胱括約筋の麻痺、後躯麻痺(コウクマヒ)、異常行動などの症状を示したり、リンパ性白血病を起こすのも、この多中心性リンパ腫です。消化管リンパ腫は腸間膜リンパ節や周囲のリンパ組織に発生し、下痢や嘔吐、吸収不良、下血(ゲゲツ)を起こします。非腫瘍性あるいは骨髄制御性疾患は免疫力が制御されるために起こるものです。
また、猫白血病ウイルス誘発性免疫不全症状と猫免疫不全ウイルス感染症を症状だけをみて鑑別することは不可能ですが、血小板減少症や免疫性溶血性貧血、免疫複合体疾患は猫免疫不全ウイルス感染猫と比較し、猫白血病ウイルス感染猫に多く認められます。
《診断》
動物病院で猫白血病ウイルス感染症の検査を行う場合、血清ウイルス検査と呼ばれる簡易検査キットで行います。検査は猫白血病ウイルスワクチンの接種前にも行いますが、これは感染後にワクチンを接種することにより猫白血病ウイルスを発症させてしまうことを防ぐためです。ただし、この検査についてキャリア猫は陽性として判定されますが、ウイルスが骨髄や細胞内に潜伏している場合は末梢血中にウイルス抗原が出現しないために陰性として判定されることがあるなど、100%正確に判定できるわけではないので注意が必要です。
その他、前血検査や血清生化学検査、尿検査、X線検査などの検査を受ける事ができます。特にリンパ腫が疑われる場合、リンパ節や骨髄の生検なども必要になるでしょう。
《治療》
陽性猫の場合、ウイルス感染症に対する特異的な治療法はありません。しかし、ほかの疾患、例えばウイルス感染症や細菌感染症を避けるために室外へは出さず、猫伝染性鼻気管炎や猫カリシウイルス感染症、猫汎白血球減少症のワクチンをしっかりと接種しておくことが大切になります。
また、すでに発症してしまった場合、治療に対する反応はさまざまですが、症状に応じた処置が必要になります。
《予防》
ここ1年間、継続的に室内飼育されていて、すでに何回か白血病ウイルス検査を受け、その全てが陰性であったという場合、猫白血病ウイルス感染症には感染していない状態と思われます。そのため、以後も屋外に出さず他の猫と接触させなければ、ワクチン接種しなくても生涯、猫白血病ウイルスに罹患(リカン)しないと思われます。
ワクチン接種による予防を希望する場合、次に挙げるウイルスの特性とリスクに注意して下さい。
ウイルス検査で末梢血中のウイルス抗原の有無を判定すること、その場合に骨髄などにウイルスが潜んでいる場合は陰性という結果になり、ワクチン接種によりそのウイルスが活性化して発症し、最悪の場合は死に至ってしまうこと、1/1000~1/10000の可能性でワクチン誘発性線維肉腫を発生する可能性があることなどで、これらのことを充分理解していただいてから、使用するワクチンに適したプログラムで接種する事が理想です。
・・・とはいえ、多頭飼育環境の中で1匹でもキャリア猫がいる場合は集団の猫すべてにワクチンを接種すべきだと思います。そして、半年~1年に1回のウイルス検査をするのがベストでしょう。
《消毒》
猫白血病ウイルスは、猫の体外では非常に不安定で、室温では数分~数時間で感染性を失います。
また、次亜塩素酸ナトリウム塩、アルコール、4級アンモニウム塩など、ほとんどの消毒薬に感受性がありますので、多頭飼育の場合、食器やトイレ、ケージ等、猫の居住環境を、漂白剤(塩素)を希釈した液で消毒すると良いでしょう。