(この話は、運命の絆【引き裂かれ】 の続きになります。)
離婚して1年間、動物看護士の見習いとして働き、忙しくも充実した昼間の生活…
そのうらはらで毎日仕事を終え家に戻ると…孤独を感じて辛くて苦しくて…
愛する人(パパとキアラ)の事を思い出し、逢えない事がとても悲しく…
家族の写真を見ては、毎晩毎晩泣き疲れるまで飲んで眠る…
そんな日々を過ごしておりました。
そして、そんな日々に終わりを告げたのは・・・別の悲しい出来事がきっかけでした・・・
2001年8月5日 おばぁちゃんが亡くなったと連絡が入った・・・
両親に見捨てられた私にとっておばぁちゃんという存在は、実の母のように慕っており、
心の拠り所であり、かけがえのない人でありました。
そのおばぁちゃんが発病したのは約1年前のお話。
私はこれまでの1年間、ほとんど毎週末自宅から230kmもある祖母の病院に通い、
おばぁちゃんの看病に努めておりました。
動物病院の休日は手術が入って潰れる事が多かったのですが、何とか暇を見つけては
車を走らせておばぁちゃんの元へ。
そんな私を見て、勤め先の獣医師が
『緊急の患畜が入ったら使えないだろ!動物の命とどっちが大切なんだ?!
病院の業務を優先できないのならこの仕事を辞めてしまえ!』
そう…怒って言い放ちました…。
そしてその後…随分と悩んだ末に、私が出した答えは…
『動物の命は勿論大切ですが…今は祖母の傍に居たいので、祖母の元への通院が
許されないのでれば、この仕事は一時休職させて下さい…』
(この選択をした私は…最低ですか?獣医はこの前の年に私と同じように祖父を亡くし、
通夜も葬式も出席できなかった人です…だから獣医の気持ちも良くわかるんだ…)
こうした話し合いを終えた矢先の…不幸な知らせでした…。
連絡を受けて私が駆けつけた頃には既に…
祖母は病院から自宅に戻り、綺麗にされ横になっておりました。
『おばぁちゃん…遅くなってごめんね…』
そう言って泣きついた私…
その時 -
無数の光(ダイヤモンドダストの様な輝き)が私を包み込むという不思議な現象を体験しました。
お通夜はお日柄の関係で1日遅らせる事になってました。
知らせを受けた親戚達も続々と揃い…全員揃った所で別室にて言い争いが始まった…。
『全てあの人のせいだ』 『あの女が仕組んだ事だ』 『祖母はアイツに殺されたんだ!』
皆は口々にK子叔母さん(父の長男の再婚相手)の悪口を言っていた。
K子叔母さんと継母はとても仲が良く、K子叔母さんが言う事はいちいち継母と同じで、
一緒に暮らしてた時(中三の二学期)の私にとっては天敵のような人だったのですが…
私は知っていた。
K子叔母さんがおばぁちゃんの事をどれだけ良く看ていてくれてた人か…
確かに、たくさんの趣味を持ってる社交的な性格で、家を留守にしてる事が多かった。
けど、家の中はいつもきちんと整っていたし、習い事等に出掛ける前には、必ずおばぁちゃんの
病院に顔出してから出掛ける…と、やる事はしっかりしてくれる人でした。
何より、直腸癌で人口肛門をつけていた祖母の下のお世話を…
赤の他人である祖母のお世話を…
嫌な顔一つせず、テキパキと笑顔で丁寧にしてくれていた事…
こんな事、普通の人ができるだろうか?
私は、母のように慕っていた祖母の人口肛門を初めて見た時…
…正直『うげっ…(嫌』と思ってしまいました…。
毎日毎日しないとならないお世話…
それを忙しい叔父さん(長男)や見舞いに来ない兄弟に代わってずっとやり続けていてくれた人…
それがK子叔母さんなのでした。
延々と続く陰口・悪口言いたい放題…黙って聞いてるとだんだん頭に血が上ってきて…
『いい加減にしろやっ!!』
気がつくと私は…親戚全員に向かってこう叫んでいた。
シーンとなる一同…ギョッとした顔でみんな私を見ている。
私は地元に住む叔父さん(次男)に向かって
『叔父さん…おばぁちゃんのお見舞い何回行った?』
地方に住む親戚(五男)一家に向かって
『…叔父さん達は半年に一回来たかどうかだよね?』
『何も知らないくせに・・・誰も看てなかったくせに・・・』
『みんな好き勝手な事ばかり言ってんじゃねーよっ!!』
『今までK子叔母さんがどれだけやってきてくれた事か・・・』
『おばぁちゃんがどんな状態だったのか、人口肛門ってどんなものなのか、
見た事ある?触った事あるの?!ねぇ!どうなのよっ?!?!』
『まだ再婚して日も浅い人が…他人の下の世話まできちっとやる事が…』
『それがどれだけ大変な事なのかわかって言ってんのっ?!』
『K子おばさんが看てくれてたから…だから私も叔父さん達も任せて居られたんでしょ?』
私はギロッと周りを睨みつけ… …ため息を一つついた。
『私は…K子叔母さんがおばぁちゃんにしてくれてた事に…心から感謝しています。』
するとこの最後の言葉に突然、五郎叔父さんが怒り出した。
『なんだと?!そうかミル…お前には失望したよ。』
『お前はあのばばぁの差し金だったんだな?!』
『あんなに可愛がってやってたのに…この恩知らずめっ!!』
『もうお前とは絶縁する!二度と連絡してくるな!!』
そう一気に怒鳴りつけられ…予想もできなかった言葉の数々にショックを受け…
私は涙が溢れてきた…
・・・そ・・・ん・・・ ・・・な・・・ なんて酷い事を・・・
私『どぅ…して?違うよね?叔父さん大人だも…わかってくれるでしょ…?』
五郎『うるさい!この裏切り者が!話しかけるな!! ぉぃ!行くぞっ!!』
そうして…私が一番大好きだった家庭…五郎叔父さん一家は去って行った…。
みんなが・・・バラバラになっていく・・・・・・
取り残されて独り、涙を流す私に…声をかける人間は誰も居なかった…。
通夜の準備を無言のまま終え、独り座ってぼぉっと遺影を眺めていた…
そんな私にニコニコと話しかけてきたのは継母…
『ミルちゃん♪元気にしてた?そんな所に座っていたらお邪魔になるわよ^^』
たぶん…誰かに私が(継母の友達である)K子叔母さんを庇った話を聞いて来たのだろう…
非常に機嫌を良くしてる継母を横目で少し見ていたが、すぐに視線を遺影に戻すと私は
『はぃ。。。』とだけ言って立ち上がり、その場を後にした…
通夜が終わった後、父の兄弟だけが残り、相変わらず争いは続いていた。
保険金がどうの、土地の権利がどうのって・・・お金の話ばっかり聞こえてきていた。
はっきり言って、うちは貧乏な家系である。
祖父母が昔住んでいた田舎には、広大な土地と山も何個か持っていたりもするけれど、
何せひどい《ど田舎》である為、大したお金にはならないだろうと思う。
生命保険の話も、次郎叔父さんが副業としてやっている小さな保険の話だ。
聞こえてきた金額も《ん十万》という微々たる金額の話だった。
そんな事どうでも良いじゃない…。
それより皆…おばぁちゃんを亡くした事…悲しくは思わないのだろうか?
おばぁちゃんの遺体の前で息子達とその嫁達も加わって争ってるこの状況…
これを見てるおばぁちゃんは…きっと…とても悲しんでいるよね…。
そして・・・
その争いの片隅で…小さく項垂れ、黙り込んでるおじぃちゃんの姿を見た…。
後日も…私はずっとおばぁちゃんの傍に居た。
おばぁちゃんが煙になって空へ上がっていく様子をずっとずっと見つめていた…。
『(おばぁちゃん…行かないで…ミルを独りにしないで…)』
心の中でそう呟くと・・・また涙が溢れてきた・・・
煙が吸い込まれてゆくどこまでも青い空…
その空の彼方から…またあの無数の光が現れ、私の元へと降り注いだんだ…
『大丈夫・・・いつも傍に居るよ・・・(^^)』
そうやって笑う…おばぁちゃんの声が聞こえた気がした…。
お葬式が全て終わると皆、早々と帰っていった。
残されたのは独りぼっちの私・・・
そして・・・小さな身体で俯き、立ち尽くす・・・おじぃちゃんの姿があった・・・
誰かがおじぃちゃんに『ざまぁみろ』と小声で罵倒し、去っていった…。
おじぃちゃんは嫌われ者…
昔から短腹で頑固で強情で…兄弟をヒイキして育てたと叔父さん達は言っていた。
でも今は…長年連添い、ずっと支え続けて居てくれた最愛の人を失って…
昔の元気なおじぃちゃんの面影など…これっぽっちも残っていない小さな背中…
『・・・ぉじいちゃん?一緒に帰ろ^^』
私はおじぃちゃんの背中にそっと手を添えた…
『私も家に帰るけど…私はまたすぐ、おじぃちゃんに逢いに来るからね^^』
お葬式の間中、ずっと気丈に(?)振舞っていた祖父の背中は、とても小さくて…
…小さく震えていて…
おじぃちゃんは・・・その時涙を流していたんだ・・・
おじぃちゃんを送り届けて、落ち着くまで傍に居て。帰る頃にはすっかり日が落ちていた…。
私は片道230kmの道程を…限界までスピードを上げ、無茶苦茶な運転をして帰ってきた。
独りぼっちになった私を…おばぁちゃんが道連れにしていってくれないかと期待して…。
でも・・・無事に家に着いてしまった・・・。
・・・
・・・
・・・・・
真っ暗な部屋の中…私は今まで経験した事が無い、大きな孤独感に打ちひしがれ…
どうしようもできなくて…おばぁちゃんの写真を抱いて大声を上げて泣いた…
『おばぁちゃん・・・独りにしないで・・・寂しいよ・・・』
最愛の家族…パパ…キアラ… そして…おばぁちゃんを失って…私はどうしたらいいの?
『おばぁちゃん…私も連れてって!どうして連れてってくれないの?
もう生きてる意味なんて無いのに…うぅぅ。。。』
親戚にも見離された・・・ 仕事も無くしてしまった・・・
私にはもう何も無い・・・ 残されたのは絶望的な孤独感だけだ・・・
『連れてって(死にたい)!連れてって(死にたい)!
連れていって(死にたい)よおおぉぉぉ…』
おねがい・・・だから・・・ ・・・
それから数日間…食事も水分も何も取らず…ずっとずっと泣き続けた…
このまま餓死か衰弱死でもすればいいと思い…涙が枯れるまで泣き続けた…
ずっと。。。ずぅっと。。。