実母の家に着くと…急に力が抜けてきた…

母にキアラを託し、私は倒れ込むように眠りに入った…


どれだけ眠ったのだろう?…久々に安心して熟睡ができた…

夢の中で呼ばれてる…

『・・・ヵぁ?・・・っかぁ?・・・おっかぁ??』

パパ?『おっかぁ』なんて呼ばないでよもぉ…

パパが私の事を名前で呼んでくれたのは、まだ一緒に暮らす前までの話。
変わった名前、少し舌っ足らずなパパは独特のアクセントをつけて私を呼ぶ。
それがとても聞き心地良かったのに…私はすぐにママと呼ばれるようになった。
ママも決して悪くはない…。
私は自分の親をママなんて呼んだ事ないから…子供には絶対ママって呼ばせるんだ…
けど…そうだ…
パパの実家に戻ってからだ…
滅多に口を開かなくなったパパ。たまに私を呼ぶ時は『おっかぁ↑』と語尾を上げて呼ぶ。
義母に話しかける事はほとんど無かったが、義母の事も『おっかぁ↓』と呼ぶパパ…

一度紛らわしいからその呼び方をやめて!と言うと、
『語尾のアクセントが違うだろ?』なんて…笑ってた…


『おっかぁ↑!!起きろっ!!』

私を起こしたのはパパだった…

この呼び方にビクッ!として飛び起きた。
朝、寝過ごしてしまったのか?!
また義母に『遅くまで起きてるから』なんて嫌味を言われるんじゃないか?!

飛び起きて辺りを見渡すと…そこは綺麗に整理整頓された広い部屋。
私の実家だ… ホッと胸を撫で下ろす。

実母『雅也さんが迎えに来てくれたわよ。とりあえず顔を洗っていらっしゃい』
後ろで母の声がした。
目の前にいるパパはバツが悪そうにしていた。

パパ『心配かけやがって・・・ ・・・ ・・・ごめんな・・・』

その言葉で全てを許せた当時の私は大ばか者だ…



実母の前にパパと二人で座り、三者会議を行った。
母には電話をした時、かなり電波が悪くて途切れ途切れになったが、

これまでに起こった出来事は、ある程度全ぶ伝わってるはずだ。

実母『雅也さん、どういう事なの?うちの娘が今までどういう環境で生きてきたのか…

   貴方は一番わかっているはずよね?』
パパ『すいません・・・』
実母『娘からの話だけでは公平に見れないから、貴方の考えを聞かせて頂戴』
パパ『…俺が見た時は…深涙が…継母に殴りかかろうとしていました…』
私『継母が先に殴りかかって…!』
実母『ミルちゃん
(昔からちゃん付けされている…)は黙ってなさい。』
パパ『…俺はその相手が継母だなんてわからなくて…』

実母『そぉ…わかったわ。でも、今すぐ娘を連れて帰るというのは許しません。』
私『お母さん・・・


母はやっぱり私の味方だ…私はまた涙が込上げてきた…。

パパ『すいません・・・親には自分からよく話しておきます・・・』
実母『そうね。雅也さんがしっかりしてくれないと、キアラが可哀想でしょ?』
私『ぁ…私の為じゃないのね?』


私の一言で母がクスリと笑い、場が和んだ。


一晩パパが泊まって行った。
その後パパは、自分の実家で話しをして、私とキアラの荷物を持ってくると帰宅。

私とキアラはそのまま残って実母に甘え、平穏な日々を過ごせて幸せだった。

数日経ってパパが予想以上に大荷物を抱え戻ってきた。

パパ『親に何言っても聞かないから俺も家出してきた』との事…

車持ちの男手ができて、母はとても嬉しそうだったw
ずっと家に居なさい!そうだ!みんなで旅行に行きましょう!とか言って…w


この頃、ちょうどお盆を迎え、母方の親戚が集まったりし、久々の再開&結婚&出産祝い等で

賑やかに過ごしていた。
みんなで大きな遊園地に遊びに行ったり、母と妹と私達家族で温泉旅行に出かけたり、
母がキアラを看てくれて、パパと二人で久しぶりにデートしに行ったりもできた☆

パパが出てきてから約1ヶ月…そろそろこの先の事を考えていかないとならない。


連日、夜になると三者会議が行われる。
母もそろそろこの生活に飽きて(?!)きたようだ。。。

お互い思い込みが激しく、言い出したら聞かない性格の母と私。
また昔のように喧嘩もするようになってきた。
母は怒ると何日間も口を聞いてくれなくなる…

母『雅也さん、そろそろご実家に戻ってお話つけてきたら?

 このままこの生活を続ける気なの?いい加減、迷惑なんだけど?』

…自分でずっとここに居るように言った母。都合が悪くなるとすぐ切り離そうとする悪い癖…
私も…こういう部分は似てたけど…ね…

母と私のこの性格のせいで、今まで何年も連絡を途絶えてたり、繋がったりしていたのは

パパにもよく話していたから、いずれこういう事を言ってくるのは想定内だったようだ。

パパ『はい、俺は実家を出て別の仕事を始めようと思ってます。

   その事を明日、親に話しに行ってきます。』


次の日、母とキアラと三人で『しっかりね!』と言い、パパを送り出した。



数日後…険しい顔つきで戻ってきたパパ。
パパは実母の前で私に向かって…

パパ『お前が全て悪いんだ!黙って実家に戻るぞ!!』

そう言って無理矢理私とキアラを連れて行こうとした。
それを見た母は慌てて…

母『どういう事!行く前と全然話が違うじゃない!雅也さんだけ帰って!!』

と… …パパは追い返されてしまった…。


私はパパの変貌に唖然として立ち尽くす・・・

母『…ミルちゃんはキアラとここに居なさい…今のままじゃ帰っても同じよ…』

そういうと母は引き出しから安定剤と睡眠薬を取り出し、自分の寝室へと入って行った…


それから私は…何度もパパと電話で話した。

パパはお前が悪い!の一点張りで何が悪かったのかは言わない。
私は冷静に、どんな状況でどんな話をしてきたのかを聞くと、実家に帰ると義母と義姉2人も
わざわざ帰って来ていて、その中で話し合いは行われたという。
これを聞いた時点で『ああ・・・もうだめ・・・』そう思った。

義母は末っ子の【長男】である、パパに全てを託している。
長女には三人の子供が居て、三番目が臨月の時に旦那さんを事故で亡くした…
次女は遠く離れた街で何年間も不倫を続けている…

(実は長女の旦那さんが事故に遭ったのは、この次女を家に送る最中の話で、

その時次女だけが助かった。という…なんとも…)
あの家ではパパだけが頼り…パパだけがあの家を支えていける人間なのだ…

つまり…私に我慢が足りないのだと女三人に姦しく、散々言われてきたのだろう…

パパが私と結婚しなければ…パパが家を出る!なんて言い出す事は無かった。
向こうの家族も必死でパパを止めたのだろう…
本当は離婚してこい!とでも言われたのではないか?
それでもパパは離婚する!とだけは言わないのが救いだった…


私が我慢をすれば…


実母の鬱状態が悪化してきていたのもあって、とりあえず一度、私もパパと実家へ帰る事にした。



パパの実家では想像していたのと違い、にこやかに迎えられた…。

義母『ミルちゃんに素敵なニュースがあるのよー♪』

嬉しそうに近寄ってくる義母。私は叩かれた記憶が蘇り、身体をギュっと固く縮めた。

義母『町の復興の為にね、お嫁さん達だけ無料で海外旅行に

   連れて行ってもらえるんですって♪良い話でしょー?

   キアラは私達が看てるから、たまに羽を伸ばしていらっしゃい^^』

私『はぁ…海外旅行ですか…?別にそんなの…』

義母『まぁまぁ、そう言わずに♪若妻会に行ってお話だけでも聞いてきてご覧なさいよ♪』



以来、義母は私に異常に優しくて…逆に気持ち悪かった…。
パパは相変わらず…実家に戻ると誰ともほとんど話しをしない…。



初めて若妻会というのに出席し、その海外旅行について色々話を聞いた後、

奥さん達だけでお茶をして旦那や姑の悪口を言い合ったり…わりと楽しかったw
海外旅行の話も、1人約35万円分。ドイツ・オランダ・パリ?だったかな?
3カ国の旅費は全て町が持つので、必要なのはパスポートとお小遣いのみとの事。

私は海外旅行どころか、飛行機にすら乗った事が無かった為、その話を聞いて夢は膨らみ、
いつしか・・・その旅行を楽しみにするようになっていた。



急に優しい人へと豹変した義母。しかし、人の性格はそう簡単には変えられない。
パスポートの申請に出掛けたり、旅行グッズの準備をしている私を見るといつも…

義母『いいわね~♪旦那に働かせて嫁は海外旅行なんて♪私の時代には無かったわ~』

等と嫌味を言われる…。
自分で行けって言った癖に…。

それから徐々に…嫌がらせのように、私に命じる仕事の量が増えてきた。
最初は黙って従っていたが、義母のあれやってこれやって!攻撃(?)は

徐々にエスカレートしてき、私が少しでも渋ると…
義母『海外旅行に行かせてあげるんだからそれぐらいやりなさい!』と言われる…。

以前にも増して睡眠時間は削られ、キアラと触れ合う時間すら仕事に回された…。
まぁ…時は秋の終わり頃。
一年で一番忙しい時期だったから仕方ないと言えばそれまでなんだけど…

一度家出をすると癖になる?
もう耐えられない!と思い、私は何度か家を飛び出した。

勿論家出先は実母の所。

私が家出する度に迎えに来るハメになるパパもいい加減苛々していたのだろう…
その想いを義母に向けてくれればこんな事にはならなかったんだけど…

パパ『もういい加減にすれ!帰ってくんな!』

何度目かの家出の時…パパが私に電話してきてこう言い放った…

…私には…本当に…何でも言える人なのね…


パパに見捨てられた事が何より悲しかった…。
私がこのまま本当に戻らなかったらきっと…離婚する気なのだろう…。

パパが一言お義母さんに…『深涙に無理言うな!』そう言ってくれるだけで…
ただそれだけで納まる問題なのに…
何度も何度もパパに助けを求めてきた…だけどパパは知らん顔…
やっぱりパパは…パパにとっては唯一の他人である私。

妻ではなくて…自分の本当の家族の方を取るのね…


母が出かけてる間に私は母の引き出しから大量の睡眠薬を持ち出した。
母が戻り、キアラを預けるとちょっと出掛けてくると家を出た…。


そのまま私は歩き続け、見つけたMOTELに独りで入った…
フロントから電話がかかってきて『お1人様ですか?』と、聞かれる…
一体どこで見てるんだ…?私は『もう1人は後で来ます』と言って電話を切った。

それから私は遺書を書き始める…
どんなに冷たくされても…助けてもらえなくても…人が変わってしまってても…
やっぱり私は…出逢った頃と変わらず、パパを愛してると…
義母にされた、数々の虐めに近い仕打ち…それらも全て書き綴り…
最後にもう耐えられません…さようならって…

それを書き終えたら私はシャワーに入った。
自分の死体が見つかった時、綺麗な状態でいたかったから。

そして大量の睡眠薬を飲み…ベッドに横たわった…。






目が覚めたのは…また…パパの呼ぶ声だった… …気がする…

『ま・・・ぶし・・・』

目の前が白く眩しい光でいっぱい・・・
目を開けるのがとても辛かったが、パパに必死で呼びかけられ、渋々目を開けたのだ

私『こ・・こ・・は・・・?』
パパ『深涙っ!!!!』


久々にパパに名前を呼ばれた…… 

白い光はやや薄れ、愛しのパパの顔が少しずつはっきりしてくる…
パパは泣いていたようだ…私は…どうしてたんだ?

パパ『もう3日間も眠り続けてたんだぞ!俺はもう…深涙は目を覚まさないと思って…』

パパの涙…見た事あったっけ…?
何で泣いてるの?ワカラナイ…

だんだん視界がはっきりしてくると、見た事のある感じの部屋に、自分が寝てる事がわかった。
そう…キアラを産んだ後入ってた集中治療室だ…

横には実母がキアラを抱いて立っていた。

実母『ミルちゃん…とんでもない事を…雅也さんが見つけてくれなかったら今頃…』
母も肩を震わせ泣いていた…

私『私…どうした…の?』
パパ『覚えてないのか?睡眠薬で自殺はかったんだぞ!』
私『ぇ… …ぁぁ…そうだ… …パパに見捨てられて…』
パパ『バカヤロウ!!誰が見捨てるかっ!!ほんとに… …目が覚めて良かった…』


母にキアラを差し出され、私は自分の犯した過ちに気付いた。

私『キアラ…そうだ…私にはキアラが居るのに…本当に…本当にごめんなさい…』

私とパパと実母の三人はその場でひとしきり泣いた…それぞれの想いを抱え…。
キアラが1人、その光景を不思議そうに見ていた…。



私の容態は安定し、すぐに退院できた。

パパが私を見つけてくれた方法だけど…これも謎のお話…
電話を切った後、しばらく…何だか胸騒ぎがして私の実家に電話をしたパパ。
母が出て、キアラを置いて出て行った事を聞き、すぐにヤバイ!と思ったらしい…
とりあえず大急ぎで実家に向かう最中、パパは警察に連絡したとの事。

私はホテルで睡眠薬を飲んだ。
その後、不審に思ったホテルの人が眠っている私を見つけ、警察に通報…
身元がわかるものは何も持って行かなかった。
なので、とりあえず警察に引き渡され、そこですぐにパパが見つけてくれたのだろう…

ああ…そういう事か…
パパが何より先に警察に連絡してた機転には驚いた…

身元不明のままだったら私は何も処置されず、この世に還ってこれなかっただろう…


生きてて…良かったの…?


パパとキアラの顔を見ると…(多分…)生きてて良かったんだと思った…。



その後、パパはしばらくまた実家を出て傍についててくれた。

その時のパパは競馬場に居た頃のように優しくて…私はとても幸せだった。

パパは義母に、実家には帰らない!と強く言ってくれた。
それでも帰ってきて欲しいと必死に頼む両親に…どう言えばいい?って聞かれる。

私『昔約束してたように…ご両親と別居できるなら…キアラの育児に専念できるなら…』

パパは私の望みをパパの言葉で両親に強く伝えてくれた。

両親はかなり渋っていたが、海外旅行と引き換えならいいと言った。

そんなの当たり前…海外旅行なんて誰が行くもんですか…。

旅行のキャンセルの理由を話すと町役場の人も味方についてくれて、
実家の傍にある小学校(今は廃校)にある教職員住宅を格安の値段(3DKで月7000円)で
借りられるようにしてくれた。


やっと・・・やっと・・・普通の夫婦生活が始められるのね・・・






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