ー脳損傷の裁判では、混乱した概念の整理が重要。
労災準拠とか、平成15年労災報告書とかをはずしたら、
確実に負けます。
ーしかし、これをおさえても必要条件にすぎず、十分ではない。
ー被告国側の医者が性懲りもなく、紙くずを追加してきました。
主観的で間違っている人は、どこまでいっても間違っています、こっけいなほど。
ー白を黒と言いくるめる天才です。石橋先生も、目を丸くするでしょう。
これに対して、ていねいに反論する必要があります、面倒くさいけれど。
こっちは客観的な事実なので、自信をもって。
ー人間の認識と別に、客観的な実在(物質)がある、という哲学が大切です。
第4 概念の整理と裁判例
1 概念の整理
ー平成29年4月20日、弁護士でもある山添拓参議院議員が「自賠責保険における脳損傷に係る障害認定に関する質問主意書」を出した。そのなかで、次のように指摘されている。(甲41-1)
「脳損傷の診断については、身体性機能障害である運動障害・感覚障害・神経因性膀胱・脳神経麻痺、精神障害である高次脳機能障害・てんかんなどに対する系統的・学際的な神経学的検査法が有効だとされている(1,600名を超える患者を診察した石橋徹・相馬啓子・安田耕作・篠田淳の四人の医師による共同論文「軽度外傷性脳損傷の実際 学際的アプローチと多重的脳画像診断学」2015年10月参照)。
自賠責保険における後遺障害の等級の認定は、『原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う』こととされているが(「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」2001年金融庁・国土交通省告示)、労災保険における脳の器質的障害に関する概念の整理が自賠責保険において徹底されていない。
すなわち、労災保険においては、労災認定基準の医学的な根拠である『精神・神経の障害認定に関する専門検討会報告書』(2003年)で、脳損傷など脳の器質的障害は『高次脳機能障害』及び『身体性機能障害』として現れると整理されているが、自賠責保険においては、脳損傷による精神障害のひとつである『高次脳機能障害』という言葉が一人歩きし、『身体性機能障害』が軽視されており、脳の器質的障害に関する概念が混乱している。」
そのうえで山添議員は、次のような質問を出した。
「1 労災認定基準である『神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準』(2003年)では、画像所見が認められないものの、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められる場合には、後遺障害として認定することとされている。
また、厚労省の『画像所見が認められない高次脳機能障害に係る障害(補償)給付請求事案の報告について』(2013年6月18日付厚生労働省労働基準局労災補償部補償課長通知)においても、画像所見が認められない場合であっても障害等級第十四級を超える障害の残る可能性があると認められている。
したがって、原則として労災保険に準拠することとされている自賠責保険においても、これらの労災認定基準等と同様の考え方に基づいて後遺障害の認定を行うべきではないか。」
これに対し、内閣は平成29年4月28日に「・・・原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う必要があると認識しており、国土交通省において、御指摘の『これらの労災認定基準等』を踏まえ、一般社団法人日本損害保険協会等に対し、労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じた適正な対応が図られるよう、同協会等の会員に対する周知を依頼している。今後とも関係府省間で一層の連携を図りつつ、引き続き、自賠責保険の的確な運用に努めてまいりたい。」と答弁した。(甲41-2)
上記のとおり、自賠責も労災準拠であることが再確認された。本件労災事案においては当然、いわゆる「高次脳機能障害」や「軽度TBI」に矮小化することなく、労災認定基準にしたがい脳の器質的障害であるTBI、TBIによる身体性機能障害、TBIによる器質性精神障害のひとつである高次脳機能障害(国際的には「認知障害」という)、画像所見が認められないが脳の器質的障害を合理的に推測できるTBI(軽度TBI)のそれぞれについて、概念を混乱させずに救済する必要がある。 (つづく)