ー二人の巨匠は、患者に学ぶ。
私も、それにならっています。


ー脳損傷にかんする医者は神経診断学により、
他覚的な所見を把握する。


ー観念論の医者は、他覚的な所見を
その医者の「主張」と称するが、
全く間違っています。
ー日本の労災認定基準によれば、
脳損傷の有無を確認できればよく、
どこに損傷が局在するかという話と区別すべきです。


-TBIは、徐々に改善するが、すぐ回復するわけではない。
ー画像所見が認められない脳損傷は、手術や解剖の機会がありません。


他方、慢性外傷性脳症(CTE)は、画像に見えず、
解剖して肉眼でも見えず、顕微鏡でわかる。
-進行性のCTEについても、生前に診断できるよう目指しています。


ー職業性呼吸器疾患の医者は、
臨床も、病理も、疫学もやった。


ー亡くなってしまうことが多いので、職業病を解明するため、
解剖しなければなりません。患者の自宅でも解剖しました。


ーこの医者の報告を、私が編集しました。
http://oe-rc.org/publication/social_occupational/
ー革命的な医学は、三方向に向かいました。
1 じん肺療養していたのに「間質性肺炎」とされて、労災遺族補償が出ない。
ー臨床も、肉眼も、顕微鏡所見も解明します。


2 アスベスト疾患では、肺がんと石綿肺が重要。
ー石綿関連肺がんは、画像だけでなく、肉眼所見と照らし合わせるが、顕微鏡所見までは必要ない。
ー石綿肺は、粉じんばくろ情報が重要だが、
「タバコのせい」にする人と対決するため、肉眼だけでなく、顕微鏡所見でも勝負。


3 じん肺による膠原病ーーこれは、主に疫学。

 

〈視点〉 じん肺と特発性間質性肺炎―炭坑夫じん肺を中心に 海老原 勇
〈特集〉 石綿肺の病理と病理組織学的Gradingの改悪 海老原 勇
「石綿対策推進法」の検討を 斎藤 洋太郎
粉じん作業と免疫病理学的疾患 海老原 勇
脳損傷労災障害認定裁判の原告書面(下) 軽度外傷性

 

脳損傷友の会

―2010年東京高裁で勝ちました。
しかし、2011年損害保険料率算出機構が、それを打ち消すための報告書をでっち上げた。


―2016年、それをさらに打ち破る大阪高裁判決が出た。
好機です。 


第4 概念の整理と新しい裁判例

2 大阪高裁判決(甲42)
 同判決は、控訴人の右上下肢の運動機能障害(右不全麻痺)などが、脳の器質性障害であるとして、労災認定基準に沿って後遺障害を認めている(10頁)。具体的には、次のように判示された。


・神経内科の医師が「意見書中において、1審原告の右上下肢の運動機能障害(右不完全麻痺)・感覚障害、視覚障害及び高次脳機能障害は頭部外傷に起因するものと考えられるとし」た(8頁)。


・上記意見書に「事故以前には全く通常の日常生活を営み、大学法学部の高度な研究生活に耐えうる知性を有していた患者において、現在の症状が多岐にわたっていることや脳血流が全体にわたって高度に低下していることからすると、これら症状の原因は頭部外傷後の変化に求めるべきものであり、それ以外の変性等は考えがたい。」などの記載がある(8頁)。


・別の神経内科医も上記医師の見解を支持していることなどから、控訴人の各障害は本件事故と相当因果関係を有すると認めるのが相当である(9頁)。


・控訴人に本件事故後の意識障害が確認できず、頭部CTやMRI等の画像診断で有意な所見を見いだすことができないとしても、それらを絶対視して高次脳機能障害の存在を否定することは相当でない(9ないし10頁)。


 この裁判例も本件に類似し、脳の器質的障害による身体性機能障害(運動機能障害、感覚障害、視覚障害=脳神経麻痺)及び高次脳機能障害(器質性精神障害)と事故との間の相当因果関係を認めている。 (おわり)

ー脳損傷の裁判では、混乱した概念の整理が重要。
労災準拠とか、平成15年労災報告書とかをはずしたら、
確実に負けます。
ーしかし、これをおさえても必要条件にすぎず、十分ではない。


ー被告国側の医者が性懲りもなく、紙くずを追加してきました。
主観的で間違っている人は、どこまでいっても間違っています、こっけいなほど。
ー白を黒と言いくるめる天才です。石橋先生も、目を丸くするでしょう。
これに対して、ていねいに反論する必要があります、面倒くさいけれど。
こっちは客観的な事実なので、自信をもって。
ー人間の認識と別に、客観的な実在(物質)がある、という哲学が大切です。


第4 概念の整理と裁判例
1 概念の整理
ー平成29年4月20日、弁護士でもある山添拓参議院議員が「自賠責保険における脳損傷に係る障害認定に関する質問主意書」を出した。そのなかで、次のように指摘されている。(甲41-1)


「脳損傷の診断については、身体性機能障害である運動障害・感覚障害・神経因性膀胱・脳神経麻痺、精神障害である高次脳機能障害・てんかんなどに対する系統的・学際的な神経学的検査法が有効だとされている(1,600名を超える患者を診察した石橋徹・相馬啓子・安田耕作・篠田淳の四人の医師による共同論文「軽度外傷性脳損傷の実際 学際的アプローチと多重的脳画像診断学」2015年10月参照)。


 自賠責保険における後遺障害の等級の認定は、『原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う』こととされているが(「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」2001年金融庁・国土交通省告示)、労災保険における脳の器質的障害に関する概念の整理が自賠責保険において徹底されていない。


 すなわち、労災保険においては、労災認定基準の医学的な根拠である『精神・神経の障害認定に関する専門検討会報告書』(2003年)で、脳損傷など脳の器質的障害は『高次脳機能障害』及び『身体性機能障害』として現れると整理されているが、自賠責保険においては、脳損傷による精神障害のひとつである『高次脳機能障害』という言葉が一人歩きし、『身体性機能障害』が軽視されており、脳の器質的障害に関する概念が混乱している。」


 そのうえで山添議員は、次のような質問を出した。
「1 労災認定基準である『神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準』(2003年)では、画像所見が認められないものの、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められる場合には、後遺障害として認定することとされている。


 また、厚労省の『画像所見が認められない高次脳機能障害に係る障害(補償)給付請求事案の報告について』(2013年6月18日付厚生労働省労働基準局労災補償部補償課長通知)においても、画像所見が認められない場合であっても障害等級第十四級を超える障害の残る可能性があると認められている。


 したがって、原則として労災保険に準拠することとされている自賠責保険においても、これらの労災認定基準等と同様の考え方に基づいて後遺障害の認定を行うべきではないか。」


 これに対し、内閣は平成29年4月28日に「・・・原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う必要があると認識しており、国土交通省において、御指摘の『これらの労災認定基準等』を踏まえ、一般社団法人日本損害保険協会等に対し、労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じた適正な対応が図られるよう、同協会等の会員に対する周知を依頼している。今後とも関係府省間で一層の連携を図りつつ、引き続き、自賠責保険の的確な運用に努めてまいりたい。」と答弁した。(甲41-2)


 上記のとおり、自賠責も労災準拠であることが再確認された。本件労災事案においては当然、いわゆる「高次脳機能障害」や「軽度TBI」に矮小化することなく、労災認定基準にしたがい脳の器質的障害であるTBI、TBIによる身体性機能障害、TBIによる器質性精神障害のひとつである高次脳機能障害(国際的には「認知障害」という)、画像所見が認められないが脳の器質的障害を合理的に推測できるTBI(軽度TBI)のそれぞれについて、概念を混乱させずに救済する必要がある。 (つづく)