僕がはじめて彼女に会ったのは一九六九年の秋、僕は二十歳で彼女は十七歳だった。
大学の近くに小さな喫茶店があって、僕はそこでよく友だちと待ち合わせた。
たいした店ではないけれど、そこに行けばハードロックを聴きながらとびっきり不味いコーヒーを飲むことができた。
彼女はいつも同じ席に座り、テーブルに肘をついて本を読み耽っていた。
歯列矯正器のような眼鏡をかけて骨ばった手をしていたが、彼女にはどことなく親しめるところがあった。
彼女のコーヒーはいつも冷めて、灰皿はいつも吸い殻でいっぱいになっていた。