パンミレ(第7章)貴方は最高の夫だった | ミレディ strange novel

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~パンドラプランナーのミレディです~
          (パンミレ)

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♪Step♪KARA(小説メイン)



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(まさか、僕がこの男性を担当するとは・・・。

昨日、義武と一緒に横浜市内の


レストランで会った人・・・。

オールディーズの店長さん・・・。


相変わらず暗い顔しているなぁ。


確か、義武の話では、


奥さんと息子さんを亡くして

いるんだよな・・・)




 

尚輝は、男性客をオフィスに

案内した。

そのとき、オフィス内にBGMが

流れた。


♪Autumn Rose♪(効果音)

 


「お客様?お名前を伺っても

宜しいでしょうか?」


「はい・・・、永倉和人と言います・・・」

「和人様ですね、今回は私


パンドラプランナーの尚輝が

和人様を担当しますので、

宜しくお願いします」


「はい・・・」

男性ゲストの和人は

ソファに座った。





事務員の美鈴が

ローズティを持って来た。

「和人様、ローズティでございます」

「あ、ありがとうございます・・・」


和人は軽くお辞儀した。


「和人様、当社ではゲスト様の事を

下の名前で呼ばせて貰っております。

ですから、これから和人様と


お呼びします」

「はい・・・」


「それでは和人様、これより私尚輝が

パンドラプランナーの業務について

ご説明させて頂きます。


パンドラプランナーとは、現実の世界で

苦しめられたゲスト様を


ゲスト様が望まれる理想の世界に

ご招待するというお仕事になっております。


現実の世界を(リアリティーワールド)、

理想の世界を(ユートピアワールド)と

呼ばせて頂いております。」


「はい・・・」

「その後、和人様が理想とされる世界を

作り上げ、その後和人様に

その理想の世界で


暮らして貰うという事です」

和人が手を挙げた。

「あのう?僕を理想の世界に

行かせるんですか?」


「はい、和人様が理想とされる世界を

和人様から聞き出し、その後私が

理想の世界を作ります。


その理想の世界に、和人様が

向かわれるという事です」


「あのう?そんな事出来るんですか?」

「はい、今まで多くのゲスト様が、

ご自分が理想とされる世界に


向かわれ、幸せに暮らしています」

「そうなんですか・・・」


「最初に、和人様の今までの世界、

つまり現実の世界について

伺いたいのですが、


宜しいでしょうか?」

「はい、僕は今横浜市内で


レストランを経営しています。

前の店長に頼まれたんです。


以前は、サラリーマンをやっていました。

人材派遣の会社です。



当時、僕はある女性と出会いました。

彼女は、大手銀行に勤めていました。


とても綺麗で優秀な女性でした。

しかも、誰に対しても優しい女性でした。


僕は、その女性に一目惚れして

しまいました。



その後、僕はその女性と交際を

始めました。


そして、プロポーズして結婚しました。

彼女の両親から反対されましたが、

彼女は、僕との結婚を望んでいました。


彼女の名前は、戸田明歩です。

明歩は、僕の妻として本当に

よくやってくれました。


妻明歩には、本当に苦労ばかりかけて

しまいましたが、明歩は一度も僕に

文句を言った事はありませんでした。


僕には勿体ないくらい、

とても素晴らしい妻でした。



そのうち、明歩は女の子、

そして男の子を出産しました。

僕は家族の為、頑張ろうと思いました。


僕は元々仕事が出来なかったのですが、

家族を持つようになってから、

仕事を熱心にやるようになり、


少しずつ業績もあがりました。

愛の力ってやつですね・・・」


和人は嬉しそうに話した。

(和人様、やっと笑った・・・。

和人の笑顔初めて見た・・・。

いつも暗い顔していたのに・・・)



和人は話を続けた。


「生活は段々楽になりました。

子供達も、すくすく育ちました。

時々、家族を連れて


外食する事もありました。


よく行ったレストランが


オールディーズでした。

ステーキ専門店です。

60年代~70年代風の


アメリカをイメージしています。

当時店長だった、ニコラス・森川さんが

奥様と2人で経営していました。

僕は、結婚前から時々通っていました。


オールディーズの雰囲気がとても

落ち着いて好きでした。

妻の明歩もとても気に入っていました。


交際していた頃も、よく2人で通っていた

思い出の場所です。


子供達は、イマイチでしたが・・・。


明歩は、よくリクエストしていました。

メリー・ホプキンの♪悲しき天使♪を

ジュークボックスにお金を入れていました。


僕もこの曲が好きになりました。

まるで僕と明歩の事を


歌っている様な感じがしたので・・・」

和人は涙を流しながら

話し続けた。


「僕は、オールディーズの店長

ニコラス・森川さんとはとても

仲が良かったです。


ニコラスさんには、何でも相談しました。

まるで、僕の父親の様な

存在でした。


しかし、ニコラスさんは最愛の奥様が

他界されてからは、

とても絶望的になりました。


オールディーズの売り上げも下がり

始めていました。


閉店の危機にもなりました。

そこで、ニコラスさんは


僕にお店を任せたいと言ったのです。

最初は断りました。


今まで人に使われる様な

仕事をしてきた僕が、

人を使う様な仕事は


僕には出来ないと思ったし、

会社での業績もあがり、


やっと家族を楽させる事が

出来た矢先だったからです。


もう貧乏には戻りたくないと

思っていました。

しかし、ニコラスさんは


それでも僕にお店を任せたいと

頼んで来たのです。



僕は、人に強く頼まれると

断れない性格だし、


何よりもオールディーズが大好き

だったので、結局僕はニコラスさんの


依頼を受け入れました。

会社を辞め、オールディーズの店長に

なりました。


それを妻明歩に伝えると

最初は驚いていましたが、


明歩は受けれてくれました。

子供達は反対しましたが・・・。



僕は、ニコラスさんの為にも

オールディーズをもっと繁栄させようと

思いました。


もっと、多くのお客様に落ち着いて

貰えるようなお店にしたいと

強く思いました。

当初は、とても大変でした。


慣れない事ばかりだったからです。

でも、僕は生きがいを感じていました。


仕事に生きがいを感じるのは

初めてだったのです。



でも、レストラン経営は

夜遅くまで続き、

サラリーマンの様に、


定時で帰るという事は

殆どありませんでした。


収入もサラリーマンとは違って

一定している訳ではありません。




それで、僕の家庭は段々

貧しくなりました。

明歩もパートをやる様に

なりました。


明歩は、とても大変そうでしたが、

一度も僕に不満をぶつける事は


しませんでした。

家では、優しい笑顔を見せて

くれました。


僕は、妻や子供達の為にも

とにかく頑張ろうと思いました。



そして、僕が店長になってから


数年後、オールディーズはようやく

売り上げもうなぎ登り状態になりました。

多くのスタッフに支えられたおかげです。


そんな時、前の店長だったニコラスさんは

病死しました。


最後に”ありがとう”と言ってくれました。

それが最後の言葉でした。




そして、それから1年後・・・。

とても悲しい出来事が起きました。

家族が崩壊するキッカケにも

なりました。


最愛の息子が亡くなりました。

僕が悪いのです。


当時息子は少年野球をやっていました。

よく地区大会に出場していました・・・」



和人の表情が険しくなった。


「そしてあの日・・・、

息子の誕生日でした。

妻と娘は家で、


誕生日の準備をしていました。

僕はその日も仕事でした。


息子は野球の練習をしていたので、

僕が息子を迎えに行く予定

だったのです。


しかし、その日はかなり店が

混雑していました。


だから、僕はなかなか

息子に迎えに行く事が

出来ませんでした。


その日は、昼から大雨でした。

川が氾濫を起こすほどでした。


落雷もありました。


息子は、僕がなかなか

迎えに来ないので、

1人で帰る事にしました。




そして、息子は家から

数メートル離れた川に

落ちて流されてしまいました。

川の流れはかなり強かった為、


息子はどんどん流されました。


そして翌朝、息子は遺体で

見つかりました。



僕が愕然としました。

自分がもっと早く迎えに

行っていれば・・・。



妻は号泣でした。

遺体となった息子を

抱き抱えながら泣いていました。

そして、僕に向かって怒鳴りました。


”何故息子を助けてあげなかったの!

何故息子を迎えに行かなかったの!

貴方はそれでも父親なの!”


今でも妻の言葉は覚えています。

妻が初めて僕に怒鳴ったのです。

結婚してから一度も怒鳴らなかった

妻明歩が・・・」



和人は、話を辞め手で涙を拭いた。

しばらくして和人は再び


話し始めた。

「息子を失ってから、僕は妻と娘と別居する事に

なりました。

僕は、オールディズで住み込む事に


なりました。

電話も全くしませんでした。

妻はそのままパートを続けていました。



しかし、今度は妻明歩が・・・。

疲労の為、ついに倒れてしまいました。

妻は病院に運ばれました。

僕は、妻の病室に入ろうとしましたが、


娘に止められました。

”帰って!父さんなんか大っ嫌い!”


娘の一言が心に刺さりました。


そして・・・、あの日・・・。


僕は娘から連絡を受け、

妻の病室に行きました。


妻は、とても痩せていました。

妻は医師から癌と告知されていました。

それでも妻は、僕の顔を見ると


笑顔になりました。

僕は、妻に何度も謝罪しました。

でも、妻はそれでも笑顔でした。


”貴方が謝る事は何もない”

”貴方と結婚出来て良かった”

”子供達にも恵まれたし”

”良い家庭を築く事も出来た”


”貴方と出会えて本当に良かった”

”和人さん”


”愛している”

"貴方は最高の夫だった”

”里奈を宜しく”


妻は、弱い口調でゆっくりと

話しました。


そして、妻は眠る様にして

息を引き取りました。


僕は、妻を抱き締め号泣しました。

”申し訳ない、本当に申し訳ない”

と何度も妻に謝辞しました。



妻の死後も、娘里奈と二人で

暮らす事はありませんでした。

里奈は既に高校生だったので、

自分の事は自分でしていました。


バイトもしていました。


その後、里奈は大学生になり


実家を出ました。

それから、僕は実家に戻りました。

僕は、家族の為に貯めていたお金を

全て里奈に渡しました。


実家を引き払い、今はまた

お店で暮らしています。



娘里奈とは、全く会っていません。

連絡もしていません。


以上です・・・、尚輝さん・・・」

和人は、話終わっても

ずっと泣いていた。


側で話を聞いていた尚輝も

思わず涙を流した。

(和人様、そんなに辛い思いを

していたんだ。


誰よりも家族を大事にしていたのに、

その家族を失ってしまった。


息子さんを失い、そして奥様も失い、

さらに娘さんまで・・・。


今は、孤独に生きている・・・。

そんな和人様の理想の世界とは

いったいどんな世界なのか・・・)





♪さよなら♪カバー(挿入曲)

 

 

 

 

 

 

 

 

Next time continue・・・

 

 

 

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