ひとしれず照り守り来るひとすじのすめら灯び照り伝えなむ


【上代から南北朝のはじめまで】

 

1.佐保姫命のご自害(11垂仁天皇)

2.弟橘媛尊の御入水(12景行天皇)【情操化】

 

  さねさし相模の小野に燃ゆる火のほなかに立ちて問ひし君はも

 

3.応神天皇国見の御製

 

  千葉の葛野を見れば百千足る家庭もみゆ国の秀もみゆ

 

4.宇治稚郎子尊のご自害【岡先生により情操化】

※ 歌一首あり。

5.民のかまど(16代仁徳天皇)【情操化;民のかまど】

 

  高き屋にのぼりて見れば煙たつ民のかまどはにぎはひにけり

 

6.仁徳天皇国見の御製

 

  おし照るや難波の埼よ出立て我が国見れば粟島おのころ島あぢまさの島もみゆさけつ島みゆ

 

7.舒明天皇(34代)の御製

 

  大和には群山あれどとりよろふ天の香具山のぼりたち国見をすれば国原は煙り立ち立つ海原はかまめ立ち立つうまし国ぞ秋津洲大和の国は

 

  夕去れば小倉の山に鳴く鹿はこよひはなかずいねにけらしも

 

8.山背大兄皇子ご自害(舒明天皇御宇)【岡先生により情操化】 


 ※ 天智天皇御製入れ忘れ。「海神の豊旗雲にいりひさし今宵の月夜あきらけくこそ」


9.大伴部博麿愛国の事(持統天皇41第)【御維新後に情操化?】

 

  持統天皇の詔

 

持統天皇御製(月読尊)

 北山につらなる雲の青雲の星さかりゆき月もさかりて

  ※万葉歌人に名歌百出。雄大。

 

10.元明天皇(第43)と御名部皇女の御問答【岡先生により情操化?】

  

 御製

  ますらをの鞆の音すなりもののふの大臣盾たつらしも

 

 御名部皇女御返歌

  我ご大君ものなおもほし皇神の継ぎて賜へる我なけなくに

 

11.光明皇后二院のこと(第45代元正天皇御宇)【情操化?】

 

  ※中将姫,行基菩薩などの名話あり。

 

12.壇林皇后御辞世(第52代嵯峨天皇の皇后)

 

  我死なば焼くな埋づむな野に捨てて痩せたる犬の腹をこやせよ

 

12.第60代醍醐天皇寒衣のこと【情操化:延喜天暦の治】

 

  ※菅原道真,忠臣として皇室の情操に根つき,後々あらはる。歌,

    ・海ならずたたえる水の底までも清き心は月ぞ照らさむ(出典大鏡)

    ・心だに誠の道にかなひなば祈らずとても神やまもらむ(出典どこ?)

 

  ※和泉式部和歌一首

    ・暗きより暗き道にぞいりぬべしほのかに照らせ山の端の月


 

13.第71代後三条天皇,邪気を転じ正気を呼ぶ(君臣の情)

  

  ・春宮と申しけるとき,太宰大弐實政,学士にて侍りけるが,甲斐守にて下り侍りけるに,餞たまはすとて,

    思ひ出でば同じ空とは月を見よ程は雲居にめぐりあふまで

   又詩に詠みたまはく,

    州民たとひ甘棠詠をなすとも 忘る莫れ多年風月の遊を

 

14.崇徳上皇(第75代),月詠尊を詠み給ふ(さみしさと現ず)

  ・月

   見る人にもののあはれを知らすれば月やこの世の鏡なるらむ

 

15.崇徳上皇,保元の乱にてお情け蒙ること

 

 ※袈裟御前,国の心を浄める。歌に曰く,「露ふかきあさぢが原に迷ふ身のいとど闇路にいるぞ悲しき」

 

 ※平家和歌集

薩摩守忠度「ゆき暮れて木のしたかげを宿とせば花やこよひのあるじならまし」

「常にみし君が御幸を今日とへば帰らぬ旅ときくぞ悲しき」

 ※静御前一首,鎌倉にて「しづしづやしづのおだまき繰り返し昔を今になすよしもがな」


  ※平安調の和歌

   ・つつめども隠れぬものは夏虫の身より余れる光なりかり

   ・五月まつ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする

   ・秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる

   ・散ればこそいとど桜はめでたけれ浮世に何か久しかるべき

   ・残りなく散るぞめでたき桜花ありて世の中はてのうければ

   ・君ならで誰にかみせむ梅の花色をも香をも知る人ぞ知る

   ・我が宿の池の藤浪さきにけり山時鳥いつか来なかむ

   ・ながむれば思ひやるべき方ぞなき春の限りの夕暮れの空

   ・袖ひぢて結びし水の氷れるを春立つ今日の風やとくらむ

   ・浅茅生の小野のしのはらうちなびき遠方人に秋風ぞふく


 

16.後鳥羽上皇御製(第82代)

  ・雑(悲願)

   心をし天照神にかけまくもかしこき光くもり無き世に

  ・住吉の歌合にて,山を(正名の事)

   奥山のおどろが下も踏み分けて道ある世ぞと人に知らせむ

  ・題しらず(寒衣の情操あらはる)

   夜をさむみ寝屋のふすまのさゆるにも藁屋の風をおもひこそやれ

  ・百首の御歌の中に(民のかまどの情操あらはる)

   見渡せばむらの朝けぞかすみゆく民のかまども春にあふ頃

  ・池上月(月詠尊あらはる)

   ひろ沢の池にやどれる月影や昔をうつす鏡なるらむ

  ・健保二年二月歌会,春風(延喜天暦の治の念かよふ)

   治めけむ古きにかへる風ならば花散るとても厭はざらまし

  ・遠島百首より(後鳥羽上皇の名歌)【情操化】

   我こそは新島守よ隠岐の海のあらき波風こころしてふけ

 

17.土御門天皇御製(第83代)

  ・毎夜坐禅観水月(月詠尊あらはる)

   むねの月心の水も夜な夜なの静かなるにぞ澄みはじめける

 

  ※この時期,伊勢神道興隆す。

 

18.順徳天皇御製(第84代) 名歌

  ・月前竹

   竹の葉にみがける玉の秋の月千代に八千代に枝ながら見む

 

19.順徳天皇,禁秘抄

 

  ※源実朝辞世

    出でていなば主なき宿となりぬとも軒端の梅よ春を忘るな

 

20.後嵯峨上皇御製(第88代)

  ・題しらず(月詠尊皇統をおしへる)

    神代より幾よろづよになりぬらむ思へば久し秋の夜の月

  ・宝治の百首の歌めしけるついでに,早苗(天照大神あらはる)

    足引きの山田の早苗とりどりに民のしはざはにぎはひにけり

21.亀山上皇(第90代:大覚寺統),元寇に際し,御言葉と御親筆のこと

22.亀山上皇御製

 ・弘安百首の中に,春(天照大神現成)

   四方の海波をさまりてのどかなる我が日の本に春はきにけり

 ・百首の歌よませたまひけるとき,暁(舒明天皇の御製の情緒あらはるか)

   しづかなる寝覚め夜ふかき暁の鐘よりつづく鳥の声声

 

 ※この時期,鎌倉に禅師多く来る。時頼,時宗,禅師に政をならふ。

 

23.伏見天皇御製(第92代:持明院統)

 ・題しらず(繊微なる御自戒のあらはれ;月詠尊)

  神やしる世のためとてぞ身を思ふ身の為にして世をば祈らず

 ・述懐の御歌の中に(心胆錬磨の赴き)

  いたづらに安き我が身ぞ愧づかしき苦しむ民の心おもへば

 ・寄国祝といふことをよませ給ひける(天照大神の御心を悲願とうつした)

  世々たえずつぎて久しく栄えなむ豊芦原の国やすくして

 ・早苗(天照大神のあらはれ)

  傾くる田子の小笠のいくならび同じ心にとる早苗かな

 ・春夜(名歌)

  かくてまためぐりあはむもかたき世に今宵の春よげに惜しむべし

 

24.後伏見天皇御製(第93代:持明院統)

 ・萬葉集の詞一句を題にて,人々歌よまさせ給ひけるに,ひかりはきよく,といふことを(悲願)

  天津日の光はきよく照らす世に人の心のなどか曇れる

 

25.花園天皇(第95代:持明院統)

 ・題しらず(自戒)

  いまさらに我が私をいのらめや世にあれば世を思ふばかりぞ

 ・雑(これは禅の赴きなり)

  小夜ふくる窓のともしびつくづくと景も静けし我もしづけし 

  過ぎにし世今行くさきと思ひうつる心よいずら灯のもと

  心とて四方にうつるよ何ぞこれらだこの向ふ灯のかげ

 

26.楠木正成,桜井の子別れの事,討死の事

 

27.菊地武時とその妻

 ・武時

  もののふの上矢のかぶら一筋に思ふ心は神ぞ知るらむ

 ・妻

  古里も今宵ばかりの命ぞと知りてや君が我を待つらむ

 

  ※菊地武時を教えた曹洞宗の禅僧,大智禅師の詩はよろし。