「おい!そこの3バカトリオ!」
白いスモークの中、高田総統が静岡の地に姿を見せた。
「遂に出てきやがったな!そんな所からしかモノが言えねえのか!」
と小川。しかし高田総統は小川のその言葉に耳を傾けようとはしない。
「だまれチキン。ここにいる諸君たちと会うのは初めてだな。礼儀は大事だ。挨拶してやろう。我こそが高田モンスター軍総統・高田だ!」
とまずはいつもの決め台詞だ。
「今日は茶畑しかない、ド田舎まで来てやった。3連休の初日なのに何の予定もない暇で暇でしょうがないプロレスファンの諸君、私の静岡弁はいけていたかな」
と挑発。さらに
「聞くところによると君たちはうなぎパイというものが好物らしいな。それはそんなに上手いのか?」
と挑発を続ける。静岡のファンからは凄まじいブーイングが起こるがそれがかえって逆効果。高田総統はそのブーイングを楽しむかのようにニヤリと微笑んだ。
ここでマイクを握った小川は
「おい!高田!今日はお前より喋りのうまい“ハッスルあちち”がいるんだよ」
と大谷を指差す。それを受けた大谷は
「総統、今キャプテンから恐ろしいフリをされたハッスルあちちだ」
とまずは自己紹介。そして
「総統、ハッスルには俺もいるんだよ。こんな派手な格好してるんだ。気付かないわけないだろう」
と、いつまでも大谷のことを無視する高田総統に突っ込みをいれる。しかし高田総統からすればトークバトルはお手の物。
「君は確か大仁田くんだったな。引退してるはずなのだが…国会議員が何をしている!早く永田町に帰りたまえ!」
と絶妙の切り返しを見せる。これにはさすがの大谷も
「ちきしょう!また面白い事言いやがって」
と悔しさを全面に押し出した。しかしこんなところで怯んでいてはハッスルあちちの名が廃る。大谷はすぐに気を取り直し
「確かに名前は似ているけど、俺は“ハッスルあちち”大谷晋二郎だ!それともう一つ。総統、俺の好きな静岡をバカにするんじゃねえ。静岡は温暖で空気が美味い。そして魚も美味けりゃ水も美味い。それに俺が知ってる限り、静岡には美人が多いんだ。そうだろ?みんな」
と、静岡のファンに呼びかけると、会場からは大谷に向けて大声援が送られる。
そんな大谷を高田総統は
「あいも変らず暑苦しいな、大谷くん。私の邪魔をしないでくれ」
と一喝。
「東京と名古屋という大都会に挟まれて、温暖な気候でのほほんと育ったことが原因なのか、ここ静岡はオレオレ詐欺に引っかかる率が非常に高い!うなぎパイをばかり食べずに、電話の相手を確認したまえ!」
と、静岡のファンに対する暴言を吐き捨てた。
ここから高田総統の話の話題は昨日の小川×川田戦へと移る。
「そこにいる小川君。昨日はいいモノを見せてもらったよ」
となぜか宿敵である小川を称える高田総統。しかしそんなはずもなく
「このことを何というか知っているか?褒め殺しと言うんだよ」
とニヤリ。これに対し小川も
「何ウダウダ言ってるんだよ!自分が試合もしないで、人の試合のことを何偉そうに批評してんだ!」
と反撃に転じる。
「お前それじゃおすぎの映画評論じゃねえか!」
と続ける小川。しかしその例えの意味が、どうもよく分からない。するとすかさず川田がマイクを握り
「小川、それを言うならピーコのファッションチェックだ」
と絶妙のフォローを入れた。さらにそのままマイクを握った川田は
「高田、お前はその格好でピーコのファッションチェックを受ける勇気があるのか?まあお前にはリング上で戦う勇気すらないからな」
と、高田総統の痛いところを突くのであった。
そんな川田の突っ込みも何のその。高田総統はあくまでマイペース。
「今から君たちに重大なお知らせがある」
と、会場のスクリーンには5月のハッスル地方巡業のスケジュールが映し出される。それを眺めながら高田総統は
「今後、我がモンスター軍は日本全国を支配する。分かるか?さしずめモンスター軍全国洗脳ツアーだ」
と、ハッスルシリーズを一方的に高田モンスター軍プロデュースにすることを宣言したのだ。そして
「チキン、大仁田、引きこもり!バカ面して立っていないで、しっかり待っておくんだな」
とハッスル軍トップ3に捨て台詞。
「バッドラック!」
とマントを翻しながら、モンスターたちを引き連れて会場を去っていた。
高田総統が去った後、小川は
「静岡の皆さん、応援ありがとう。ハッスル・ハウス初の地方巡業、俺が愛する街・静岡は最高だよ」
とコメント。
「今日は皆さんの声援のおかげでハッスル軍が圧勝できました。自分とあちちが勝てたのも皆さんのおかげです」
と感謝の気持ちを述べる。大谷も
「これから俺がハッスルを、静岡をスタートに熱く熱くしていくんでよろしくお願いします」
と続いた。そして川田も
「俺はこのリングでお茶をばら撒くような試合はしたくない。言い換えれば、お茶を濁すような試合はしたくない。これからもハッスルよろしくお願いします」
と挨拶。そして
「小川、キャプテンでとして今日も締めてくれ」
と、小川にハッスルポーズを任せようとする。しかし小川は
「昨日俺はファンに、ジャッジシステムでキャプテンに相応しくないと判断されたんだ。そうなった以上、呑気にキャプテンを続けることは出来ないんだ」
と、ハッスルポーズを拒否するばかりかキャプテンの座を降りる事までも口にしてしまう。この小川の弱気な言葉に
「俺がどんな気持ちでお前にキャプテンを譲ったと思う」
と語気を強める川田。しかし
「これからも俺がハッスルを引っ張っていこうと思う。でもああいう風にジャッジされたからには続けられないんだよ」
と小川の態度は変らない。するとどこからともなく会場から小さな小川コールが起こり始める。そしてそれは会場全体を包む大・小川コールへと変っていった。それを聞いた川田は
「おいこの熱い声援が聞こえないのか?ハッスルを背負うのはお前しかいないんだよ。お前自分の知名度を知ってるか?お前がハッスルを背負わなきゃダメなんだよ」
と小川に問いかける。すると小川も
「本当にありがとう。これからのことはもう少し考えさせてください。ただし今日まではキャプテン。最後はキャプテンとして締めたいと思います」
と、ひとまずキャプテンの座を放棄するということは踏み留まった。
「ハッスル軍は一丸となって全国にハッスルを広めて行きたいと思います。ハッスルK、ハッスルあちち、そして皆さん。よろしくお願いします」
と小川が改めてハッスル軍としての決意を表明。そして
「いつか必ずこの地に戻ってくるからな!みんなまた会おうぜ!」
と静岡のファンに熱いメッセージを送った。もちろん最後は小川が音頭を取ってハッスルポーズ。ハッスル・ハウス初の地方大会は大熱狂のまま幕を閉じた。
日の川田戦で観客そし会場のファンが下したジャッジは、これから小川にとって重くのしかかる事だろう。しかしこの日静岡で小川に対して熱い声援が送られたのもまた事実。川田の言葉のように、小川がハッスル軍のキャプテンであることを願う人たちは存在するのだ。今回のハッスル・ハウスvol.6 in 静岡は、ハッスルにとってだけでなく、小川にとっても大きな大会となったことだろう。