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【インタビュー】名匠・滝田洋二郎監督、二宮和也と初タッグ! 演じるのは孤独な天才料理人 / 映画『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』

――現代パートと満州パートは別撮り
最初に現代パートを撮ったのですが、過去とのつながりを想像しなくてはならないので、二宮くんは大変だったと思います。

☆シネマトゥデイ
二宮和也の演技力とは?『おくりびと』滝田洋二郎監督が明かす

「相当いろいろと考えているのは確か。初日、何もしゃべらずカメラの前に佇んだ瞬間、既に“少し拗ねていながらもクールな充”そのものでしたから」
「充のように最初は嫌な面が目に付くキャラクターが、僕は好きです。最後に別の面が出てくるのが面白い。人間は多面的な生き物ですから」

セリフも控えめ、受けの演技に徹している「すごく難しい役」
「話を聞く受けの演技であり、その彼の表情で物語を次の場面へと飛ばさなければならない。大袈裟な表現は避ける共通認識の中、出会う人々の想いを受け止め、それを表情……目なのか口なのか……で表現しなければならないなんて、実際には非常に難しい。それをよく演じ切れたなと思いますね」

「充の顔で終わるあの場面は、テストもせず、一発勝負で撮れた気持ち良さがありました。やっぱり彼は人を生かすのがうまい。ここぞという見せ場で、最高のパフォーマンスができる。あの表情で全てを持って行ってしまっていますよね。映画の核心であることを非常に良く理解している。それこそがスターですよ」

『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』二宮和也インタビュー

ーー料理
主に所作的なことです。包丁の使い方などをメインに習いました。ただ僕の場合、嵐というグループをやっているので、ファンの方々には充というキャラクターの後ろにいる“ニノ”がずっと見えてしまうと思うんです。そこで“料理も一生懸命練習しました”となると、充としてではなく“ニノ、よく頑張ったね、努力したね!”といった見え方になってしまう。でも、そういうことを伝える映画ではないと思うので、どうしてもそれは避けたかったんです。どうしたら料理が素敵に映るか、所作事が綺麗に流れるように映るのか、ということを一番気にかけていました。その流れの中で、オムライス作りは特にしっかり練習しました。(腕を叩いて卵の形を整える)ポンポンもできるようになり、監督もすごく興奮して(笑)。監督やカメラマンさんなどスタッフさんがみな「おいしい、おいしい」と綺麗に平らげてくださって。嬉しかったなぁ(笑)。

ーー本作をきっかけに料理には?
ないです(笑)。本当に食にこだわりがなくて。どうしたらおいしそうに、魅力的に見えるか、とか歴史を背負って生まれてきた(料理)といった映画としてどう見えるのか、ということばかり考えていたので。

ーー聞き出していく役
監督とは連携を取り合って役をつくっていきましたが、常に「全体」としてどう見えているのかを意識し、どこまで物語が進んでいるのかを確認しながら演じていく感じでした。満州に飛んでいくシーンなのか、あるいは満州から帰ってきているシーンなのか、その前後を考えながら演じていました。

ーー充と健のシーン
そうですね。ああいったシーンは、充と健のキャラクターや関係性を示すものでもあり、割とわかりやすく展開しているように感じたので、監督に“ここはラフに演じていいですよね?”と確認しながら臨みました。台本にちゃんと書き込まれたセリフではありましたが、“別にそれを伝えるつもりがないのに自然と言ってしまう、伝わってしまう”というやり方を、とことん入れていった場面というか。独り言のつもりが相手に伝わってしまっている間柄というイメージで、ああいうかたち(少しくだけた空気)になりました。

ーー「受け」の演技の難しさは?
他の方々はみな何かを画策するために動いたり、特に満州チームはレシピをゼロから作っていく中でいろいろあるのですが、僕は事情を知るダンディーなおじ様たちのところへ行き、「あぁ、なるほど~」と聞いて、「ここから先はこの人に聞いてくれ」と言われて次に行き、「もうそこまで聞いたのか」と言われて続きを聞き……ということがメインだったので(笑)。そういう意味では「大変」と感じることはなかったように思います。いわば僕も観客という立場で、観客と一緒に進んでいく感じでした。

ーー聞き役のストレス
そうなんです、何かこう自分なりのアレンジだったりをやりたくなるものじゃないですか! 人間一日働いていたら、どうしたって“仕事した感”が欲しくなるものですが、今回の役は手応えがあまり感じられないので、時に自然と少し濃い味を出そうとしてしまうんです。その中で若干エゴだったり、麻痺しちゃうところもあるのですが、常に“いい作品を作りたい”というベクトルの延長線上での提案でもあるので、現場では毎日、いろんな提案をさせていただいていました。そこで滝田監督がすごい方だなと思うのは、僕が提案したことがそのシーンに合っていようがいまいが、「違う、それは必要ない」とか「もう少し抑えて」とか言わず、一度やらせてくれるんです。多分監督も、“この子のガス抜きをしてやろう”という感じだったんでしょうね(笑)。ハンドリングが本当に上手な方だな、人間的に大きい人だな、と終わってから気づきました。

ーー作品の試写
基本的に僕は、完成した映画の試写に行くのが苦手なんです。数か月かけたものが2時間程度になっているのを目の当たりにすると、「そんな頑張りじゃないよ」と落ち込んじゃうんですよ(笑)。普通は、台本に書かれた場面でも本編ではカットされていることがあるんです。今回の場合は本編で使われたのは、ほとんどガスを抜いた後で改めて台本通りにて丁寧に演じたところでした(笑)、それだけにとてもリアリティーのあるものになっていると思いました。満足しています!

ーー滝田監督
僕自身は何も変わらず、自分のやり方でやらせていただきました。ただ、このお話をいただいたとき、何度も(滝田監督のような方と仕事が)できるわけじゃないと直感的に思いましたし、撮影を終えてみて、演者として様々なチャレンジをさせていただいた、とても贅沢な時間だったなと感じています。