ゆっくりと。

ここ1ヶ月くらい。

連絡を取っていなかった時間の近況報告。

彼がなぜ。

会社を辞めてしまうのか。

東京を離れてしまうのか。

少しわかった気がした。


だけど。

それは序章でしかなかった。


彼は。

言葉を選びながら。

本当の理由を。

話し始めた。

話しのはじめの方で話してくれた彼の決断もウソじゃない。


だけど。

彼を動かした本当の理由は。

予想を超えたものだった。


あなたは。

大切な家族の余命を。

突然知ったら。

どうしますか?

その限られた時間が。

例えば。

来年の今頃は。

一緒にいられない短い期間だったらどうしますか?


彼はその短い時間を。

ただただ。

近くにいられればいいと。

そうしたいと。

ただそれだけを望み。

大切な人のそばに帰ることを決めていた。


誰も知らない。

彼の気持ちを。

考えをどうしてアタシに話してくれたんだろう?

なんでアタシなんだろう?


彼は。

「自分に対してこんなに真っすぐに接してくれて。
 言葉、一言一句が。
 こんなにもオレに影響を与えてくれるお前に話すのは。
 当然のことだと思うけど。」

って言ってくれた。


アタシたちは。

数時間にもなったこの電話で。

たくさんの隙間を埋めて。

たくさんの時間を埋めて。

離れてしまうけど。

何も変わらない何かを感じ。

前に進むことも。

後ろに下がることもなく。

ただ。

お互いの存在を必要とし。

認めあえた。

お互いの少ない言葉を理解して。

受け止められた。


次に会えるのは。

いつになるのかわからないのに。

何も求めず。

関係を。

categorizeも。

labelもつけない。


アタシ達は。

また明日会社で会うかのように。

「おやすみ」って。

電話を切った。