事が動いたのは突然でした。
ある昼のこと、夫と私が義母の作ったWhatsappの新しいグループに招待されたのです。
私たちの他に義父、三男、妹が入っていました。
グループ名は『結婚式への準備』
ん?誰が?
続けて義母からのメッセージがグループに入りました。
『とても喜ばしいニュースが入ってきたね!でもとにかく私たちには準備の時間があまりないから急がないと!ルイーザと次男の特別な門出を祝福するためにも、みんなでプレゼントや、式当日にサプライズを考えたいと思うんだけど、どう?』
顔を見合わせる夫と私
私「え、あの2人結婚するの?」
夫「いや、知らない・・・するみたいだね・・・」
グループに返信する夫
夫『結婚するの知らなかったけれど、おめでたいね!式はいつなんだろう?もちろんいいアイデアを出し合おう!』
三男からの返信
三男「僕も知らなかった。笑 まずは早めに日程がわかれば、こちらも調整しやすいんだけど・・・笑」
妹からの返信
『私にも直接報告はまだないよ。笑』
義母からの返信
義母『まだみんなに連絡してなかったんだ・・・でも式は10日後って言ってたから準備も急がないといけないのよね・・・』
夫『10日後!?急だね・・・!仕事休めるかな・・・とりあえず僕たちは招待が来るのを待つよ。笑』
三男『僕もそうする。笑』
夫と私の会話↓
夫「10日後って・・・!ものすごい急過ぎない?もしそうならなんとか休みをとらないといけないけど・・・」
私「そうだね・・・でもとりあえずは次男からの連絡を待とう」
翌日、次男から夫に電話がかかってきました。
次男「実はルイーゼと結婚する事になったんだ!再来週の◯月○日の14時に戸籍役場の予約が取れたから、その時間に式をあげることになって。急だけど来れるなら来てくれたら嬉しいな。もちろん奥さんと息子くんもね!」
夫「おめでとう!再来週とはずいぶん早い日時に予約が取れたんだね!仕事の調整できるか見てみるけど、なんとかするよ。それにしても、どうしてこんな急に?」
次男「うん、いつかは籍を入れようとは思っていたんだけど、伸ばし伸ばしになっていて・・・でもやっぱり籍を入れておいた方が税金とか抑えられるし何かといいだろうって話になってさ。それで戸籍役場に聞きに行ったら、偶然再来週のその日の予約がキャンセルになったらしくて空いてたんだ。その日じゃなかったら4ヶ月先と言われて。その場で予約を取ったんだよ」
夫「そうかそうか、じゃあこれから準備でバタバタだね。」
次男「そうだね、まあでも、ほぼ身内だけしか呼ばない予定だし・・・子供もいるしね。式の後はウチのカフェで集まって食事したらいいかなって思ってるから、それなら準備もしやすいし。でも婚姻届のための書類を準備しなくちゃ。」
夫「確かに自分が店長だもんね。うん、出生届とかね、早めに取り寄せないとね。分かった、楽しみにしてるよ」
こちらでは基本的には結婚式=住民票を置く町の戸籍役場の婚礼ホールで婚姻届へのサインをして提出し、婚姻が承認される場の事を指します。
ただし、住民票以外の所でも予約が取れればそこでもできるらしいです。
町によってこの戸籍役場の婚礼ホールも様々なので、素敵な婚礼ホールがあって人気の戸籍役場はなかなか予約がとれないとも聞きました。
この婚姻承認の場に、家族や友人も参加する事ができます。
その後、場所をレストランなどに変えて食事会(披露宴)や二次会などを行うことが多いです。
夫「仕事はなんとかなりそう。確かに再来週なら急いでプレゼントとか何かお祝いを考えないとね」
私「そうだね。私たちの時も、サプライズでフラワーシャワーとか、風船とか用意してくれてたもんね。嬉しかった。」
夫「あの二人の場合は、サプライズより事前に聞いた方がいい気もするけど」
私「・・・そうだね・・・なんか機嫌損ねたら大変だしね」
結婚へのお祝いは現金より、プレゼントが一般的です。
夫と私の場合は、事前に欲しいものを聞いてくれ、こちらが欲しいものの候補を挙げて、それらをもらいました。
友人からもプレゼントをもらいました。嬉しかったです。
式の後にフラワーシャワーを用意してくれたり、飛ばす用の風船を用意してくれたのも家族でしたし、食事会の時にお祝いの言葉、ゲームなどを用意してくれたのも家族でした。
こんなに時間がなければ義母が早く準備しなくちゃと思うのも無理ないな・・・と思っていた翌日。
『結婚式への準備』グループが削除されました。
それに気づいた私。夫に聞きました。
私「あの結婚式への準備のグループ消えてるよ。お義母さんが消したみたい。何かあったのかな。」
夫「本当だ・・・ちょっと聞いてみるよ」
夫、義母に電話しました。
夫「次男の結婚式準備用のグループ消したみたいだけど・・・なんかあった?」
義母「私・・・もう嫌になっちゃった・・・」
夫「どうしたの?」
義母「結婚の連絡を受けて、家族でお祝いをしたいと考えてね。ルイーゼのお母さんや叔父さんのところに行って相談したりしてたの。あとは、グループを作ってこちらでも準備に動いてたわけ。私のお父さんお母さんや妹にも伝えたの。でも知っての通り、ウチの家族の方はまだ結婚の報告さえも受けていなかった。式まであと10日を切った時点で。」
夫「そうだね、でもその翌日に次男から電話があったよ。」
義母「そう・・・うちのお父さんお母さん、妹は未だに連絡を受けてないわ。もし来るなら遠いから泊まりになるし、宿も取らないといけないのに・・・妹は自分の診療所があるからこんなにギリギリじゃあ休めないから出席は難しいだろうと言ってたし」
義母の両親は遠くに住んではいるものの健在で、よく車で孫やひ孫に会いに来て、夫兄弟とも昔から良好な関係でした。
夫「そうなんだ。グループを消したのはそれが理由?」
義母「ううん、今日次男から電話があって。一言目に、『勝手に家族に伝えたんだね。自分たちの口から報告したかったのに』って言われたの。それを言われた時、なんだかこれまでのこととか、結婚の報告を受けてから色々と動いていたのが全部虚しく思えて。『じゃあもう自分たちで言ったらいいよ』って電話を切った。」
夫「次男から結婚の報告を受けた時、『結婚の事はまだ誰にも言わないで』って言われたの?」
義母「言われてない。そう言われてたらもちろん言ってないよ。でもなんだか・・・今回も空回りして。ひどく疲れたの。私はもう手や口を出さない事にするわ。」
夫「・・・また次男とも話してみとくよ」
そして数日後・・・
次男から夫に電話がかかってきました。
次男との長電話を終えた夫
夫「次男とルイーゼ、誰も招待せずに自分たちだけで結婚式するって。」
私「え?家族も?何があったの?」
夫「うん・・・僕のおじいちゃんがルイーゼに怒ったらしい・・・」
夫からの話はこうでした。
義母の両親、つまり夫の祖父母を結婚式に招待するため、ルイーゼが彼らに電話をしたそうです。電話に出たのは義母の父。
『結婚式に招待したいと思って電話したの。』と言うルイーゼに、義母からこれまで色々と話を聞いていた義母の父は怒りを抑えられなかったそうです。
義母の父「あのね。今何日だと思っている?君たちの式までに一週間しかない。どうしてもう少し早く教えてくれないのかな?」
ルイーゼ「・・・ちょっとバタバタしていて。」
義母の父「・・・バタバタしていて・・・ね。こんなことは言いたくないけれど、君の義母が君たちの結婚式の日取りを教えてくれていたから、その日は空けておくことができた。でも君たちはそのことで義母を責めたそうじゃない。これまでも君たち、いやはっきり言えば、君の義母へ対する今までの行いを僕は受け入れることができなかった。もっと義母への態度を改めるべきだよ!」
ルイーゼ「・・・」
ルイーゼは電話を会話の途中で切って、泣きながら次男に訴えたそうです。
話を聞いた次男は怒り、誰も招待しないと決めた・・・と。
私「おじいちゃん・・・言っちゃったのね」
これまでルイーゼには直接誰も何も強く言ってこなかったけれど、
まさか温厚な義母の父が言うとは。
夫「うん。なにも結婚式控えてるこのタイミングでって思うけど、溜まってたんだろうね。次男が言うにはまた時間を空けて来年にでも披露宴をするつもりだから、その時に家族や友人を招待するって」
私「来年に披露宴?・・・いやーしないでしょう」
夫「なんで?するよきっと、披露宴」
私「いやー・・・あの二人よ?ここでこじれたのもあるし、私はしないと思う。」
結局、私のこの予想は当たってしまいました。
こうして次男とルイーゼは二人で式を挙げて、その写真を夫に送ってきました。夫は電話でお祝いを言いました。
数日後、義母が夫に電話が。
義母「あのね、次男たち無事に結婚したでしょう?電話でお祝い言いたかったんだけど出なくって、メールしても返事ないの。何かあなたたちのところには連絡きた?」
夫「うん、電話でも話したし、結婚式の写真を送ってもくれた。」
義母「そう・・・元夫も連絡はとったって言ってたし、私と私の両親が避けられてるのね。私の両親も電話したけれど出なかったって言ってる。分かった、もう少し様子を見るわ。」
結局ここから、義母の連絡は完全に無視されることになります。
義母の両親もルイーゼと次男と連絡が取れなくなりました。
一ヶ月ほど経って、義母に会った時。
義母「あの後、電話出てくれないからメールで結婚式のことを私の家族に言ってしまったこと、謝ったんだけど、それにも全く連絡がなくて・・・ルイーゼも連絡取れないの。」
夫「そうか・・・一度僕が次男と話してみようか?」
義母「・・・うん、お願い」
そうして夫は次男と会って話すことに。
帰ってきた夫は疲れていました。
夫「なんか・・・よくわかんないことになってた・・・お母さんに言わないとだけど・・・ちょっとどう言おうかな・・・」
私「どうしたの?勝手に結婚式のこと言われたのがそんなにダメだった?」
夫「次男が言うには、問題の根本はそこじゃないらしい。」
私「ん?どういうこと?」
夫と次男の会話はこのような内容だったそうです。
夫「お母さんの連絡返してないって?どうしたの?」
次男「まず・・・おじいちゃん(義母の父)は有りえないって思っている。ルイーゼを傷つけること言って。」
夫「うん、タイミングはよくなかったね。でもお母さんは?結婚のことをみんなに言われたのが原因?」
次男「決定打はそうだけど、それだけじゃない。これまで僕は、自分がどうしたいかじゃなくて、親がいいと思うように自分の人生を進めてきたって思ってるんだ。そして昔から、自分は兄弟の中で一番親に軽んじられているとも感じていた。自分の意見は取り合ってもらえないって。今回結婚式の件についても、そう。僕は電話でお母さんに『喜んでくれるのは嬉しいけれど、他の家族への結婚報告は自分たちの口から言いたかった』って言ったんだ。それは僕にとっては勇気のいることだった。それでその後に、これまで思ってきたことをお母さんに続けて言おうとした。そしたらその前に『じゃあ自分たちで言ったら?』って電話を一方的に切られた。その時に、もうダメだって思ったんだよ。」
夫「・・・どんな時に自分が軽んじられているって思ってたの?」
次男「具体的には難しいけど、例えばスクーター」
夫「スクーター?」
次男「ほら、僕が10代の頃に部品から自分で組み立てたスクーターがあったじゃない?あれを数年後に三男が乗ってたでしょ?僕にとってはとても大切なものだったんだ。でもそれを三男に使わせた親にショックを受けた。」
夫「まあ三男は確かに乗ってたけど・・・でもそれならなんでお父さんとは連絡とってるの?スクーターを使わせたのはお父さんも同じじゃない?」
次男「お父さんはいつも仕事で家にいなかったから、決定をしていたのは主にお母さんだと思う。」
夫「それをお母さんに直接ぶつけてみるのはどう?」
次男「お母さんを傷つけずに言うことは難しい。お母さんを傷つけたいとは思っていない。だから今は距離を置きたい。」
夫「そうか・・・」
夫から私
夫「こんな感じだったんだ。スクーターの件は正直・・・僕には意味が分からなかった。確かに組み立てたのは次男だけど、その材料やらなんやらのお金を支払ったのは全部お父さん。だから次男のものってわけじゃない。うちの家族は使わなくなったものを兄弟間で回すのは普通だったんだ。次男だって僕の古い携帯やパソコンをお下がりで使ったりしていたし、逆だってある。今だって次男と三男は一緒に車を使ったりしてる。」
私「うん・・・これまではルイーゼと義母の関係の問題と思っていたのに、ここにきてまさかの次男が義母に不満を持っていたとは・・・」
夫「僕も驚いた。義両親が離婚した時、次男は義母にとても寄り添っていたんだ。離婚の原因を作った義父に怒っていたし。」
私「今はお父さんに経済的支援をだいぶしてもらってるからね。お父さんを避けることはないでしょう」
夫「そうだとしたら、ありえないって思うけどね。お金か、って。」
私「実際義父の金銭的サポートがないと次男家族は困るでしょう。でも義母がかわいそうだね。私たちの目からみたら、今まで散々次男家族お世話してきたのに、こんな完全無視・・・孫にも会えないじゃん」
夫「うん・・・ほとぼりが冷めるのを待つしかないと思う・・・」
私「・・・そうだね、今何か動いても何も変わらなさそうだしね。」
夫から話を聞いた義母はとても驚いていました。
義母「あの子は昔から繊細だったから、兄弟の中でも特に一番気にしてきたと私は自負できるのに、そんな風に思ってたなんて。彼の進路に関しても反対したことは、私はなかったと思ってたんだけど・・・はあ・・・結婚式のことだけを怒っているのかと思ってのに・・・これまでルイーゼとも色々あって上手くいかなかったのが積もりに積もってはいたけど、まさか次男とこんな風になるなんて思ってもみなかったわ。」
ルイーゼはというと、
『これは次男と義母の問題だから、私は関係ない。私が次男との関係を保っていくためにも、私はそちらの家族の問題に首を突っ込む気はない』
と、間に入ることはありませんでした。
私からしたら、いや、結婚式に関してはアナタも当事者でしょう!とは思いましたが、私も部外者であり、見守ることしかできませんでした。
義母はずっと連絡をおとなしく待つ・・・タイプではなく。
折を見ては連絡をし、なんとか関係を戻すキッカケをつかもうとしていました。
しかし、完全に無視され続けていました。
謝る場ももたせてもらえず、孫にも会えず、義母は打ちひしがれていました。
見兼ねた三男や妹も、次男とそれぞれ話すも、結果は同じ。
次男は「今は、人間関係だけでなく、自分に必要がないと思うものを全て排除してるんだ。」と言っていたそうです。
つまり、義母や義母の両親との関係は、自分には必要ない、と。
この時次男はカフェの雇われ店長として働いていましたが、その忙しさと難しさから精神的にも追い詰められていたようです。
もともと繊細でこだわりが強く、私の中では研究者タイプの次男。
人の上に立ち、物事の決定を下すことは向いていないようで、疲れ切っていました。
義父は次男の様子を時々見に行っては義母や私たちに報告をしてきました。
義父「今、カフェの経営が上手くいってなくて大変みたいだ。あまり刺激を与えないほうがいいし、しっかり見守って行ってあげないといけない。」
義母はそれでも、孫の誕生日やクリスマスにはプレゼントを送っていました。
もちろん返事やお礼は全くなく・・・
義母「どうしてこんなことになっちゃったのかな。孫に会いたい」
と、ぼやく義母に私は何も言ってあげることができませんでした。
義母の気持ちは痛いほど分かる。
あれだけ孫と仲がよかったのに、突然会えなくなった悲しみはどれほどか。
でも、次男夫婦がこれだけ頑なに連絡を取りたくないと思っている以上、どうしようもなく、そっとしておく他ないとも思っていました。
でも義母は『この状況をとても受け入れることはできない』『話し合いたい』『なんとかしたい』と会うたびに言っていました。
そして、次男家族との関係を修復したいと願っていたのは義母だけではありませんでした。