住職は静かに言いました。

 

「許せない気持ちがあるのはわかった。

だが、あんたがここにおるのは

そのお父さんがおったから今がある。

あんたがこの世に誕生したのは

たくさんのご先祖様がおってや。

お父さんがおらんかったらこの世にあんたはおらん。

憎みたい気持ちもわかる。

だが、憎しみからはなんも生まれん。

憎しみに時間を割くより

前を向いて、自分をこの世に送り出してくれた

そのご先祖様に感謝するんや。

すぐにできんでもいい。

いいか、憎しみからはなんも生まれん。」

 

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彼は体を震わせて泣いていました。

 

「父を許せん気持ちでおってもいいですか。

いつか、父を許せる、そう思って歩いていいですか?

そんな気持ちでお墓に行ってもいいですか?」

 

住職は

「ほんでいい、ほんでいい。

自分に素直になることや。

いいか、憎しみにあろごうてもなんも生まれん」

 

「頑固になっとると、病気も頑固になるぞ。

あんたの気持ちと一緒になるぞ。」

 

彼は帰りに

「やっぱ、来てよかった。

紹介してくれてありがとう。」

そう言っていましたが

それは、彼がまだまだ生きていたいという

心と身体の叫びというか、お知らせだったんだと思います。

 

彼は腫瘍はあるものの進行が遅くなり

いまは元気ですニコニコ

彼が元気で笑顔で過ごせることを

いつも、心から祈っています。