以下は、私が講演会で話した体験談です。
持ち時間が決まっていた為、少し短縮して話したので、ちょっとだけ付け加えて元の状態に戻しました。
スライドにまとめた物を映しながら話した部分は、注釈を入れました。
また、途中写真が出てくるので、その部分にはその写真の説明を入れました。
atopic公式ブログでも同じものがアップされると思います。
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私は、今から3年前、アトピーの治療で、30年程度使っていたステロイドと、治験の頃から13~14年使っていたプロトピックを止めました 。
それらの薬が全く効かなくなったからです。
大阪阪南中央病院に入院し、佐藤先生の元で、「ステロイドとプロトピックを抜き、本来の治癒力を取り戻す治療である脱ステロイド、脱プロトピック」を行い、現在に至っています。
今は、顔にも体にも、アトピーに必須とされている保湿剤、化粧水等含め、何も塗っていません。
それは、佐藤先生の脱保湿という考えに出会ったからです。
薬を止めたにも関わらず、何も塗らずにいられるのなら、そもそも軽症だったのだろうと思われるかもしれませんが、間違いなく私の皮膚炎は重症の類でした。
ステロイド依存と共に、保湿依存を起こしていたと思われる私の皮膚には、佐藤先生の「脱ステと脱保湿を同時に行うという治療」が、本当に効果的だったのです。
実は、薬が効かなくなるのも今回が初めてではありませんでした。
【アトピー歴】
幼少の頃 は、乳児湿疹や小児喘息で、小児科には頻繁に通っていました。
当時、ステロイドを使っていたかどうかは分かりませんが、フルコートという軟膏が家にあったのは覚えています。
その後、10代までは、弱いステロイドを基本に使用し、それ程酷い状態ではありませんでした。
そして、20代から30代ですが、ここから様子がおかしくなってきます。
私は、過去に2度薬が効かなくなり、脱ステしていますが、それがどちらも20代です。
スライドの通りですが、どちらも途中で断念して大学病院に入院し、ステロイド、プロトピック治療に戻っています。
※注(スライドより一部抜粋)
1度目 脱ステ(約4ケ月・食事制限と保湿)
→脱ステ断念 大学病院入院(プロトピック治験、内服ステロイド、他)
2度目 脱ステ・脱プロ(約8ケ月・ホメオパシーと保湿)
→脱ステ断念 大学病院入院(内服ステロイド他)
標準治療時の常備薬 プロトピック+リンデロンVG+マイザー
(他アンテベート、デルモベート、パンデル、ネリゾナ、ケナコルト筋肉注射等併用)
【脱ステのきっかけ】
二度目の大学病院への入院の後は、顔にも体にもプロトピックを塗るようになっていました。
薬を抜いた後なので、直後は大変よく効きます。
もちろん、大学病院の指導通りに忠実に塗りました。
プロトピックは両手で温め、伸ばして、顔に体に、満遍なく塗ります。
体の酷いところは、リンデロンVGやマイザーを手の平で伸ばして重ねて付けます。
それでも、やっぱり訪れました。
薬が効かなくなる時期です。
前回同様、ステロイド再開から数えて7年前後。
今から三年前の事です。
大学病院での入院生活から、「ステロイドの正しい使い方」と言われるものを学び、忠実に使っても、私の体のリミットは7年でした。
途中から大学病院に不信感を覚え、宮澤先生にお世話になりますが、大学病院指導の塗り方にどっぷりと漬かってしまった後は、「宮澤先生の指導する、薬を少しずつ減らしたり、指でポイント付けにしたりという使用方法」にはとても変えられませんでした。
薬が効かなくなった時の症状も、回数と年齢を重ねる度、想像以上に重くなりました。
10年以上もかけて遠回りでわかった結果は、私はステロイドが効かなくなるタイプだと言う事でした。
【入院生活】
この『7年ループ』を断ち切る覚悟で、大阪まで行って入院した訳ですが、入院して、本当に良かったと思うのは、脱ステ患者を数多く見てきた佐藤先生に毎日診てもらえた事と、周りに同じ経験をしている仲間がいた事です。
先生は、患部をしっかり見て、毎日消えては増える私の不安を一つ一つ解消してくれて、自分では気付かない程の小さな回復部分を、毎日見つけてくれました。
薬を止めた直後は、外見も崩れ、今までに無い痒みと激痛が繰り返し起こるので、簡単に心も折れそうになりますが、そんな時も必ず「ようなる」と言ってくれました。
そして、実際、その通りになりました。
また、入院仲間が薬無しで良くなるのを目の当たりにするのは大変支えになり、みんなが同じく、苦しみ、悩み、乗り越えているのだと心の底から感じる事、痒いのが当たり前で掻くのが悪い事では無いと自然に思えたのも良かった事だと思います。
【写真】
ここでいくつか写真でご説明します。
<手と腕>
薬が効かなくなった時です。
(全体に細かい丘疹がブツブツと重なり合い腫れている。)
<脚>
同じく、薬が効かなくなった時の写真です。
全体に、プロトピックと最強ランクのステロイドを、重ねてベタ塗りしています。
でも、効かずにどんどん腫れました。
(同じく全体に細かい丘疹が重なり合い、原形を留めない程腫れ、大きく皺が寄っている。膝は皺が幾重にも重なり変形している。)
<手>
ここから脱ステ写真です。
(亀裂が入り、重なり合った瘡蓋が剥がれるまで長い時間がかる。10ケ月経過で傷や大きな皺が無くなり、細かな皺の入った手となっている。)
<脚>
見づらいですが左下は内腿です。
(内腿には大きな亀裂が無数に入り蒸れや擦れで、瘡蓋化に時間がかかる。外側もえぐれた傷や亀裂が無数に入り、膝を曲げたり、しゃがんだりは出来ない。10ケ月経過で瘡蓋がほぼ無くなる。)
<次の写真の前に>
プロトピックは、最初の3年は『アトピー完治』かと錯覚する程よく効きましたが、その後、年々不安定になりました。
香料アレルギーも、化学物質過敏性も、手の平の頑固な水疱も、この頃から始まりました。
脱ステの際も、プロトピックを一日に何度も塗っていた部分は、滲出液がなかなか止まらず治りにくく、感染しやすい状態でした。
<胴体>
それがこの胴体です。
樽のように腫れて、全体から滲出液が流れました。
私は胴体が一番酷く、胸元から下腹部まで、こういう皮膚が無い状態でした。
(写真はウエスト部分。全面皮膚が無く、赤く腫れている。全体から滲出液が流れる。)
滲出液が止まり、腫れが引くと、右のように硬くシワシワの皮膚になり、何度も何度も脱皮します。
(腫れが引き大きな皺が寄る。皮膚が固く、灰色の厚い皮が貼っている。)
昔の脱ステでは、脱保湿と水分制限をしていなかったので、左の状態から抜け出せず断念して、大学病院で、ステロイドの内服をしました。
(5ケ月で大きな皺が無くなる。7ケ月で落屑が細かくなる。)
<脱ステ中の顔>
顔はプロトピック歴13~14年ですが、リバウンドが遅れてきたように感じます。
最初の3週間くらいはあまり変わらず、1ヶ月くらいしてからジクジクしてきました。
この写真では、特に腫れはありませんが、時々目元と頬っぺたが腫れたり引いたりしていました。
(写真は、額はジクジクとして瘡蓋が貼る。頬や口周辺は白い皮が貼る。1年経過で赤みも落屑もなくなり、乾燥も気にならなくなり、『普通』と言える皮膚になる。)
<感染した際の顔>
脱ステ直後のリバウンドは、先程の写真のように、それ程でもないのですが、二年後にMRSA感染した時は、この写真のように真っ赤に腫れて滲出液が流れました。
(赤く腫れ滲出液が流れ変形。頭部も滲出液が流れ出て髪が固まり、抜ける。)
最初のリバウンドと違ったのは、抗生剤を飲み、水分制限をした後は、1ヶ月くらいで右下の写真くらいの顔に戻った事です。
(全体に肌が黒くなるが、赤みが抜け、落屑が無くなり、ほぼ普通の肌となる。)
<水分制限>
左が、感染の為、抗生剤を服用し、感染が治まって滲出液が無くなり、脱皮している様子。
(全体的にパンパンに腫れ、赤みが強い。滲出液が急激に乾きだし、大きな落屑がバラバラと落ちる。)
そこから水分制限開始1週間後。
(赤みが引く。腫れが引き始め皺が寄る。大きめの傷が全体にバラバラ散らばっている。)
そして3週間後です。
(腫れが完全に引く。皺が無くなり、鳥肌状の肌に細かな傷が散らばっている状態。)
まず赤みが無くなり、シワや浮腫みもどんどん無くなっています。
回復がやけに早いのは、脱ステから2年経過している事と運動を併用している為でもありますが、私は、水分制限が本当に効くタイプのようです。
【現在】
3年が経過し、まだ痒みはありますし、掻くと傷になる事はありますが、ちょっとした傷は数日で治り、痒みの質が完全に変わりました。
薬を使っていた頃、もっと痒みが鋭くて辛かったのを思い出します。
今は、ごく普通の生活を楽しむ事が出来ています。
一生手放せないと思っていた薬が無くても大丈夫だとわかった事、薬が効かなくなる恐怖が無い事、毎晩寝る前の薬を塗るという日課が無くなった事、精神的にも本当に楽になりました。
リバウンドがある程度落ち着いてから思った事は、以前大学病院で言われた、「脱ステのリバウンドは元のアトピーの悪化である。薬が効かなくなるのではなく、アトピーの悪化だからステロイドで抑えないと駄目」という言葉ですが、それなら、どうして今ステロイドを使っていた時よりも痒くないのか、どうして何も塗っていないのに自然に赤みも傷も消えるのかということです。
当時は、「私は一生重症アトピーだ」と思い込んでいましたが、よく考えると薬の量が増える前はもっと綺麗な肌をしていました。
ここまで、脱ステをして本当に良かったというお話をしました。
ですが、実際、他の人にも勧められるかというと、私には簡単にはお勧めできません。
脱ステは、本当に過酷で、この世のものとは思えない、痒みと痛みが交互に襲ってきます。
先生や、周りの仲間に救われたとは言え、私も何度も狂いそうになり、ピークを超えるまでは不安も常にありました。
私は、様々な条件がそろった為、脱ステを決意しました。
薬が効いているなら、簡単に何の準備も無く、脱ステするのはお勧めしませんが、万一、私と同じように、突然薬が効かなくなったような場合、絶望する前に、こういった治療で、ここまで良くなった者がいたという事を思い出してほしいと思い、ここでお話させていただきました。
脱ステは数あるアトピー治療の中の一つですが、それで良くなった体験談の一つとしてお話を終わらせていただきます。