「先祖探偵」新川帆立 2022年

あらすじ
「あなたのご先祖様を調査いたします」
谷中銀座の裏通りで「先祖探偵」を営んでいる
邑楽風子(おうらふうこ)は
5才で母と生き別れ、父は不明。
訪れる依頼者たちの先祖調査で
次々と浮かび上がる謎…


先祖調査から依頼者のそれぞれのルーツにまつわる人々との繋がり。
深くて温かくて時に憤りや滑稽…
複雑な思いに心は揺れ動いた。
それでも、
今の自分がこうして世に出て生きているのは
何よりご先祖様がいてくれたからこそ。
こうして命を繋いでこれたからこそ。

「人は孤独なのが当たり前だと思っていた。
どんなに友達がいても家族がいても
一人同士が寄り添っているにすぎない、
そう考えていた。
だが、孤独であることは
どだい無理なのかもしれない
人の縁でしか人は生まれないし
生まれた瞬間から人の縁に組み込まれる。
それは、うっとうしい蜘蛛の巣のようでもあり
大海に投げ出された
救助ロープのようでもある。」

(抜粋)



私のアルバムには父との写真が一枚もない。
私が2才の頃、離婚した母。
物心ついて会ったのが中学3年。
不思議な感覚だった。
母から散々悪口を聞かされていた目の前の父は
身なりもきちんとして
想像していた父とは全然違っていた。
何を話せばいいのか、戸惑い固まる私。
「お父さん」とは呼べなかった。
高校進学のお祝いにと腕時計を買ってもらったが
嬉しいという感覚はなかった。

その後数年たって
再婚相手から知らせをもらったのは
父の訃報。
驚きとともに悲しさ?悔しさ?後悔?
複雑な思いを抱えながら葬儀に出席。
最後のお別れでも
やはり「お父さん」とは呼べなかった。
そのシーンだけ今でも鮮明に思い出す。

幼子を捨て
どんな思いで生きて死んでいったのか
知る術もない。
憎んで恨んで寂しい幼少期。


それでも、それでも…
今こうして"わたし"という人間を
世に出してくれた事に感謝している。


自分自身とリンクして
風子の心の描写に胸が詰まる思いだった。
本を読みながら
父への思いが沸々と沸いていた。
破天荒な父。家庭を捨てた父。
でも、もしかしたら、父の言い分もあったのでは
ないだろうか…

亡くなった父の年齢になった今。
今なら呼べるだろうか…


新川さんの本
どれも登場人物のキャラクターが
とっても面白い✨