第7章自立活動の個別の指導計画の作成と内容の取扱い
1個別の指導計画の作成
小学部・中学部学習指導要領(第7章第3の1)
第3個別の指導計画の作成と内容の取扱い
1自立活動の指導に当たっては、個々の児童又は生徒の障害の状態や特性及び心身の発達の段階等の的確な把握に基づき、指導すべき課題を明確にすることによって、指導目標及び指導内容を設定し、個別の指導計画を作成するものとする。その際、第2に示す内容の中からそれぞれに必要とする項目を選定し、それらを相互に関連付け、具体的に指導内容を設定するものとする。
個別の指導計画の作成の手順や様式は、それぞれの学校が児童生徒の障害の状態や発達の段階等を考慮し、指導上最も効果が上がるように考えるべきものである。したがって、ここでは、手順の一例を示すこととする。
①個々の児童生徒の実態(障害の状態、発達や経験の程度、生育歴等)を的確に把握する。
②実態把握に基づいて指導すべき課題を抽出し、課題相互の関連を整理する。
③個々の実態に即した指導目標を明確に設定する。
④小学部・中学部学習指導要領第7章第2の内容の中から、個々の指導目標を達成するために必要な項目を選定する。
⑤選定した項目を相互に関連付けて具体的な指導内容を設定する。
自立活動の内容は、人間としての基本的な行動を遂行するために必要な要素と障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するために必要な要素を挙げ、それらを分類・整理したものである。自立活動の六つの区分は、実際の指導を行う際の「指導内容のまとまり」を意味しているわけではないので、この点に留意する必要がある。
2個別の指導計画の作成手順
小学部・中学部学習指導要領(第7章第3の2)
2個別の指導計画の作成に当たっては、次の事項に配慮するものとする。
今回の改訂では、個別の指導計画を作成する上で、「幼児児童生徒の実態の把握」、「指導すべき課題の抽出」、「指導目標(ねらい)の設定」、「具体的な指導内容の設定」までの手続きと手続きの間をつなぐ要点を示すよう改めた。
個別の指導計画に基づく指導は、計画(Plan)-実践(Do)-評価(Check)-改善(Action)のサイクルで進められなければならない。
まず、幼児児童生徒の実態把握に基づいて指導すべき課題を抽出する。そして、これまでの学習の状況や将来の可能性を見通しながら、指導すべき課題の相互の関連を検討し、長期的及び短期的な観点から指導目標(ねらい)を設定した上で、具体的な指導内容を検討して計画が作成される。作成された個別の指導計画に基づいた実践の過程においては、常に幼児児童生徒の学習状況を評価し指導の改善を図ることが求められる。さらに、評価を踏まえて見直された計画により、幼児児童生徒にとってより適切な指導が展開されることになる。すなわち、評価を通して指導の改善が期待されるのである。
このように、個別の指導計画に基づく指導においては、計画(Plan)-実践(Do)-評価(Check)-改善(Action)のサイクル(以下「PDCAサイクル」という。)を確立し、適切な指導を進めていくことが極めて重要である。
(1)幼児児童生徒の実態把握
小学部・中学部学習指導要領(第7章第3の2の(1))
(1)個々の児童又は生徒について、障害の状態、発達や経験の程度、興味・関心、生活や学習環境などの実態を的確に把握すること。
幼児児童生徒の障害の状態は、一人一人異なっている。自立活動では、それぞれの障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服することを目標にしているので、必然的に一人一人の指導内容・方法も異なってくる。そのため、個々の幼児児童生徒について、障害の状態、発達や経験の程度、興味・関心、生活や学習環境などの的確な把握が求められている。ここに実態把握の目的があり、実態把握の内容やその範囲は自立活動の指導を行う観点から明確に整理する必要がある。
実態把握をする際に収集する情報の内容としては、病気等の有無や状態、生育歴、基本的な生活習慣、人やものとのかかわり、心理的な安定の状態、コミュニケーションの状態、対人関係や社会性の発達、身体機能、視機能、聴覚機能、知的発達や身体発育の状態、興味・関心、障害の理解に関すること、学習上の配慮事項や学力、特別な施設・設備や補助用具(機器を含む。)の必要性、進路、家庭や地域の環境等様々なことが考えられる。その際、幼児児童生徒が困難なことのみを観点にするのではなく、長所や得意としていることも把握することが大切である。
幼児児童生徒の実態把握の方法としては、観察法、面接法、検査法等の直接的な把握の方法が考えられるが、それぞれの方法の特徴を十分に踏まえながら目的に即した方法を用いることが大切である。幼児児童生徒の実態を的確に把握するに当たって、保護者等から生育歴や家庭生活の状況を聞いたり、保護者の教育に対する考えを捉えたりすることは欠くことができないことである。保護者から話を聞く際には、その心情に配慮し共感的な態度で接することが大切である。
また、教育的立場からの実態把握ばかりでなく、心理学的な立場、医学的な立場からの情報を収集したり、幼児児童生徒が支援を受けている福祉施設等からの情報を収集したりして実態把握を行うことも重要である。
しかしながら、幼児児童生徒の実態把握や情報収集が多岐にわたって十分に行われていないと、個別の指導計画が作成できないというわけではない。その時点で把握できた実態や収集できた情報に基づいて個別の指導計画を作成し、それに基づく指導を通して、実態把握を更に深化させ、個別の指導計画を修正していくという柔軟な対応も大切である。その際、当該学年よりも前の各学年までの個別の指導計画を参考にして、これまで何を目標に学んできたのか、学んで身に付いたこと、学んで身に付きつつあること、まだ学んでいないことなど、その学習の記録を引き継いで指導すべき課題の整理に生かしていく視点も大切である。また、把握した実態から今指導すべき課題を整理する視点としては、数年後の幼児児童生徒の学びの場や生活の場などを想定し、そこで必要とされる力や目指す姿を明らかにすることも必要である。
なお、このようにして得られた情報は、実際の指導に生かされることが大切であり、個別の指導計画を作成するために必要な範囲に限定するとともに、個人情報の保護の観点から、その情報の適切な管理についても十分留意する必要がある。
(2)指導目標(ねらい)の設定
小学部・中学部学習指導要領(第7章第3の2の(2))
(2)児童又は生徒の実態把握に基づいて得られた指導すべき課題相互の関連を検討すること。その際、これまでの学習状況や将来の可能性を見通しながら、長期的及び短期的な観点から指導目標を設定し、それらを達成するために必要な指導内容を段階的に取り上げること。
ア指導すべき課題相互の関連の検討
自立活動の個別の指導計画を作成する上で、最も重要な点が、実態把握から指導目標(ねらい)を設定するまでのプロセスにある。学習指導要領等には、自立活動について、教科のように目標の系統性は示されていない。そのため、幼児児童生徒一人一人の自立活動における指導の継続性を確保するには、個別の指導計画を確実に引き継いでいく必要がある。つまり、個別の指導計画を通して、前年度までの指導担当者が、その幼児児童生徒の実態をどのように捉え、なぜその指導目標(ねらい)を設定することにしたのかといった、設定に至る考え方を指導担当者間で共有していくことで、指導の根拠を明らかにしやすくなると考えられる。このため今回の改訂においては、個別の指導計画の作成の手順の中に、実態把握から指導目標(ねらい)を設定する過程において、指導すべき課題を整理する手続きを導入し、指導目標(ねらい)を設定するに至る判断の根拠を記述して残すことについて新たに示した。
実態把握の情報を収束していく方法としては、演繹法、帰納法、因果法、時系列法等の情報を収束する技法が考えられるが、それぞれの方法の特徴を十分に踏まえながら目的に即した方法を用いることが大切である。
幼児児童生徒の実態把握から課題を焦点化していくに当たって、指導開始時点までの学習の状況から、幼児児童生徒の「できること」「もう少しでできること」「援助があればできること」「できないこと」などが明らかになる。これらのうちから、その年度の指導目標(ねらい)の設定に必要な課題に焦点を当て、中心となる課題を選定していく。そのため、何に着目して課題の焦点化を行うか、その視点を校内で整理し共有することが必要である。
イ指導目標(ねらい)の設定と目標達成に必要な項目の選定
指導目標(ねらい)の設定に当たっては、個々の幼児児童生徒の実態把握に基づいて整理・抽出された指導すべき課題を踏まえ、幼稚部、小学部、中学部、高等部の各部の在学期間、学年等の長期的な観点に立った指導目標(ねらい)とともに、当面の短期的な観点に立った指導目標(ねらい)を定めることが、自立活動の指導の効果を高めるために必要である。
この場合、個々の幼児児童生徒の障害の状態等は変化し得るものであるので、特に長期の指導目標(ねらい)については、今後の見通しを予測しながら、指導すべき課題を再整理し、指導目標(ねらい)を適切に変更し得るような弾力的な対応が必要である。
長期的な観点に立った指導目標(ねらい)を達成するためには、個々の幼児児童生徒の実態に即して必要な指導内容を段階的、系統的に取り上げることが大切である。すなわち、段階的に短期の指導目標(ねらい)が達成され、それがやがて長期の指導目標(ねらい)の達成につながるという展望が必要である。それらの展望を描く際には、アで整理した指導すべき課題相互の関連を参考に、第2に示す「内容」の中から必要な項目を選定すると分かりやすい。
このように、具体的な指導目標(ねらい)を設定し、それを達成するために必要な項目を選定するに当たっては、その幼児児童生徒の現在の状態に着目するだけではなく、その生育の過程の中で、現在の状態に至った原因や背景を明らかにし、障害による学習上又は生活上の困難の改善・克服を図るようにすることも大切である。
また、その幼児児童生徒の将来の可能性を広い視野から見通した上で、現在の発達の段階において育成すべき具体的な指導目標(ねらい)とそれを達成するために必要な項目を選定し、重点的に指導することが大切である。この場合、その幼児児童生徒の将来の可能性を限定的に捉えるのではなく、技術革新や社会の発展を考慮し、長期的な観点から考えることが重要である。
なお、幼稚部、小学部、中学部、高等部と継続的に指導していく過程で指導内容の重複や欠落がないように、個々の幼児児童生徒の個別の指導計画に基づく指導記録を個人ファイルなどで適切に管理し、それまでの指導を生かすようにすることが重要である。
(3)具体的な指導内容の設定
小学部・中学部学習指導要領(第7章第3の2の(3))
(3)具体的な指導内容を設定する際には、以下の点を考慮すること。
ア主体的に取り組む指導内容
小学部・中学部学習指導要領(第7章第3の2の(3)のア)
ア児童又は生徒が、興味をもって主体的に取り組み、成就感を味わうとともに自己を肯定的に捉えることができるような指導内容を取り上げること。
小学部、中学部においては、自立活動の指導の効果を高めるため、児童生徒が興味をもって主体的に活動し、しかも成就感を味わうことができるようにする必要がある。
児童生徒が意欲的、主体的に自分の学習課題に取り組めるようにするには、児童生徒が自分の課題、つまり、具体化された学習課題を認識し、自覚できるようにすることが大切である。自分が何のために、何をするのかを理解し、学習への意欲がわいてくるような指導内容を取り上げることが大切である。したがって、児童生徒が自分のなすべきことを意識し、努力の結果、課題が達成できたという成就感を味わうことができるようにするためには、次のような点に配慮しながら指導内容を設定することが必要である。
(ア)児童生徒にとって解決可能で、取り組みやすい指導内容にすること。児童生徒にとって余りに課題が容易すぎても進歩は望めないし、難しすぎても意欲を喪失させてしまうことになるので、この点に留意することが大切である。
(イ)児童生徒が興味・関心をもって取り組めるような指導内容にすること。児童生徒が自ら進んで意欲的に取り組もうとする自発性を促すために、例えば、指導の段階を細分化する、興味を引くような教材・教具を準備する、称賛や激励を適宜行うなどの動機付けが行われることが多いが、こうした外的な動機付けから始めて、次第に主体性や意欲を高めるようにすることが重要である。
(ウ)児童生徒が、目標を自覚し、意欲的に取り組んだことが成功に結び付いたということを実感できる指導内容にすること。児童生徒が成就感を味わうためには、自分の課題達成の度合いを理解できるようにする必要がある。そのためには、いわゆる自己評価ができるように課題を細分化し、達成度を分かりやすくすることが大切である。また、わずかな進歩であっても、褒めたり励ましたりすることを忘れてはならない。
「自己を肯定的に捉える」感情は、自分にもよいところがあると認める感情であり、自己肯定感や自己有能感と言われることもある。自己を肯定的に捉えることができるような指導は、幼稚部の各領域や小学部、中学部の各教科等の指導も含め学校の教育活動全体を通して行われなければならないが、自立活動の指導においては特に重視されなければならないことである。障害のある幼児児童生徒の自己に対するイメージは、障害をどのように捉えるかということに大きく影響を受ける。ときには、障害のある自分をひどく他者から劣っていると思うこともあり、自分を肯定的に捉えられないことも少なくない。
自立活動の指導は、障害による学習上又は生活上の困難と向き合い、その困難の改善・克服を目指す指導であるから、どのようなことを課題とし、どのように学習活動に取り組み、その結果をどのように受け止めるかということは、自己に対するイメージの形成に深くかかわることになる。自己を肯定的に捉える感情は、一般に、自分のよいところを認められる段階から、自分のよいところも悪いところも含めて自分であることを肯定できる段階に移っていく。したがって、幼児児童生徒が自己に対してどのような感情を抱いているのかを把握し、成長に即して自己を肯定的に捉える感情を高められるような指導内容を検討することが大切である。
また、児童生徒の意見を取り入れながら自立活動の学習課題を設定することも、障害に対する認識や自分の得意な面及び不得意な面などに対する認識を促すことになり、自己を肯定的に捉える感情を高めることにつながる。
さらに、同じ障害のある年長者がモデルとなって自己を肯定的に捉えていくきっかけになることもあるので、特に中学部では先輩の話を聞く機会を設けることも有効な方法の一つと考えられる。
一方、自己を客観的に捉えられるようにすることも大切である。自己を肯定的に捉える感情は、自分のよいところも悪いところも含めて自分であることを肯定できるものであるが、同時に自己を他者との比較や何らかの基準によって客観的に捉えられるようにすることも必要であり、発達の段階に応じて適切に指導することが求められる。
イ改善・克服の意欲を喚起する指導内容
小学部・中学部学習指導要領(第7章第3の2の(3)のイ)
イ児童又は生徒が、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服しようとする意欲を高めることができるような指導内容を重点的に取り上げること。
障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服しようとすることは、自立活動の目標にも示されている重要な観点である。このため、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服しようとする意欲を高めることが大切であり、具体的な指導内容の設定に当たっても、その意欲を喚起できるようにすることに重点を置く必要がある。この場合、単なる座学や抽象的な知識・理解によって育てるだけではなく、実際的な経験等の具体的な学習活動を通して指導することが効果的である。
ウ発達の進んでいる側面を更に伸ばすような指導内容
小学部・中学部学習指導要領(第7章第3の2の(3)のウ)
ウ個々の児童又は生徒が、発達の遅れている側面を補うために、発達の進んでいる側面を更に伸ばすような指導内容を取り上げること。
具体的な指導内容の設定に当たっては、幼児児童生徒の発達の遅れている側面を補うために発達の進んでいる側面を更に伸ばすような指導内容を設定することが大切である。「障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服する」というと、一般に発達の遅れている側面や改善の必要な障害の状態に着目しがちである。しかしながら、幼児児童生徒の発達の遅れた側面やできないことのみにとらわれて、これを伸ばしたり、改善したりすることのみを指導目標(ねらい)にすると、幼児児童生徒は苦手なことやつらいことを繰り返し行うことになり、効果が現れるのに必要以上の時間を要したり、方法によっては幼児児童生徒の活動や学習への意欲を低下させ、劣等感をもたせたりすることも考えられる。
人間の発達は、諸々の側面が有機的に関連し合っており、発達の進んでいる側面を更に促進させることによって、幼児児童生徒が自信をもって活動や学習に取り組むなど、意欲を喚起し、遅れている面の伸長や改善に有効に作用することも少なくない。したがって、具体的な指導内容の設定に際しては、個々の幼児児童生徒の発達の進んでいる側面にも着目し、個別の指導計画を作成することが大切である。
これは、幼児児童生徒の発達の遅れている側面や改善の必要な障害の状態に対して取り組まなくてよいということではなく、幼児児童生徒が自信をもって意欲的に取り組む態度を育成するとともに、少し努力すれば達成できそうな指導目標(ねらい)や指導内容の設定を行うなど、改善・克服のための取組も併せて必要だということである。常にPDCAサイクルを意識しながら、幼児児童生徒の学習の状況等を評価し、課題を改善していくことは、教師に求められる専門性の一つでもある。
エ自ら環境と関わり合う指導内容
幼稚部教育要領(第2章の3の(2)のウの(ウ))
(ウ)幼児が意欲的に感じ取ろうとしたり、気が付いたり、表現したりすることができるような指導内容を取り上げること。
オ自ら環境を整える指導内容
小学部・中学部学習指導要領(第7章第3の2の(3)のエ)
エ個々の児童又は生徒が、活動しやすいように自ら環境を整えたり、必要に応じて周囲の人に支援を求めたりすることができるような指導内容を計画的に取り上げること。
障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するためには、児童生徒が、困難を改善・克服するために必要となる知識・技能等を身に付けるとともに、活動しやすいように環境を整えることが重要である。このような観点は、これまでも必要とされてきたが、障害のある人々を取り巻く社会的状況の変化の中で、障害の状態を捉える上で環境要因が重視されていることや、周囲のサポートを得ながら自分らしく生きるという考え方が広がっていることを踏まえ、前回の改訂において明示したものである。
具体的には、弱視の児童生徒が読書をする場合、適切な明るさを確保するために照明等の準備をしたり、準備が一人でできない場合に他者への依頼の仕方を学んだりすることを指している。また、自閉症のある児童生徒が、不快に感じる音や光、雰囲気等を避けるために場所を移動したり、移動することを周囲の人に伝えたりすることを学習することもその例である。
環境を整えて活動しやすいようにすることは、児童生徒自身が行う場合と周囲の人に依頼してやってもらう場合が考えられる。自立活動は、自立を目指した主体的な活動であり、まず、児童生徒自ら環境に働き掛けられるような力をはぐくむことが大切である。児童生徒が自ら行おうとする活動について、適した場所の選択、不要なものの除去、明かりや音などの室内環境の調整、道具や補助用具の選択と配置などに気を付け、実際に身の回りの環境を整えることができるように段階的に指導する必要がある。
また、自分だけで活動しやすい環境がつくれない場合は、周囲の人に依頼をして環境を整えていくことを指導することが必要となる。この場合、単に依頼の仕方を教えるだけに終わってはならない。求める環境は、自分自身で判断しなければならないので、調整のためには再依頼をしなければならないこともあることなどを体験的に学習できるようにすることが必要である。さらに、他者に支援を依頼することを経験するだけでなく、その反対に他者からの依頼を受けて支援を行う経験をすることにより、依頼を受ける側の心情にも配慮できるように指導することが大切である。
カ自己選択・自己決定を促す指導内容
小学部・中学部学習指導要領(第7章第3の2の(3)のオ)
オ個々の児童又は生徒に対し、自己選択・自己決定する機会を設けることによって、思考・判断・表現する力を高めることができるような指導内容を取り上げること。
児童生徒の障害の状態や特性及び心身の発達の段階等により、指示を理解することが困難で行動できなかったり、聞こえないことから判断できなかったりすることがある。そのような経験を重ねていくと、自ら判断する力や聞く態度が育成されないばかりか、主体的に取り組もうという意欲も減退させることがある。
児童生徒が指導目標を自覚し、改善・克服するための方法等について、自ら選んだり、ものごとを決定して実行したりすることは、学びを深め、確実な習得を図ることにつながることにもなる。
キ自立活動を学ぶことの意義について考えさせるような指導内容
小学部・中学部学習指導要領(第7章第3の2の(3)のカ)
カ個々の児童又は生徒が、自立活動における学習の意味を将来の自立や社会参加に必要な資質・能力との関係において理解し、取り組めるような指導内容を取り上げること。
障害のある児童生徒が自立し、社会参加するには、各教科等で学ぶ知識や技能等の他に、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服する力を身に付けていく必要がある。そうした困難に対応する力を児童生徒が主体的に学べる機会が自立活動の指導である。
よって、自立活動での学習が、将来の自立や社会参加にどのように結び付いていくのか、児童生徒が自らその関係を理解して、学習に取り組むことができるように指導内容を取り上げていくことが必要である。
(4)評価
小学部・中学部学習指導要領(第7章第3の2の(4))
(4)児童又は生徒の学習状況や結果を適切に評価し、個別の指導計画や具体的な指導の改善に生かすよう努めること。
自立活動における幼児児童生徒の学習の評価は、実際の指導が個々の幼児児童生徒の指導目標(ねらい)に照らしてどのように行われ、幼児児童生徒がその指導目標(ねらい)の実現に向けてどのように変容しているかを明らかにするものである。また、幼児児童生徒がどのような点でつまずき、それを改善するためにどのような指導をしていけばよいかを明確にしようとするものでもある。
自立活動の指導は、教師が幼児児童生徒の実態を的確に把握した上で個別の指導計画を作成して行われるが、計画は当初の仮説に基づいて立てた見通しであり、幼児児童生徒にとって適切な計画であるかどうかは、実際の指導を通して明らかになるものである。したがって、幼児児童生徒の学習状況や指導の結果に基づいて、適宜修正を図らなければならない。
指導の結果や幼児児童生徒の学習状況を評価するに当たっては、指導目標(ねらい)を設定する段階において、幼児児童生徒の実態に即し、その到達状況を具体的に捉えておくことが重要である。
指導と評価は一体であると言われるように、評価は幼児児童生徒の学習評価であるとともに、教師の指導に対する評価でもある。教師には、評価を通して指導の改善が求められる。したがって、教師自身が自分の指導の在り方を見つめ、幼児児童生徒に対する適切な指導内容・方法の改善に結び付けることが求められる。
指導目標(ねらい)を達成するための学習は、一定期間にわたって行われるが、その間においても、幼児児童生徒が目標達成に近付いているか、また、教材・教具などに興味をもって取り組んでいるかなど、幼児児童生徒の学習状況を評価し、指導の改善に日ごろから取り組むことが重要である。こうした学習状況の評価に当たっては、教師間の協力の下で、適切な方法を活用して進めるとともに、多面的な判断ができるように、必要に応じて外部の専門家や保護者等と連携を図っていくことも考慮する必要がある。また、保護者には、学習状況や結果の評価について説明し、幼児児童生徒の成長の様子を確認してもらうとともに、学習で身に付けたことを家庭生活でも発揮できるよう協力を求めることが大切である。
評価は、幼児児童生徒にとっても、自らの学習状況や結果に気付き、自分を見つめ直すきっかけとなり、その後の学習への意欲や発達を促す意義がある。自立活動の指導においては、幼児児童生徒が、自分の障害と向き合うことが多くなる。障害のある自分を知り、受け止め、それによる困難を改善しようとする意欲をもつことが期待される。したがって、自立活動の時間においても、学習前、学習中あるいは学習後に、幼児児童生徒の実態に応じて、自己評価を取り入れることが大切である。その際、例えば、動画で撮影した指導の前と後の様子を本人に確認させることなどにより、自己や他者の変化に気付かせ、よりふさわしい応対の方法等について考えさせることが大切である。
3他領域・教科等との関連
小学部・中学部学習指導要領(第7章第3の2の(5))
(5)各教科、道徳科、外国語活動、総合的な学習の時間及び特別活動の指導と密接な関連を保つようにし、計画的、組織的に指導が行われるようにするものとする。
自立活動の個別の指導計画の作成に当たっては、小学部・中学部においては、各教科、道徳科、外国語活動、総合的な学習の時間及び特別活動と自立活動の指導内容との関連を図り、両者が補い合って、効果的な指導が行われるようにすることが大切である。
個別の指導計画を作成する際も、自立活動の時間における指導はもとより、学校の教育活動全体を視野に入れ、効果的に指導が行われるようにする必要がある。
なお、各教科、道徳科、外国語活動、総合的な学習の時間及び特別活動にはそれぞれ独自の目標があるので、各教科等における自立活動の指導に当たっては、それらの目標の達成を著しく損なったり、目標から逸脱したりすることのないよう留意しながら、自立活動の具体的な指導内容との関連を図るよう工夫するなど、計画的、組織的に指導が行われるようにする必要がある。
4指導方法の創意工夫
小学部・中学部学習指導要領(第7章第3の3)
3個々の児童又は生徒の実態に応じた具体的な指導方法を創意工夫し、意欲的な活動を促すようにするものとする。
自立活動の指導の効果を高めるためには、児童生徒が積極的な態度で意欲的な学習活動を展開することが必要である。このためには、個々の児童生徒の実態に応じた具体的な方法を創意工夫することが大切である。この場合、指導方法が、指導目標の達成に有効なものであるよう留意する必要がある。
ア児童生徒一人一人の実態に応じた指導方法
児童生徒の障害の状態や特性及び心身の発達の段階等は多様である。このため、個別の指導計画を立てることが不可欠であると同時に、指導方法も児童生徒一人一人に適したものでなければならない。したがって、特定の方法をすべての児童生徒に機械的に当てはめるのではなく、個々の児童生徒の実態に適合した方法を創意工夫することが必要となる。
イ意欲的な活動を促す指導方法
児童生徒の意欲的な活動を促すためには、児童生徒が興味や関心をもって主体的に取り組み、成就感を味わうことのできるような指導方法を工夫することが大切である。この場合、少なくとも、教師からの一方的な働き掛けに終始する方法や画一的な方法にならないよう留意する必要がある。個々の児童生徒の実態に応じて、指導目標が明確にされ、次いで具体的な指導内容が設定され、それらを組織して個別の指導計画が作成されるが、それに基づいた指導に当たっては、それらの指導内容にふさわしい指導方法を工夫する必要がある。
自立活動の指導に適用できると思われる方法又は方法の裏付けとなっている理論が幾つか想定される。それらには、例えば、心理療法、感覚訓練、動作の訓練、運動療法、理学療法、作業療法、言語治療等があるが、これらの理論・方法は、いずれも自立活動の指導という観点から成り立っているわけではない。これらについては、実際の臨床においてそれなりの効果があると評価されていても、それらは、それぞれの理論的な立場からの問題の把握及びその解決を追求しているものであることを忘れてはならない。したがって、その方法がどのように優れていたとしても、それをそのまま自立活動の指導に適用しようとすると、当然無理を生じることをあらかじめ知っておくことが必要である。
5自立活動を主とした指導
小学部・中学部学習指導要領(第7章第3の4)
4重複障害者のうち自立活動を主として指導を行うものについては、全人的な発達を促すために必要な基本的な指導内容を、個々の児童又は生徒の実態に応じて設定し、系統的な指導が展開できるようにするものとする。その際、個々の児童又は生徒の人間として調和のとれた育成を目指すように努めるものとする。
6教師の協力体制
小学部・中学部学習指導要領(第7章第3の5)
5自立活動の指導は、専門的な知識や技能を有する教師を中心として、全教師の協力の下に効果的に行われるようにするものとする。
自立活動の指導は、専門的な知識や技能を有する教師を中心として全教師の協力の下に一人一人の幼児児童生徒について個別の指導計画を作成し、実際の指導に当たることが必要である。ここでいう専門的な知識や技能を有する教師とは、特別支援学校の教師の免許状や自立活動を担当する教師の免許状を所有する者をはじめとして、様々な現職研修や自己研修等によって専門性を高め、校内で自立活動の指導的役割を果たしている教師を含めて広く捉えている。
自立活動の指導において中心となる教師は、学校における自立活動の指導の研修全体計画等の作成に際し、担任や専科の教師、養護教諭、栄養教諭等を含めた全教師の要としての役割を果たすことを意味している。
また、自立活動の指導は、幼児児童生徒の障害の状態によっては、かなり専門的な知識や技能を必要としているので、いずれの学校においても、自立活動の指導の中心となる教師は、それにふさわしい専門性を身に付けておくことが必要である。
7専門の医師等との連携協力
小学部・中学部学習指導要領(第7章第3の6)
6児童又は生徒の障害の状態等により、必要に応じて、専門の医師及びその他の専門家の指導・助言を求めるなどして、適切な指導ができるようにするものとする。
自立活動の個別の指導計画の作成や実際の指導に当たっては、専門の医師及びその他の専門家との連携協力を図り、適切な指導ができるようにする必要があるので、本項はこの点について示したものである。
このことは、専門の医師をはじめ、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理学や教育学の専門家等外部の各分野の専門家との連携協力をして、必要に応じて、指導・助言を求めたり、連絡を密にしたりすることなどを意味している。
幼児児童生徒の障害の状態や発達の段階等は多様であり、その実態の的確な把握に基づいた指導が必要とされ、ときには、教師以外の外部の専門家の指導・助言を得ることが必要な場合がある。
このような専門家からの指導・助言を得ることの必要性の有無を判断するのは、当然、自立活動の指導に当たる教師である。したがって、教師は日ごろから自立活動に関する専門的な知識や技能を幅広く身に付けておくとともに、関連のある専門家と連携のとれる体制を学校として整えておくことが大切である。
8個別の教育支援計画等の活用
小学部・中学部学習指導要領(第7章第3の7)
7自立活動の指導の成果が進学先等でも生かされるように、個別の教育支援計画等を活用して関係機関等との連携を図るものとする。
学習指導要領等の総則において、家庭及び地域や医療、福祉、保健、労働等の業務を行う関係機関が緊密な連携を図り、長期的な視点で幼児児童生徒への教育的支援を行うため「個別の教育支援計画」を作成することを示している(幼稚部教育要領第1章第6の3、小学部・中学部学習指導要領第1章第5節の1の(5)、幼稚園教育要領第1章総則の第5の1、小学校学習指導要領第1章総則第4の2の(1)のエ、中学校学習指導要領第1章総則第4の2の(1)のエ)。
障害のある幼児児童生徒の場合、就学先や進学先において、対人関係や環境の変化など、新たな学習上又は生活上の困難が生じたり、困難さの状況が変化したりする場合がある。そのため、個別の教育支援計画等により、本人、保護者を含め、専門の医師及びその他の専門家等との連携協力を図り、当該幼児児童生徒についての教育的ニーズや長期的展望に立った指導や支援の方針や方向性等を整理し、学校が自立活動の指導計画の作成に活用していくことが重要である。一方、卒業後、進学先や就労先等において、例えば、生徒の感覚や認知の特性への対応など、自立活動の指導の成果が進路先での支援に生かされるようにするためにも、個別の教育支援計画等を十分活用して情報を引き継ぐことが必要である。
各学校には、関係機関との連携を図るための個別の教育支援計画と、教育課程に基づく教育計画である個別の指導計画との関係を整理することが求められる。
自立活動の指導目標(ねらい)として、卒業後に必要とされる力をそのまま当てはめている例は、両者の関係が適切に整理できていない顕著な例である。
なお、進路先との連携に当たって、個人情報保護に十分留意しながら、連携の意図や引継ぐ内容等について保護者の理解を得ることが大切である。
そこで、今回の改訂では、自立活動の指導の成果が就学先や進学先等でも生か第7章されるように、個別の教育支援計画等を活用して連携を図ることを新たに示した。
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