先輩が助手席、私が運転で道と場所を身体で覚えた客先。
なので、店名も覚えていない。ましてや電話番号もしらない。
事務所には客先名簿は有るはず。
だが、純粋に配達だけの私には、途中でトラブった場合
事務所に連絡して応援を待つしかない。
サービスエリア外で携帯電話が広まっていないし、
そんなものを持つお金もない頃のお話。
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パンクした車をジャッキアップしてしまったので
車に乗って待つわけにもいかず
車を持っている友達に電話をかけてみた。
いない。
夕方なので、食事だったり遊びに行ったり。
他に手は無いか。
無い。
とりあえず。先輩が事務所に戻るのを待つ。
何度か事務所にかけてみる。
出ない、まだ戻っていない。
従業員は先輩一人なので、
配達に出ると誰も電話に出ない。
先輩の知り合いに伝言をお願いしてみようか。
一つだけ、店名を知っているところがあった。
先輩が昔、働いていたと言っていた店。
でも、そこから連絡が取れるものだろうか。
パンクしてから、30分ほど経った頃だろうか。
いや、もっとかな。
車が寄って来て、人が出てくる。
「どうしたの?」
先輩だった。
先輩:
「配達はまだね。こっちの車に移して。
その車は、後でとりに来るから。」
と、事情を理解して対応に移る。
先輩:
「助手席に乗って。」
一番最初に、先輩の運転で、凍りを配りに行った時以来の助手席。
そういえば、考えていなかったが。
怒られるかな?
先輩:
「あの車ね、よくパンクするの。心配しなくていいから。」
そうなのか。な。
20分程で繁華街地域に近づき
先輩:
「ルートは変えた?」
最初に教わった道順だと、開店の順番が合わなかったり
この時間に来て、と要望があり、少し変えていた。
先輩:
「じゃぁ、運転して。で、あそこと、あれとそこは、私が行くから。」
分担というより、うるさいところに謝りに行ってくれたのだろう。
たぶん一時間近く遅れたけど、お客様は優しかった。
「今日は飲みに来たのかい?
まだ終ってないんだろ。ほら、これ持って行きな。」
乾き物を渡される。
配達も最後の一つを残し完了。
最後にしているのは開店時間が一番遅いから。
早く行ってしまうと、玄関に氷を置いていくことになってしまう。
先輩から
それでもいいと、言われていたが余裕があれば最後にしていた。
先輩:
「あと一箇所か。この氷は・・・」
氷の種類で配達先の店がわかる。
先輩:
「これでラストだし、ここは一緒に行こ。」
つづく。