明け方、嘘はまだ言い続ける | It shuts and it keeps shutting through all eternity.

明け方、嘘はまだ言い続ける


いつからか、
頭の中から追いやって
無かったものとしようとしていた。

その時間も、
その時を
一緒に過ごした人達も、
初めから無かったんだと。

そうやって
大切にしてきたものと
幾度も訣別してきたような、

いや、
本当に別れをつげたものは
唯一ひとつなのかもしれないね。



夢をみてた。
灰色の日に
カフェの屋外のテラス席

その日、
演者たちはJazz奏者で
サキソホンの彼と目があった。
奏者はみな、黒人であった。

その時、妊婦の彼女がきて、
僕の脇を通り過ぎて店の中へ。

十数年の空白の中で
僕の思い達は溢れて、
言葉に変換しようがなく、
彼女には何も言えなかった。

その瞬間、
無音になってた僕の耳元へ
急速に音達が通り過ぎていき、
何も
何一つも、
言い出せ無かった事に気がついた。
そこで夢はいつも醒めるんだ。

目が覚めても、まだ夢を見ているようだった。
由美が、由美がそこにいたからだった。

夏は夜が甘くもなく、
重苦しくもなく
闇が思うより軽く、
だからなのか、
人々はまだ通りを
行き交ってて
昼間のようだった。

ヘッドライトが交錯して
今さっき君の顔が、
見えたり見えなかったり。

先週、花火の帰りにみつけ、
とらえてしまった蛍は3時間で
消えてしまった。

やはり人の手で触れたら、
壊れてしまうものばかりなんだ

―――だから、
由美の昔の彼は
壊し続けたのだろうか?―――

壊れやすいモノを
無防備に守ろうとする彼女がまた見えた。

波の音がした。
少しひんやりしたろうか。
わずかに目をあけてみたら、
海に続く空の
ずっと上のほうが、
青く明るかった。

明け方の車中、
とうに忘れた感情でいま、
あれから7年も過ぎてまた
君の側に
こうして言葉探しても
なにか足りないまま

目を覚ました君に言えたのは
くだらない愛と憎しみの発言だ。

「あの時の赤ちゃん、
きっとかわいい男の子だよ。
ちゃんと生まれてたらの話だけど。」

冷ややかに、少し考えて答える由美。

「ブランキーは好きじゃないっつうの」

くだらないやり取りだった。

傷つけてやりたかった。
触れられないほど悲しいって、
何年も過ぎていくのはもういやだ。
「もうどっちでもいいんだ。
だって、いくら考えても答えはでないもの。
でも、
隆一郎のそういう
攻撃的過ぎる気遣いは嫌いでもない。
だから、ありがとう。
あれだけの時間が過ぎてしまって、
時々言葉にしてあげないと
もう消えて
無くなってしまいそうな程だもの」

そう言って後は、黙っていた。


「男の子で正解なんだよ。」


由美は心の中で言う。

隆一郎はいまだにあの話を曲解したまま。
あの嘘が堪らないほど。