わたしは32才になった

会社が開催する1年間の幹部候補生研修を受講することになった
 
 
それと同時に、会社の役員人事が変わり
会社のトップも変わった
会社のトップに決まった人は、わたしが苦手なタイプの人だった
わたしはその人直属の数名で構成される部署に異動が決まった
 
わたしの研修も部署異動も、当時のわたしの直属の上司が推したようだった
悪い人ではないけれど、出世欲の強い元上司は、わたしを推して点数を稼いだのだ
 
わたしは、裏切られたような気持ちになりやさぐれたまま研修を受け、異動先の部署で働いた
全然、楽しくなかった
眠れなくなった
 
側から見れば、華麗な出世コースだけど
わたしは出世したいわけではなく
ただやりがいがほしいだけだった
わたしを認めてくれる居場所がほしかっただけだった
 
けれど、心屋の考え方を知っていたおかげで、楽しくなくてもがんばったり、無理してがんばることはしなくてもいいんだと
ダメな自分のままでもやっていこうと決めた
誰かを優先するのではなく
自分を優先してみようと思った
 
 
心と体力の限界を感じていたわたしな
研修参加を期に、母に宗教の活動を控えると伝えた
母はいい顔はしなかったが、仕事だから仕方ないと言った
母と行動することが減ってから、今まで感じなかった違和感を母に感じるようになった
 
 
 
同じ頃、彼も職場で意図しない配置転換があり、仕事の意欲をなくしているようだった
彼はわたしと違い、向上心がある
彼の異動は、棚下げのようなものだった
本人は言わなかったが、表情と周りの様子をみたら一目瞭然だった
 
だから、わたしは幹部候補生と名のつく研修を受けていることを自分から彼には言わなかった
彼に劣等感をもたせたくなかった
1年間、辛抱すればいい
彼も、大丈夫だ
実力があるから、きっと、よくなる
その一心で過ごしていた
 
しかし、彼をよく知るわたしの会社の先輩が気を利かせて、わたしが受講している研修のことを伝えてしまった
彼から聞かれたときも、イヤイヤ受けているだけなんだと平静を装って返答した
 
 
1年間の研修があと半年となり折り返した頃、彼が突然、職場から姿を消したという情報がわたしの耳に入った
 
もともと、彼とは頻繁に連絡を取り合うことはなかった
彼の連絡先は変わっていた
音信不通になった
 
わたしは目の前が真っ暗になった
そんな自分にも驚いた
ショックでごはんが食べられなくなった
 
わたしが思っていた以上に
わたしにとっての彼の存在の大きさを思い知った