大好きだった彼にフラれ、心にぽっかり空いた穴を埋めるために、今まで、社会人としてという理由だけでやってきた仕事を本気でやってみようとわたしはがんばった
心のどこかで、わたしが成長して大人の女性になれば、あの彼が戻ってくるかもしれないという期待があったから、仕事の業務だけじゃなく、スキルや資格、女磨きなども積極的に取り組んだ
わたしが一緒にいればご機嫌な母のために
母が思い描くあるべき姿の女性像を取り戻すためにも、わたしはできるだけ行動を母と共にし、母が望むだろうことをやってきた
職場でも、部署異動を機に、今までイチ事務社員だったわたしのおかれる環境が変わった
幼少期からの他人への配慮、気づかい、人見知りしない愛想のよさ
小学生の時からの我慢強さ
中学生の時からの自分を主張しない控えめさ
ずっと溜め込んでいた罪悪感と自信のなさ
様々な経験を通して得ていた寛容性
持って生まれたカンの良さと学習意識の高さ
美意識の高い彼と一緒にいたので、外見も磨かれていた
わたしの存在は、役員たちの目によくとまり、事務社員のわたしは役員秘書のような立場になった
ほとんどの役員たちは、わたしによく言っていた
「今まで、どこで何をしていたの?」
わたしは笑顔でかわしていたが、それを言われた時に、嬉しかった
今までのしんどさが報われたような気がしたからだ
社内の人と交流する機会も増えた
仕事も充実している
けれど、やってもやっても、ぽっかり空いた穴が埋まらず、虚しくなる
彼が戻ってくる気配すらない
そんなやりきれない気持ちから、わたしは、はじめて、好きだった人を憎むという感情をもった
仕事は充実していた
唯一、気になるのは、彗星の如く現れたわたしを見る中間管理職の人たちだ
イジメられることはなかった
なぜなら、わたしは、人を引き立てることはあっても立場を脅かすことはしない
中間管理職の人たちから、わたしは可愛がってもらえた
けれど、それが仇になった
わたしは、中間管理職の人たちの引き立て役となると同時に、出世の踏み台に利用されるようになった
一時は、彼らを憎んだが、今はわたしがその立場を自ら選んだのだから、仕方ない
わたしが間違ってたのだと思う
フラれた彼に対しても、だいぶ憎しみは薄れていて、幸せになって見返してやるぞと思えるようになっていた
そんな時に、わたしには気になる人ができた