彼女は自分の命がそんなに長くないことを薄々分かってはいたのだろうか?

自分自身が検診で心臓が引っかかっていたこと、心エコー検査で何か心臓の弁が異常だということは分かっていたはず。それは健康診断の結果や検索履歴から分かるから。

しかしそんな重大なことを知っていたのは彼女自身、彼女ただ1人だけ。ご家族ですら知らなかった。

ならば、婚約者の私は尚更知る由もない。

彼女にとって大事な人であればあるほど知られたくなかったようです。彼女にとっては大切な人の悲しむ姿を見ることが何よりの苦痛だから。何も言えなかったのかもしれない…


彼女を救えなかったのだろうか。

婚約者だけど、これからは家族になるはずだった私。

私にくらい相談してくれても良かったのに…

何も知らずに私は彼女と過ごしていた。

なんと情けなく恥ずかしいことか。

結果的に彼女の命を失う原因になった要素に私は挙げられると思う。

私の勝手な推測、自惚れかもしれない。

でも彼女がもし私と付き合っていない時に、心臓が引っかかって何かしら治療が必要だと分かっていたら、もしかしたら全部ご家族には打ち明けて、仮に打ち明けなくても自分で治療したりしたのではないか?

それは分からない。もしかしたらしなかったかもしれない。手術や治療を受けることは怖いことだから。

しかし心臓が引っかかったり、いよいよ心機能が落ちてきたと分かり始めてきたのはちょうど私と出逢ってから、私と同棲を始める直前の頃。

いよいよこれからやっと大好きな人とずっと一緒に暮らせるのに、ここで手術や治療を受けると宣言したら同棲出来なくなるかもしれないし、最悪そんな状態で外には出せないからと結婚の話すらも無くなっていたかもしれない。そんなことを悩んだのかな。


その頃彼女の中で2択で悩んだのではと。

あと10年20年生き長らえることはできるけど、誰よりも大切な愛する人とは共に過ごせない未来。

あと1年の命だけど最後まで誰よりも大切な愛する人と幸せな時間を過ごす未来。

彼女にとっては自分の命の長さよりも私との時間の方が大切だったのかもしれない。

考えすぎかもしれないけど。でもそう思うと本当に辛い。出会わなければ彼女を死なせずに済んだのか?

でも出会わなければ彼女は幸せにはなれなかった。

私たちの間には命よりも重くて尊い愛があったのではないかと思うのです。

それに気づいたのは彼女がこの世を去ってからだけど…

もっと早く気づいてあげれればよかった。

私と一緒にいられて彼女自身も生き長らえる、そんな選択肢はなかったのか。

そんなことを色々考えてしまいます。

もう過ぎたこと、考えても仕方ないことは分かってはいます。

ただ1つ確かなことは彼女の愛は本当に尊く本物の愛だったということ。私は本気で彼女に愛されていたということ。それだけは確かです。

それが私の人生に大きな意味を持つのだろうと思っています。私は決して彼女のことを忘れたりしない。忘られるわけがない。彼女の分まで未来を生きなくてはいけない。彼女と出会った意味、愛した意味、愛された意味をこれから先も追い求めていく使命があると思っています。


2024.07.05