先日、高知県にある「牧野植物園」 へ行ってきました!
実は、年末にウキウキ気分で行ったら、休館日で園内に入れなかった素敵な思い出が・・・(アホです)
ずっと気になっていた場所だったのでテンションでついつい長居してしまいました
植物分類学の父、牧野富太郎氏が、
少年時代(18~20)歳の頃に書いた植物学への心得。
いろんな事に当てはめて考えてみたら、面白くて何度も読み直してしまう。
牧野富太郎氏についてもっと知りたくなってしまった~
~赭鞭一撻(しゃべんいったつ)~
一 忍耐を要す
何事においてもそうであるが、植物の詳細は、
ちょっと見で分かるようなものではない。
行き詰まっても、耐え忍んで研究を続けなさい。
二 精密を要す
観察にしても、実践にしても、比較にしても、
記載文作成にしても、不明な点、
不明瞭な点が有るのをそのままにしてはいけない。
いい加減で済ます事がないように、とことんまで精密を心がけなさい。
三 草木の博覧を要す
材料(草木)を多量に観察しなさい。
そうしないで、少しの材料で済まそうとすれば、
知識も偏(かたよ)り、不十分な成果しか上げられない。
四 書籍の博覧を要す
書籍は古今東西の学者の研究の結実です。
出来得る限り多くの書を読み、自分自身の血とし肉とし、
それを土台に研究しなさい。
五 植学に関係ある学科は皆学ぶを要す
植物の学問をする場合、物理学や科学
(例えば光のせいで茎が曲がったり)、
動物学(花粉を運ぶ蝶)、地理学(どこで、どんな植物が生えるか)、
農学(有用植物の場合)、画学(植物画を描く場合)、
文章学(植物を文章で表現する記載文)など、
ほかの関係分野の学問も研究しなさい。
六 洋書を講ずるを要す
(明治初年の段階では)、植物の学問は日本人や
中国人のそれよりも、西洋人の学問が遥かに
進んで(いた)いるので、洋書を読みなさい(和書・漢籍じゃ駄目です)。
ただし、それは現在の時点においてそうであって、永久にそうではない。
やがては我々東洋人の植物学が追い越すでしょう。
七 当に画図を引くを学ぶべし
学問の成果を発表する際、植物の形状、
生態を観察するに最も適した画図の技法を学びなさい。
他人に描いて貰うのと、自分で描くとは雲泥の差です。
それに加えて練られた文章の力を借りてこそ、
植物について細かくはっきりと伝えられます。
八 宜(よろ)しく師を要すべし
植物について疑問がある場合、
植物だけで答えを得ることはできません。
誰か先生について、先生に聞く以外ありません。
それも一人の先生じゃ駄目です。先生と仰ぐに年の上下は関係ありません。
分からない事を聞く場合、年下の者に聞いては
恥だと思うような事では、疑問を解くことは、死ぬまで不可能です。
九 りん財者は植物学たるを得ず
以上述べたように絶対に必要な書籍を買うにも、
(顕微鏡のような)機械を買うにも金が要ります。
けちけちしていては植物学者になれません。
十 跋渉(ばっしょう)の労を厭ふなかれ
植物を探して山に登り、森林に分け入り、川を渡り、沼に入り、
原野を歩き廻りしてこそ新種を発見でき、
その土地にしかない植物を得、植物固有の生態を知ることができます。
しんどい事を避けては駄目です。
十一 植物園を有するを要す
自分の植物園を作りなさい。遠隔の地の珍しい植物も植えて観察しなさい。
鑑賞植物も同様です。いつかは役に立つでしょう。
必要な道具も勿論です。
十二 博く交を同士に結ぶ可(べ)し
植物を学ぶ人を求めて友人にしなさい。
遠い近いも、年令の上下も関係ない。
お互いに知識を与えあう事によって、知識の偏(かたよ)りを防ぎ、
広い知識を身につけられます。
十三 迩言(じげん)を察するを要す
職業や男女、年令のいかんは植物知識に関係ありません。
植物の呼び名、薬としての効用など、彼らの言うことを記録しなさい。
子供や女中や農夫らの言う、ちょっとした言葉を馬鹿にしてはなりません。
十四 書を家とせずして、友とすべし
本は読まなければなりません。
しかし、書かれている事がすべて正しい訳ではないのです。
間違いもあるでしょう。書かれている事を信じてばかりいる事は、
その本の中に安住して、自分の学問を延ばす可能性を失うことです。
新説をたてる事も不可能になるでしょう。
過去の学者のあげた成果を批判し、誤りを正してこそ、
学問の未来に利するでしょう。だから、書物(とその著者)は、
自分と対等の立場にある友人であると思いなさい。
十五 造物主あるを信ずるなかれ
神様は存在しないと思いなさい。学問の目標である真理の探究にとって、
有神論を取ることは、自然の未だ分からない事を、
神の偉大なる摂理であると見て済ます事につながります。
それは、真理への道をふさぐ事です。
自分の知識の無さを覆い隠す恥ずかしい事です。
(高知県立牧野植物園現代語訳)
つづく。。