「ぐるりのこと。」

「ハッシュ!」から6年。待望の橋口亮輔監督の新作。


予告編観たときから、観たくてウズウズしていて、すっごい期待して観に行ったんだけど…


ああ、橋口監督。こんな素敵な映画をありがとう。


人生の中で大事にしてゆきたい映画に出会えた。


生きるって、ほんとめんどくさいこと多いし、逃げ出したくなることも多い。


そういうこともひっくるめて、投げ出さずに、受け止めて、そばにいて、信じて、進んでいく。


こんな夫婦みたいに人と繋がってゆけたら、と思う。心から、思う。


理想なのかもしれないし、別に結婚というものに甘い幻想とか全く抱いてないのだけど、なんやろう、信じてもいいじゃないか、と思わせてくれるのです。


初っ端の、リリーさんと木村多江さんのニヒヒと笑える会話のやりとり、雨の日のクライマックスシーン、そして終盤の奇跡的な長回し…たまらないシーンがいっぱい。


その裏でもう一つの見せ場といえる法廷シーン。


10年間に実際に起きた事件をモデルにしていて、最近も「秋葉原殺傷事件」や「宮崎勤の死刑執行」があったばかりで、より生々しく、重く、のしかかってくる。


カナオの目を通して、この映画と同時代に生きてきてた、自分の記憶や感情も蘇る。


この映画を見終わった人は、きっとそれぞれの自分の人生とも重ね合わせるんだろうな。



出会えて、本当に良かった。


好きとかもうそういう次元を超えていて、年をとっても繰り返し見続けていきたい映画だなぁ。



木村多江さんもとてもとても素晴らしかったのだけど、リリーさんには驚かされた。


何でこんなに何でもできちゃう人なんだろう。


台詞を今初めてしゃべったみたいに話し、本当に自然にスクリーンの中で生きて、呼吸している。


きっと、カナオはご本人に近いのだろうけど、でもアドリブに見えるところもちゃんと台詞なんやものね。


無意識の意識、というか意識されてるのか分からないけど、役者がなかなかたどり着けない境地にひょいっと行けてしまうんだから、すごいなぁ。