原美術館 のヘンリーダーガー展に行ってきました。

16日までだったので、前日に慌てて行ったら、台風が来てたのに、館内はオシャレな若者でいっぱい。


友達に勧められて、ヘンリーダーガーのこと、ほとんど知らずに観に行ったんだけど…なんだかもういろいろビックリしちゃったよ。


言葉にならない感情がいっぱい出てきちゃって、こんなに揺さぶられた展覧会は久しぶりだなぁと思う。


このおじいちゃんがヘンリーダーガー。

幼児期に母親を、思春期に父親を亡くして、知的障害児施設で育つ。

そこを17歳で脱走した後は81歳で亡くなるまでずっと天涯孤独の身で、掃除夫や皿洗いなどをして生計を立てていたそう。


ダーガーの作品は死の寸前に大家さんに偶然発見される。15000頁に及ぶ物語と、それにまつわるたくさんの絵画。


人に見せるためじゃなく、ただ自分のために、自分の頭の中の空想世界を形にするために描きためられた作品達。

生きている間、誰一人、ダーガーが絵や物語を描いてたことを知らなかったなんて。


ダーガーが40年間住み続けた部屋の写真も展示されてあって、これがまた凄まじいの!

6畳ぐらいの暗くて狭い部屋に、モノ、モノ、モノ…モノでいっぱい。

壁はたくさんの少女の写真や絵で埋め尽くされ、テーブルは十字架や絵の具や壊れた玩具や眼鏡などのがらくたの山々。

拾ってきた雑誌の切り抜きをスクラップして、モリモリになった電話帳。

ベッドもモノで埋まっていて、寝るスペースがないので、どうやら椅子で寝ていたとか。

この椅子がまた、クッションが破けてボロボロで…。


イメージが襲ってくる。息苦しい。コワイ。切ない。。

部屋にダーガーの生きてた痕跡が残りすぎてて、思いが溢れすぎてて、まるで彼がそこにいるみたい。



ダーガーの絵。

万華鏡をクルリと回して覗いたような、メルヘンでかわいらしい、色とりどりの乙女チックな絵。

一見、オシャレなポップアートっぽい。

でも彼の部屋や生い立ちを知ってから見ると、妙な説得力があって、なんていうかもう、ただならぬ哀愁を感じてしまう。


女の子なのに男性器がついていたり、大人の男達と銃を持って闘っていたり。拷問の絵もあったり。

ものすごくピュアで残酷なファンタジー。

美しいのに、歪んでいる。

気持ちいいのか、気持ち悪いのかよく分からない。

だけどとても惹きつけられる。


全然知らない国で、全然知らない人たちに部屋の様子や作品をジロジロ見られて、彼はひょっとしたらそれを望んでいなかったかもしれない。

裸の自分をそのまんまさらけ出してるわけだもの。

でも、だからこそ、たくさんの人の心を掴んでしまうんだね。

こうして彼が生きた証を残してくれていたこと、それを見れる奇跡をありがたいことなぁと思う。


彼は幸せだったのかなぁ。

意外と幸せだったのかもしれないな。

好きなモノに囲まれて。好きなモノを作り出して。

彼の真実は誰にもわからないけど。


見終わった後も、なんかショックが抜けず、頭がぐるぐるしながら帰る。

しばらくたっても、この感覚がうまく言葉にできない。

でも、いいものを見た。うん。すごく良かった。