国別対抗戦での浅田真央のショートプログラムの演技は、まさに私が見たかった浅田真央の演技だった。


滑っていて気持ちいい!

そんな風に彼女の顔にはとても自然な笑みが浮かんでいた。


そして本当に自然に体がドビュッシーの月の光のピアノのリズムになじんで動いている。


すごく見ていて穏やかな、幸せな気分になるようなそんなスケート。


初めて世界ジュニア選手権で優勝した時やGPFで優勝した時も彼女のスケートからは滑るのが楽しくてしようがない、そして見る人の顔をほころばせてしまうような天性の明るさがあった。

けれど、いつまでも新星のように現れた少女のままでは居られない。

彼女はますます技術を磨き、ロシア風のゴージャスなプログラムを見事に滑りこなすまでに成長した。

でも、やっぱり彼女の一番の良さはスケートから滲み出る天性の明るさ、陽の雰囲気だと思う。

ここ最近、色々なものを背負ってそれが少し失われてしまったような気がしていた。

世界選手権では中々歯車がかみ合わず、これからしばらくはスランプに陥ってしまうのだろうかと心配してしまったくらい、何か壁にぶち当たっているような雰囲気が漂っていた。


でもそんな心配は不要だった。

ショートプログラムでトリプルアクセルに挑戦する、という事が彼女を変えたのだろうか。

ほんのちょっとした何かで驚くくらい生き生きと、伸び伸びとしたスケートを見せてくれた。


やっぱり彼女には苦手な何かを克服する、というよりは得意な何かを限界まで挑戦するという姿が似合っている。

そしてそうしている彼女が一番生き生きと輝きを放っている気がする。


もちろんそれには賛否両論あるだろうしリスクも伴うだろう。

結果がついてくるときもあれば、付いてこないときもあるかもしれない。

けれど、浅田真央のあの春のようなスケートが見られるのなら、1ファンとしては、それだけでいいような気がした。