私が子宮内膜症だということを知ったのは27歳のことだった。
でも、それはあまりにも唐突で衝撃的な話だった。

私は当時、毎日深夜まで働くヘビーワーカーだった。
友達からは、「働きマン」の主人公みたいと言われたりして
バリバリ働いてる私ってカッコいいと内心得意になっていたような小娘であった。

ある日、大事な出張と生理が重なりそうだったので、会社近くのレディースクリニックに飛び込んで、ピルを出してもらうことにした。
ピル=避妊薬でしょ?と考えてワクワクする男性陣に断っておく。ピルは避妊薬である以前に、ホルモン剤。
生理周期をコントロールすることが出来るのだ。

私は生理をずらしたかった。なぜなら生理痛があまりに酷く、仕事に支障を来すほどだったからだ。

もちろんピルには副作用がある。軽い吐き気、めまい、頭痛など。
でも、その苦痛よりも、断然ひどい生理痛をどうにかしたかった。

そのレディースクリニックは、いかにも東京で働く女向けの婦人科だった。
待合室は、クールモダンなデザイナーズ家具で統一されていた。院長の趣味だろうか。テーブルや椅子は全てプラスチックやガラスやスチールの組み合わせで冷たげだった。
待ち合いに座っている患者も、お腹の大きな妊婦は一人もおらず、皆、会社員風の女性ばかりだった。

レディースクリニック=産婦人科ではない。そこは婦人科専門だったのだ。つまりお産の面倒は見ません、ということ。東京にはこの手の病院がとても多く、女性誌に広告を打っては、婦人科ドックと称して保険外の検査で稼ぐ病院も多い。

私はピルをもらいにきただけなので、
短い問診を受けた後、3000円程度払って保険外扱い(生理周期をずらすのは治療ではないため)のピルをワンシートもらって帰るはずだった。

しかし、呼ばれて行くと医師が「お腹の中を見せてください」という。
看護婦は「どうぞ、こちらへ」と内診台に上がるよう案内する。
「えっ?ピルもらいに来ただけなんですけど」と私。
「いえ、当院では初めて来られた患者さんは一度内診することになっているんです」と看護士。

内診台とは、座ると足が開いてアソコをみせる、あの台である。
実はこれまで私は、婦人科の内診台に上がったことがなかった。

初めての内診台は緊張したが、怖がる程のものではなかった。
もちろん、気分のいいものではなかったが、
モニターが患者側にもあって何やら映るので、じっとそれを見ていた。
医師が「3センチ、いや3.5センチ位はある。」などとつぶやきながら
黒くて丸いものの長さをしきりに測っていた。

診察の場に戻ると、医師はこう言った。
「子宮内膜症の疑いがありますね。卵巣にチョコレート膿腫といってね3.5センチくらいの固まりがあるようだね。」
「は?しきゅうないまくしょう、卵巣に腫瘍があるんですか?」