1981年以降、ガンは日本人の死亡原因の第1位です。

2018年のがんによる死亡者数は約37万人。

生涯でがんに罹患する確率は男性62％、女性47％に上ります。

こういう数字が上げられると、たいていその後に

「がんは早期に発見することができれば、生存率が著しく向上します。早期発見のために検診を受けましょう」

という一文が続きますが、

このたび、オーストラリアのボンド大学の科学者たちは

「ガンの早期発見の多くが過剰診断である可能性」

を突き止めたという研究報告がありました。

ガン検診と検査によって、多くの人の命が救われてきましたが、その一方でガン細胞の早期発見は必ずしもよいことだけではないことがわかったというものです。

Harmless Cancers Are Being Overdiagnosed, According to New Evidence
sciencealert.com 2020/01/28

新しい研究のエビデンスによると、無害なガンが過剰に早期診断されている

定期的なガン検診とスクリーニング検査が導入されたことにより、世界中で多くの人々の命が救われてきた。しかし、ガン細胞の早期発見は必ずしも良いことだけではないことがわかってきている。

すべてのガン細胞が同じものであるわけではなく、また、すべてのガン細胞が同等のリスクをもたらすわけではない。多くの場合、私たち人間は、成長しているガンが体内にあることを知らずに一生を過ごすことができており、その場合、体内にガンが存在することによって身体が害を受けることはない。

このように良性の場合に対しての化学療法（抗ガン剤治療）や放射線治療、または、手術による摘出などの治療は、その人たちに良い作用を与えるのではなく、はるかに害を与える可能性が高い。

現在、オーストラリアで進められている新しい研究は、医療の世界で、ガンの早期発見への取り組みが大きくなっていることに対して、その問題点を改めて浮き彫りにした。そのオーストラリアの科学者たちは、世界で初めて、５つの異なるガンが「過剰診断」されるリスクを計算した。

オーストラリア・クイーンズランド州にあるボンド大学の研究者たちは、1982年と比較して、ガン死亡数が上昇していないにもかかわらず、2012年にオーストラリアで患者たちが、ガンと診断される可能性がはるかに高いことを発見した。

この 2012年には、研究者たちの推定によると、男性のガンのほぼ 4分の 1が過剰診断されていた。これには、前立腺ガンの 42％、腎ガンの 42％、甲状腺ガンの 73％、悪性黒色腫の 58％が含まれる。

女性については、甲状腺ガンの 73％、悪性黒色腫の 54％、乳ガンの 22％を含む、すべてのガンの 18％に近い事例が過剰診断だったと推定された。

2012年のオーストラリアでは、女性では最大 11,000例のガンが検出され、男性では 18,000例のガンが検出されたが、その中には、診断や治療が必要ではなかったものが多く含まれていた可能性がある。

論文には、以下のように記されている。

「ガンに対しての基本的な治療法である手術や放射線療法、内分泌療法、そして化学療法などのガン治療は、治療により身体的な危害が引き起こされる可能性がある。その診断が適切であれば、そのリスクは許容できると考えられる。しかし、ガンという診断が、不必要に下された場合、患者たちは、それらのガン治療によって危害を加えられるだけであり、人を助けるという意味での治療とはならない。」

最も過剰診断されていると推定されるガンは、乳ガンと前立腺ガンだった。これらは、比較的一般的なガンであり、近年、世界中のいくつかの国では、この乳ガンと前立腺ガンに対しては、症状が観察されない場合でも、広範囲のガン検査スクリーニングプログラムを採用している。

実際に、1980年代にマンモグラフィ（乳ガンの早期発見のために人の乳房をX線撮影する装置）が初めて導入されたとき、米国では乳ガン患者が 50％増加した。数年後、今度は前立腺の同様のスクリーニング検査が導入された際には、前立腺ガンの発生率は 2倍になった。

ボンド大学の医学者であるポール・グラジオ（Paul Glasziou）博士は、以下のように述べる。

「問題は、一部のスクリーニングでは、ガンのように見えるが、ガンのように振る舞わない細胞もガンとして特定してしまっていることです。とはいえ、いくつかの種類のガン検診スクリーニングは、診断上重要なものなので、このような過剰診断の問題を減らすことは容易ではありません」

オーストラリアと同様に、広範なスクリーニングプログラムの普及は他国の尺度にも影響を与えているようだ。

デンマークの研究では、マンモグラフィによるスクリーニングでは、後期腫瘍（2cmを超える大きさの乳ガン）の数は減少せず、リスクをもたらさない可能性のある小さな腫瘍が非常に頻繁に検出されていることがわかった。これは、マンモグラフィによる乳房のスクリーニングが乳ガン死亡率を低下させていないことを示唆している。

昨年、米国でおこなわれた 40年間のデータを精査した研究では、甲状腺ガン、腎臓ガン、および悪性黒色腫の発生率が急激に上昇している一方で、ガンによる死亡数はほとんど変化していないことが判明した。

この米国での研究を受けて、米ブリガム婦人病院のギルバート・ウェルチ（Gilbert Welch）氏は以下のように述べた。

「多くの人々が、マンモグラフィを含むガンのスクリーニング検査をより多く受けることが社会全体の健康にとって最善であると想定していますが、実際にはそうではないかもしれないのです」

ウェルチ氏は、ガンの過剰診断の問題の根底にあるものは、「現代の医療におけるガンの早期発見に対しての無意味ともいえる熱意」にあるとしている。

しかし、このガンの過剰診断についての議論は、その結論が出るにはほど遠いものであり、科学者の中には、特定のガンのスクリーニングを廃止あるいは回数を減らすことを提案している人たちもいるが、現実として、現在のガンの早期発見についての医療的慣行を変えようとしている国はほとんどない。

年二回くらい、区や夫の会社から「健康診断」や「ガン検診」のお誘いのハガキが来るのですが、行く気がないのでいつもうっちゃって置いています。

「命は天からの授かりもの」

なので、寿命もおそらく決まっているのだろうと。

無理して長生きしようとは思っておりませんで、その時が来れば死ぬのだろうと思います。

なので、ガンを早期発見したら治療して生き長らえようという野望は持っていません。

まぁ、これはわたし個人の考えですが、やはり早く発見してもらって治療もしっかりやってほしいという方も多くいらっしゃることと思います。

そういう方にはぜひ長生きしていただきたいですが、このオーストラリアの研究にある通り、

「ガンの早期発見は、多くの場合、むしろ健康を損なう可能性が高い」ようです。

化学療法で使われる抗がん剤は、元はと言えば第二次世界大戦時に使われたマスタードガスが発展したもので、体にたいへんな負担をかけます。

あと、記事にもありましたが、

「現代の医療におけるガンの早期発見に対しての無意味ともいえる熱意」にはすさまじいものがありますね。

つい最近も下記のようなニュースがありました。

・費用はたった9800円「尿一滴」でガンの早期発見が可能

に（Flash 2020/01/03）

・がんや認知症、血液1滴で早期発見分析技術が進展（日本経済新聞 2020/01/11）

血液や尿一滴でガンが発見されるようになると、今以上にガン患者は増加するでしょう。

また、発見されたガンの中には治療が必要でないものも多く含まれているだろうと推測します。

上の記事にもありましたが、たとえば、乳ガンの場合、マンモグラフィによる早期診断が、

「死亡率の改善にほとんど寄与していない」

というのはどうなのでしょうね。

さらに、

検査を受ける回数が多くなるほど過剰診断、つまり間違った診断を受けるリスクが高まる

という研究結果もあります。

これは、コクラン共同計画（Cochrane Collaboration）という、治療と予防に関する医療情報を定期的に吟味し、人々に伝えるために世界展開している組織による研究結果ですが、

それによると、

乳ガンでは「３人に１人が過剰診断されている可能性がある」

そうです。

ただ、そうは言っても早期検診・診断に反対しているわけではありません。

ステージの高いガンで治療の必要なもの、治療によって良い結果が得られるものもあります。

なので、検診や標準治療を受ける受けないはよく調べた上で、個人の意思に基づいて選択してほしいと思います。

その一方で、漫然と早期検診を受けていたのでは、過剰診断に巻き込まれる可能性があるので、そのことを知っておいた方がいいのではないかなと思うのです。

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早期発見のガンの多くは過剰診断の可能性がある