以前「古本でしか手に入らないのですが…」とご紹介した宮脇俊三の「台湾鉄路千公里」が、新台東線に乗るために再び台湾を訪れた1981年の「台湾一周二人三脚」、そして台鐡が未開通だった南部〜東部の南廻線が開通した後訪れた1994年の「台湾一周、全線開通」の二篇を加え、めでたく「完全版」として発売されました!



☆「台湾鉄路千公里」についてはこちら



宮脇氏はとにかく一筆書きで鉄道による旅をする事をモットーにしていて、この台湾を舞台とした電車旅でもその主義を貫かれています。

私はそこまで電車に詳しくないし、あえて言うならライトな「乗り鉄」という感じなので「台湾の全ての駅を制覇したい」とはさすがに思えず、「高鐡があるなら高鐡で、無ければ特急(自強号など)に乗りたい」などと考える軟弱さですが、いつか台湾一周(環島)出来るならその時は高鐡には乗らず台鐡でゆっくり巡ってみたい…と考えています。


↑可愛いよね、台湾黒熊のOh Bear!


増補された二篇にも書かれているように、現在では高鐡もあり、交通網が発達している西側とは違い、台湾の東海岸は未だに台鐡のみというエリアです(しかも「台湾鉄路千公里」「台湾一周二人三脚」の頃は南廻線がまだない時代でした。1990年代初頭に全線開通)。

未だに台北から台東までは4時間以上掛かりますが、それを乗り越えて辿り着いたその場所は台湾好きにはたまらない、まさしく台湾の原風景を感じられる場所であると思うのです。


↑台東の市街地はビルが建ち並び、都会と言っても良い印象。

しかし、空の青さや緑の濃さ、海の青さは他の街と違いました。


この本ではほぼ鉄道での旅がメインなので、観光名所などは登場しませんが、当時の台湾元のレート(1980年代初頭は1NT$=6.5円〈!〉、1994年で約4円)であったとか、日本人男性旅行者の目的が台湾女性との夜の遊びを目的にしたものがほとんどだった(これは先日観た「華燈初上」を見てもわかる事ですが)…という、今の「女子が好む台湾」的な傾向からすれば考えられない「男性天国」的な旅先だったのだなぁ、と思います。


↑このドラマの舞台となった林森北路エリア周辺では今も男性旅行者にそういったお誘いがあるとか無いとか…。


本書の3篇を通して見ると、戒厳令解除前後の台湾が急速に発展して行く様子がわかります。

すごく変わったなぁと思う箇所もありますが、「日本人?私の日本語わかりますか?」などと話かけてきてくださる台湾人がいらっしゃるのは今も変わりません(時代の流れで当時は年配の方、現在はご高齢の方という違いは当然ありますが)。


↑今も保存されている旧台東駅。

旧駅の方が市街地から近く、周りにはおしゃれな商業施設やまったり出来る鐡花村、バスターミナルがあります。


なお、台鐡の「自強号」「莒光号」が戦後の台湾情勢を反映した勇ましいネーミングであった、という事も今作でしっかりと把握する事が出来ました(古めかしいネーミングだったので何となくそうだろうなぁとは思ってましたが…)。


1980年代(90年代)と現在という時代の違いはあれど、この本を読みながら頭に浮かぶのは台湾の東海岸をガタガタと揺れながら走る台鐡に乗っている自分でした。

車窓から海や山や田んぼ、川が見え、目的地までゆっくりと進む台鐡。



そんな旅を、また一日も早くしたいものです。


↑台湾の食事については口に合わないものも少なくなかったような印象を受ける宮脇氏。

原住民料理の方がシンプルで日本人の口にも合いやすいかも知れません。