雙月食品社を出て、開店と同時に滑り込むという選択をした事はやはり正解だった、と独りごちる。

なぜなら店の前では先ほどよりさらに大勢の人が今か今かと入店出来る時を待っていたからである。


今台北で最も人気のある店の1つである事は間違いないだろう。

いや、「今」と書いたがもう8年も連続でミシュランのビブグルマンに選定されているらしいから、すでに人気は定着しているのだ。


*前回の台北滞在記はこちらからどうぞ


来た時同様忠孝東路と林森路(北に向かうのでここからは林森「北」路となる)の交差点まで戻って来た。


↑壁面に大きなキリンが描かれたこのビルはまんま「GIRAFFE」という名前であるらしい。

オーナー氏がキリン好きなのであろうか。


ここからはただひたすら北上する。

駅で言えばMRT中和新蘆線の中山國小駅辺りまで歩く予定だ。

「正気か?」と自分でも思うが、行きたい店を巡りながら台北の街を歩くのもまた一興であろう。

何せ今夜は今回の旅最後の夜なのだから(2泊だから2回しかないのだが…)。


前回(2025年11月)の旅は久しぶりに行きたい場所がたくさんあったし、出かけた先も九份や夜市などという台北旅の王道であった。




しかし、今回の旅は台北の街を好きなように、普段近所や大阪市内に出かけた時と同じような感覚で、つまりは日常の延長のように過ごしていたのである。

もう何度も訪れている台北だからこそ出来る旅だ。

それは私にとって、とても贅沢な時間であるように思える。


林森北路沿いにはホテルも多いので、良さそうな滞在先はないかとチェックしながら歩く。

しかし、残念な事にこの道沿いにある「Just Sleep Hotel台北林森館」は閉業してしまったらしい。



手頃な料金でシンプルな設備だけど居心地よく滞在できる、そんなジャストスリープブランドが大好きなだけに寂しい。

特にこの台北林森館はそのコンセプトそのまんまの支店だったと思うので本当に残念。

これからは少しラグジュアリーな路線に変更しようとしているのだろうか?

しかし、それならばご本家リージェントや姉妹ブランドのシルクスプレイスがあるではないか。

「リーズナブルな料金だけど、サービスはリージェントクォリティ」なのが嬉しかったんだけどなぁ。


林森北路を長春路まで歩いて来た。

初めて台湾を訪れた時に滞在した「東京國際ホテル」が健在であり、あの時の楽しかった旅を思い出してしまう。



この辺りや林森北路沿いはこれまでも夫ともよく歩いたエリアであり、何も気にせず歩いていてもふと夫が言った言葉や楽しげにしている姿などを思い出してしまう。


↑台北で最も日本語が聞こえてくるエリアではなかろうか。

林森北路と長春路が交差する辺り。

京鼎樓や鶏家荘など日本人旅行者からも人気のレストランや日本円から台湾元に両替できるお茶屋さんなどもある。

マッサージ店もこの辺りに密集していて、これらの店では大抵日本語が通じる。


この夜何度もそんな夫の亡霊と向き合う事になる。

きっと私は今後も夫と旅をした場所に行く度にそんな想いをしないといけないのだろう。

それは単純に懐かしい、幸せな思い出と共に、今夫に抱く複雑な感情がごちゃ混ぜになった「切ない」としか言いようのない気持ちだ。

そんな思いをしたくなければ夫と行った事がない国に行けば良いだけの話なのだろうが、どこも大好きな旅先なのでそういうわけにもいかないのである。


さて、そんなセンチメンタルな思いとは裏腹に食い意地を原動力にしてどんどん進む。

かなり歩いた後、ようやく見えて来たのが静かな町にいきなり登場する行列、であった。



この「曾家豆漿」は毎夕16時に開店する店であるが、店に並ぶのは店名となっている豆漿、蛋餅や小籠湯包などれっきとした朝ごはんメニューである。

そして、閉店は午前1時。

日本人からしたら「はて?」と言った感じではあるが、台湾ではそんな「夜のみ開いてる」早餐店(朝ごはん店)を時々見かける。

ただし、ここはテイクアウト専門店。

関西人(のおばちゃん。私も含め)がよく使う言葉である「明日の朝のパン」同様、「明日の朝の焼餅」や「明日の朝の蛋餅」を求めて多くの人が列を作るのである。


ただ、ここで最も買い求められているのは「蛋塔」ことエッグタルトであろう。

大層美味だというこの店のエッグタルトは店頭で大量に焼かれており、最近では日本人旅行者もエッグタルト目当てに訪れるようになっている。

ガイドブックにも掲載されているほどだ。


↑店頭では大きなオーブンで甘い匂いを漂わせながらエッグタルトが次々と焼き上がっていく。


とは言え、この時は圧倒的に地元の方々が多くて同胞らしき旅行者の姿を確認する事は出来なかった。

場所的に若干行きにくい(周りに目ぼしいスポットなどはない。が、中山國小駅から歩けばそんなに遠くはない)のと「夜しか開いてない」というのが短期旅の途中で立ち寄るのにちょっぴり不便である。

ちょうど晩ごはん時だし、同行者がいる場合「夜市に行こう!美味しいものを食べに行こう!」と言われてエッグタルトを買いに行く事を阻まれるかも…。



しかし、それでもこの店をおすすめしたい。

なぜなら、そうして歩いて並んでゲットしたエッグタルトは激うま!だったからである。



やはり焼きたてが一番美味しいとの事だったので、近くにある公園で1個だけ食べたのだが、皮さくさく、中のクリームはじゅわとろな魅惑の食感であり、卵感も強くて最高だった。

甘過ぎずあっさり食べられるので、今また思い出して食べたくなっているぐらいである。


食べたいものを食べたい時に、これがひとりで生きる者に与えられた自由と贅沢。

まさに「孤独のグルメ」さながらではないか。