職場から外に出る。

秋の夕暮れは、切なく寂しくもあり、
でも9月は好きだなと思う。


右上の薄いピンクのほわほわが、
写真には上手く写らないや。可愛いかった。




心屋塾マスターコース
ジェニマス83期受講生  mikiです





昨日は
夕方から祖母の病室へ向かった。


自分の過去を掘り起こし

未完了の想いを味わい直し

祖母との日々も
またありありと思い出している
最近の私。


対して祖母は

長い入院生活から
頭がはっきりしていたり
夢と現実の境界線があいまいだったり。


自宅に帰っていた末娘を連れて
病室へ向かった。


ベッドの上の祖母は、
若い男性看護師さんと話をしていた。


あら、おばあちゃん
来たよーー。

挨拶をして、会釈し
退室していく看護師さんのことを、

今、お寿司屋さんと話していたところ
と私に言う祖母。


おっ
お寿司屋さん…



うふふふふ…
つい笑ってしまう。


あぁ
今日はこんな感じなんやね、
と娘と目配せをする。


そっかそっかー

先週は至って普通の祖母、
今日はこんな感じ。


数年前までは
まだ小さかったひ孫達の
誕生日のころ

出前のお寿司屋さんに
お寿司を配達してもらって
家でお祝いしてくれていたもんね。


掘り起こしの賜物か

私の記憶の中からも
祖母との嬉しかった時間が蘇る。

ほっこりした気持ちで
他愛もない会話をする。


すると今度は祖母が

そこに犬と猫が来るのや。

大きなゴミ箱みたいなもんが
倒してあってな、
その中に並んで入ってる、仲良しや

目を細めて
麻痺の残る左手を上げながら、

そこに訪れるらしい
犬猫のシルエットをなぞるようにしながら言う。


あらー
犬と猫も居るのかぁ〜


そやねん。

猫は私のベッドまで上がってきて
私の枕で寝る時もあるわ、
と苦笑する。


でもそこで祖母は声を潜めて、

犬は病気やったみたいで、
この間(お空へ)参らはったわ…
と涙ぐむ。


どうやら祖母は、夢か幻か
犬や猫と戯れているらしい。
(犬は来なくなったのかな。)

ちょっとぐらい触っても、
看護師さん怒らはらへんと思うけどな…

と伺うように言う祖母。


うんうん、かまへんよ

撫でてあげたらいいわ

動物、好きやったもんね。

昔飼っていた犬のことも
おばあちゃん凄く大事にしてたもんね。


この可愛いおばあちゃんは、
あの怖かったおばあちゃん。


批判や自分の苦労話ばかりで
とても頑固な祖母と話すのが
昔は苦痛だった。


でも今はちっとも苦痛じゃない
むしろ可笑しくて、愛おしい。


人生でこんな局面を迎える祖母に
愛おしい、なんて
良いのか、悪いのか…

そんな正誤なんてどうでもいいや、
それで良い。


洗濯物を洗って届ける

会話する。

たったそれだけ。

私が祖母に、今出来ること。


介護のいちばん苦しい部分を
お互いに見せず、見ずに
ここの医療職の方に全てお世話になっているからこそ。


棘も嫌味もなくて

批判もなくて

やわやわとした祖母がそこに居る。


私に
まだ側に居て欲しい、が言えなくて
会話を紡ごうとするように見えた。



小さい頃の私もそうだった。

仕事で忙しい祖母に

お留守番は寂しい

行かないで、なんて
言ってはならないと思っていた。

そんな気持ちはないよ、と
そのうちに意地を張ったのだと思う。


私のことを
いちばん大事だよと言って欲しくて

話を聞いて、
寄り添って欲しかった。


私は今
祖母にたったそれだけを
お返ししてあげられているかもしれない。

たったそれだけしか
出来ないけれど

ベッドの移動で
窓の外の景色もよく見えず、

無機質で、季節どころか
日時すら分からなくなる生活に

側に誰かが来て
そっと会話が出来るなら

それはとてもとてもささやか過ぎる
大きな幸せだと思う。


私が
おばあちゃんそろそろ行くね

を言ってからも
他愛もない話をした。


あの頃の私も喜んでいる。

穏やか過ぎる時間も愛おしくて

祖母に、変に刺激は与えたくない
ような気がしてしまって
あぁ〜ここやなぁ

祖母を抱きしめるなんて
まだ出来なかったけれど、

帰り道で
祖母の手にくらい
触れたら良かったなと思った。


限りある時間なのだ。


おばあちゃん、好きだよ

おばあちゃん、また来るね

いや、私の方が会いたいよ。


今度こそ
それを口に出そうと思う。

私は愛を届けに

そして愛を受け取りに行く。


大切な時間のことを
早く書き残しておきたくなった。


私は祖母のことが
とてもとても大好きだった

そして今も大好きなんだ








miki