「リオン、とりーとおあとりっく!」
「……?」
スタンがリオンの目の前に出たかと思えば手を差し出す。
満面の笑みのスタンだが、肝心のリオンは意味がわからないでいた。
そこに何故かルーティが真っ赤になって駆け付ける。
「ばっ、反対でしょーが!」
「え?え……っと、とりーとおあとりっくの反対だから……く、っ、り、と、あ……」
「そういう意味じゃないわよ!」
……保護者のようだ。なんとなくリオンはそう思う。
ルーティの環境が環境なだけに元からこの性格だということをリオンは知らない。それでいくとスタンは孤児院の子供と同レベルにもなるのだが、なんとなく理解できるのが情けない。
「Trick or treatよ!さぁ言ってみなさい!」
「とりっく、おあ、とりーと!」
どこで習ったのか、流暢な発音でルーティがスタンに教えている。
だがしかしスタンは発音など気にせず、とりあえず言えればいいかのように笑顔かつ棒読みで復唱した。
「そんなわけでリオン!とりっく、おあ、とりーと!」
「……………。生憎だが僕はお前なんかにやる菓子など持ってない」
「では悪戯を覚悟している、ということですね?」
いつのまにか側へ来ていたフィリアが口を挟む。
何故か嬉しそうになにやら怪しい液体の入った瓶を持っているのは見なかったことにしよう。
「僕はお前達に付き合うほど暇じゃない。というか暇でも付き合いたくない」
「でもとりっく、おあ、とりーとって強制だったよね?」
しん、と静まった。
言ってはいけないことを言ってしまったスタンはリオンにきつく睨まれるが、もう遅い。
「そうねぇ、確かに強制だわ」
「覚悟してください、リオンさんv」
女は時として怖い。
この後のことはリオンの脅しによって誰にも語られることはなかったが、リオンにとって良いことでなかったのは間違いないだろう。
「あら、今日は30日ですわ。ハロウィンは明日……見なかったことにしましょう」
……女は怖い。
