「Little Susie」
透き通るように美しく、哀しいこの歌。
和訳のときにも書いたのですが、とても丁寧に慎重に愛情深く作られています。
マイケルが19歳の時に作った詩に音楽がつけられ「HIStory」に収められました。
その間20年。忘れていた古い詩を引っ張り出してきたという感じは全然ありません。
むしろ、「Little Susie」の存在はマイケルの人生を長い間支え続けたのではないでしょうか。
HIStoryの中では異色の曲のように思われがちですが、「Lttle Susie」こそが
センターピース。
リトルスージーこそマイケルのミュースだったのです。
(ダンテの「神曲」を参考にこの記事を書きましたが、「神曲」自体をダイジェストでしか読んだことがないので(大汗)、「仮説」ということでご了解くださいませ~~)
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マイケルのミューズ「リトルスージ」ー
HIStoryアルバムの中で他の曲の歌詞はI us meで語られ、「マイケル自身の物語」であることを強調されているけれど、「Littele Susie」だけは三人称で語られ、マイケルは語り手に徹しています。
マイケルの物語ではなく、マイケルが語る物語。「Childhood」のIがマイケルで
リトルスージーは別の人格を与えられています。
リトルスージーはマイケルのミューズ(詩神)
この詞を書いたのは19歳のころと言われていて、実話をもとにしているのではないかという話もあります
「リトルスージー」という名前を与えられた女性像は少しずつ名前を変えたり、
人物設定を変えて繰り返し作品に現れます(ビーリージーン、アニー、スージーなど「マグダラのマリア」的女性像。マグダラノマリアの宗教画の多くが髑髏(死の象徴)を持つのと同様、このキャラクターたちは必ず「死」に関する言葉を伴います)。マイケル自身の成長とともに変化し聖母マリア的な女性像「My Baby」と統合されていきます。
数多くの名作に登場するリトルスージーのモチーフは、物語の中の一キャラクター以上の役割を与えられていると考えられます。
それはマイケルの創作にインスピレーションを与え、その過程の道しるべとなるような「ミューズ・詩神」で「永遠の女性」の役割
ある女性に現実の世界の愛よりも、もっと高い次元の憧憬や崇拝に近い感情を抱き
そのミューズに捧げる芸術作品を創り上げたのはダンテやゲーテなど数多くの
詩人たち。
リトルスージーが楽曲として現れるHIStoryを、ゲーテの「神曲」と詩神(ミューズ)ベアトリーチェの関係性で読み解いてみたいと思います。
「リトルスージー」がもし、このアルバムに入っていなかったらと想像すると、
その重要性がはっきりします。
リトルスージー無しではただの不平不満の並び立て、感情の爆発、誇大妄想、自己憐憫。。。。。(LSの意義がわからず、そういった批評をする批評家も多かったのです)。
「リトルスージー」があって初めて言えるのは
マイケルの「HIStory(人生)」の闘いは「自分」のためではなく「他者」のためのものであるということ。
マイケルが叫び(scream)泣き(SIM),,糾弾し(TDCU)罵リ(2BAD)
闘う(HIStory)相手は
リトルスージーのような弱者を死に追いやる、
  「Money」          マネー至上主義経済
  「DS」             政治の堕落
  「Tabloid Jankie」   メディアの怠慢
   「Blood On The Dance Floor」 淫蕩・ 親子関係、家庭の崩壊
  「Morphine」              医療倫理の崩壊
  「Ghosts」「Is It Scary」     人の心に巣食う偏見と怖れが産みだす差別   
  「Superfly Sister」            愛が失われること        
などの大人社会の欺瞞や腐敗。
現代的な解釈の「七つの大罪」と言えるのかも。
・リトルスージーがベアトリーチェ(ミューズ)だとすると、ウェルギリウス(地獄や煉獄を先導する賢人)がチャップリン(Smile)と、ビートルズ(Come Together)
「HIStory」 に出てくるケネディー、ベートーベンなど。
リトルスージーは神のもとに昇り、不滅の存在になる。
地母神的な存在が「Earth」。それと対になる天上の父神。
永遠の存在になったリトルスージーは
人間性と神性、聖と俗、肉体と魂を統合して芸術の完成へとマイケルを導く
・・・「Earth Song」
「Little Susie」自体はヘビロテして聞くタイプの曲ではありませんが、
他のどの曲を聞いても「LS」につながるのだと思います。
・Childhood とLittle Susieの関係
永遠に魂で結ばれた至高の関係。
マイケルの人格形成や作品創作の根源となった「子供時代の喪失」を共有する
詩人とミューズの関係。「子供の心」innocenceの象徴。
「You Are Not Alone」はマイケルの魂がリトルスージーの魂に語りかけるラブソング。
スピリチュアルも恋愛も超えた、男女関係も超えた永遠の愛。SFに当時結婚していたリサマリーが登場するのは、ミューズ「リトルスージー」をリサマリーに投影していたからでしょう。リサマリ-も子供時代を奪われた一人です。でも彼女がイコール「リトルスージー」ではなく、ミューズは元々心の中の「観念的な理想像」なので二人の離婚後も作品の中では生き続けます。(「Invincible」のcomplete loveヘ)
上から覗き込んでいる女性のモデルは、マックスフィールド・パリッシュの他の作品のモデルも務めています。モデルは画家にとってのミューズ。
曲の重要度を考えるとこんな感じで配置したのでないかと思います。
寺院(聖地)建築などをするときの発想を感じます。
「Smile」                                「Stranger In Moscow」
(微笑、癒し)                              (悲しみ。絆の喪失)
                      「Earth Song」
                         神
                 「Childhood」 「Little Susie」 
                       子供の心
                    「You Are Not Alone」
                         愛
「They Don't Care About Us」                   「Come Together」
 (怒り・分断)                                (絆の回復)
(参考 ミルチャ・エリアーデ「聖と俗」)
「リトルスージー」の歌詞に見る象徴
リトルスージーの詞には絵画的な象徴性を感じさせる語句が多いので
イギリスの画家ロセッティーの絵を参考に象徴から読み取られる
メッセージを拾ってみました。
ロセッティは自分の書いた詩を元に絵を描いています。
「死から永遠の女性への変化」
繰り返される「Sun rise, sun set」
  死と再生、命の永遠性
階段
  現世と天国をつなぐ役目
隣の男
  スージーを抱き上げ運ぶ天使
  神の愛
  マイケルの心
正午(時間)
   12か0という数字に何か意味があるのかも(検討中)
   又は、時計の両針が真上を刺し、天上の神の存在を示す?
髪の血(赤色)
   光輪?
鐘の音
  天国へ上る魂
  魂の救済
参考にさせていただいたサイト様 
               「ベアータベアトリクス」
鳩、日時計、背後の人物、橋などに象徴が隠されています。
「ベアトリーチェの一周忌に天使を描くダンテ」
左後方の階段が、天国へ通じる階段。
・スージーのモデルは?
実話をもとにしてマイケルが詩を書いたといわれていますが、確認されていません。
マイケルが出会った、恵まれない子供たちや病気で亡くなった子供たち、
戦争で命を落とす子供たちみんなの魂をすべてこの曲に込めているような気がします。リトルスージーは階段の下で横たわっていますが、落ちて亡くなったのか、亡くなった経緯はどうなのかあまりよくわからないように書いてあるのはそのせい。
でもリトルスージーはまるで血肉を持った一人の人間のように描かれ愛されてきたので、「特定の人物」がいても不思議はないような気がします。
本当に幼いころに出会って別れてしまった友人とか。
とにかくピュアで汚れや曇りが一点もない「愛」が元になっているのでしょう。
でも、こうやって曲として世に出されたのは、マイケルの心境にも変化があったのだと思います。
93年の辛い出来事を経て,でもその後結婚して妻子に恵まれ
「子供時代の哀しみ」を浄化し、天上へと届けたのかもしれません。
「子供心」を忘れるのではなく、さらに自分の芸術の「核」とすることを再確認して
新たな第一歩をふみだしたのでしょう。